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Inheritance  作者: KOUHEI
水の惑星
32/168

庭 1

ザカリーが到着したと離宮の招待客に伝わると

すぐさま三つある館の各部屋から様子伺いの召使が目当てのザカリーの情報を得ようと東館に大挙している。


彼らの相手をしていたのゴッズ。

挨拶と称して握らされる金額で内容を変えて教えている。

とりわけディアン崇拝者にはサービスとして同行者が居ることをしっかりとゴッズは伝えた。

めぼしい情報で無くても小出しに出せばかなりの儲けになり、二度目の使者が来る時には倍の金額が手に入るとゴッズの笑いは止まらない。


コフラ惑星、上流階級の衣装を着用したサスケを

扉の外で待っていたディアンに付き添われて、二人仲良く庭をそぞろ歩く状況に陥っていた。


目的の美しい花をつけた庭園の中にサスケは立っているのに、散歩道からわずか二メートル離れた場所に色とりどりの花が咲いている美しい姿をいっぱいに見せているというのに

しげしげと花の匂いや色と形を堪能できない。

運動を制限された服装がサスケの感動を半減させていた。


歩き辛い履物を恨めしく見て歩く姿勢の悪いサスケの横を、ディアンもぴったりと歩調を合わせて歩いている。

これならどこから見ても仲睦まじく見える。


花木の間に添え木のようなモニュメントから離れるとディアンは立ち止った。

「サスケ、今のあなたは立場を忘れています」


ディアンも機能的な宇宙服から襟やそでにこれ見よがしに宝石の並んだ上着を羽織り、たすき掛けに平たいリボンを垂らし、淡い緑色のつばの広い帽子を斜めに黒髪の頭にのせられ、帽子にもお約束の宝石が燦然と輝いている。

顔をあげて聞き入るサスケの目に射る様に宝石の光が飛び込んでくる。


「立場?」


サスケも似たような重い帽子を被らされ日避けの傘まで持たされている。

既婚者は足首を出してならないという事で靴までを覆った靴下を引きずって歩きにくい。


「そうです。立場です。目的は分かっていますよね」

と何か含みを持たせたように言う。


ディアンが庭を鑑賞するように身体の向きを変えると、後ろ手に組んだ手首や指に絡みついたブレスレット、リングの宝石がギラギラと輝いた。


自分も似たような装飾品を身につけているのだと思うとサスケは気恥ずかしくなる。

「はい、私はヴィテッカの議員の代わりに下見をするように言いつけられています」


緑の大ぶりな葉っぱの間から大輪の花が重たそうに顔をのぞかせている。花の枝だけ細いのは特別な理由があるからではとちらりと思ったが、ディアンが振り向いたのでしわの無いつるりとした若い顔を見ることにした。

何かを教えようとしてくれるのはありがたい事なのだとサスケは自分に言い聞かせた。


「よろしい」

サスケの態度が良かったのかディアンは気を良くしている。


「それではあなたの立場はアン・オーサの代表ということになりますね。ええもちろんあなたの星の事は誰も知りませんから、あなたが少々破廉恥な格好で闊歩しても恥をかくのはこの私だけでしょうが、のちにあなたの星の方々が参られた時は間違いなく歓迎されないと思いますがいかがでしょう。ここであなたが好き勝手に動き回らず良い印象を残して立ち去ればあなたのお手柄だと思いますけれど」


(一人は皆のために、助け合うことは善良な市民の務め)の言葉がディアンとの会話でよみがえりサスケの頭の中を支配した。


「議員の方が滞りなく視察できるように下調べをするのが私の役目です」

と毅然として言った。ディアンを見た目は少し曇っていた。


「その通りです。ここでの作法や立居振舞でその後の関わり合いが変わるのです。今は船の中での疲れをとる事。明日の式のために体調を整えるのが客の務め。それを忘れないように」


サスケがうなずくと、広がった電気信号の色が変わっていくのをディアンは見届けた。


「式典が終われば少しは時間を取っていろいろ案内してもらうのもよろしいでしょう」

と一言付け加える。

式典は三日間続く。それが終わればすぐに船に乗り込むのである。

本当の事を言えば深いため息が出るのは間違いなく、草花を見て喜んでいるサスケがちょっと可哀相になり

希望がかなうような事を言って慰めの言葉を継ぎ足してみた。

コフラでの滞在期間は決まっている。観光などする時間は無いのである。


一瞬にしてサスケの頭の中の電気回路が活発に動いた。

「は、はい。たくさん見たいものがあります。ここは奇跡の土地です」

上ずった声でサスケが叫ぶとディアンの白い指が一本、サスケの口をふさいだ。


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