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Inheritance  作者: KOUHEI
水の惑星
31/168

ドレス

木造建築と白い漆喰、焼いたタイルがびっしりと敷き詰められたと建物は横幅は百メートル近くある。

最上階の七階まで美しいツタ模様の窓ふち飾りがバルコニーを飾り圧迫感は無い。

ウッドハの新妻の資産はコフラでも随一と言われている。

小さな農園主の嫡男だった頃のウッドハの知らない世界の豪奢な建物である。


夏の離宮として使われていた四つの館のは部屋数の多さでは、

どこにも引けを取らないと思われていたが今回違った。ウッドハが呼び寄せた客で全て埋め尽くされていた。

東館右端の階段から上がった三階フロアーが全部ディアンのためにあてがわれていた。


サスケは奥の角部屋が気に入ってユーザーの用意してくれた衣装類を運び入れていた。

二人の召使が箱の中から優雅なドレスや宝飾品をテーブルの上に並べていても、

目を向ける事もなく三方にある窓から庭を眺めては顔を輝かせて

とうとう我慢できずに宇宙服のまま廊下へ飛び出している。


たまたま出て来ていたのか、サスケが出て行くのを予測していたのか

早々に着替えを済ませたディアンが廊下で待っていたかのようにサスケに声をかけた。


「慌てていますね、どうかしたのですか?」

サスケの全身からめまぐるしいほどに細かなシグナルが出ている。サスケの活発なシグナルはあまり良い兆候とはいえない事を経験上ディアンは知っている。


案の定サスケはディアンの事も、自分の置かれている立場も忘れ去り、輝いた瞳でディアンを見上げて言った。

「外には、花が咲いています。織物の中ではなく、塗料で描かれたものでもありません。石に彫られたものでもなければ、繊維で作られたものでもないのです。本物の花が咲いているのです」と嬉しそうに訴えた。


最上級の喜びをディアンに説明して分かち合おうとしているサスケに、

植物の成長過程の一つに過ぎない花の開花を説明されても

一緒になってはしゃぐ事などできない。


「ええ、コフラでは今が一番良い季節。支度をして落ち着いてお茶を飲み、夕餉の話のタネにウッドハ自慢の庭を探索致しましょう。身支度を済ませてきなさい、サスケ」とサスケを回れ右をさせた。


庭を探索するついでにもう一度、初心を言い含めなくてはと笑顔を作る。

気をそがれたサスケは不承不承ディアンの忠告を聞き入れた。


山のような衣装やそれに伴う装飾品の数々をどこに広げるかを新しい主に指示を仰ぎたい召使は

ディアンに引きとめられ、注意を受けたサスケを扉の陰で笑いをかみ殺して見ている。


部屋にサスケが戻ると、二人のうちのもう一人の召使が五着ドレスを並べてたっていた。

そして冷めた視線でもう五着並べたドレスをみて好きなのを選んで欲しいと言った。まずドレスが決まらないと他の装飾品を選べないのである。


生きている花より美しいものなど無いと、恨めしげに召使を見たがサスケの意見は汲み取ってくれそうにない。

「夕食用の衣装はまだ早いわ。あなたたちはもういいから出て行っていいわ。わたしがやるから」

ドレスなんか着るような夕食会などうんざりだった。


そもそも夕食会などTVドラマの中でしか存在しないものである。

召使と称する二人が部屋を出ていけばクローゼットにドレスを投げ込んで、

窓からでも庭に出る方法が無いか検討しようと閃いたところだった。


二人の召使は顔を見合わせて困った顔をした。

短い間ではあるがサスケは大事な客である。客であると同時にこの主を立派に着飾って人前に出すのが二人にあてがわれた仕事。


サスケが変な格好で歩いたら恥をかくのはディアン様と、そばに仕えている二人の召使のせいだと言われるのは間違いないのだ。


ドレスの似会う似合わないは別として普段着ドレス、茶会用ドレス、夕食会用ドレス、部屋着のドレスときっちりと着替えていないとどんな陰口を叩かれるかと思うと、

従者として仕事を続けるには一言言わなければならないと女は決意した。


「これは中央庭園の散歩用でございます。隣の部屋に用意したのが夕餉に着用なされるドレスでございます」

まだまだ仕事は山ほど残っているのに、この新しい主は正式なドレスの着用の大変な事を知らないとしか言えない発言を繰り返している。


「え?」

そっと隣の部屋を見れば淡い色合いのきらびやかなドレスが十着。それに合わせて大型のトレイには帽子から首飾りブレスレット靴や手袋、薄布は肩にかけるショール、が所狭しと並んでいる。

サスケは知らなかったが衣装の置いてある両部屋と別にもう一室の部屋、実は三部屋とも、衣装を置く部屋で寝室や応接間は廊下を隔てたところにあった。


するすると鏡の前からからカーテンを上げて衣装を取り換える準備を始めた召使の周りには

備え付けの鏡や小物の類がひしめきあって並んでいた。


大量の宝飾品を見てサスケは頭を振った。

あれを全部つけられたら身動きは取れない、きっと肩先についたごみ一つれない事は一目瞭然である。


「よくわかんないけど。飾りの無い服で歩けない場所なのねここは……」

諦めたようにつぶやくサスケに二人の召使は下着を三枚出して順番に並べ用途を説明しだした。

三枚とも引き締める場所と飾るレースの出る場所が違うのである。


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