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Inheritance  作者: KOUHEI
地下世界
19/168

イギンラ人 ユーザー

真珠をちりばめた新緑のマントを

長身のザカリアート人に試着させている使用人は背のびして届かないとわかると

椅子を持ってきて登り、正しい位置に縫い目はあるか

美しいドレープは真珠の下から流れているかと真剣に動きまわっている。


ちょこまかと動き回っていた使用人は衣装の点検を終えると、椅子を片手に壁際に整列し主の姿を目で追っている。

ユーザーは専用のいすを持ってこさせて、ザカリアート人の後ろや横からマントの仕上がり具合を見ている。

「丈はようございます。揺らしてみてくださいませ。ふーむ」

鏡に映った青年の姿を一瞬だけ呆けた目で愛でる。それから改めて鏡のふちを含めて一枚の絵を見るように後ろに下がり全体の真珠のバランスを見る。


「もう一列つけて、幅を広げたほうがようございます」

淡い光を放つ真珠が美しい青年の顔に負けていると首を振る。やはり真珠よりも他の宝石で飾るべきだったとユーザーは思ったが依頼主の頼みだから仕方がないと静かにうなずき、三か所の修正を召使に言いつけて下がらせた。


「ウッドハはこれまで通り正教会の衣装で式を挙げると思うか」

次の衣装を着て鏡の前に立ち聞いた。今度は優し色の短いジャケットである。


宇宙一華美な衣装を手がけるユーザーの下には、各星の下世話な噂から、正式な式典の予定日まで何でも耳に入ってくる。客の好みなどは一目見るなり見抜いてしまうユーザならではの、ウッドハの性格診断をそれとなく尋ねるのがクロストの奥ゆかしさである。


「そうでございましょうや。かの星の婚姻式の衣装は青と決まっていますが、昨今色目のもの使うのが民の間で流行っていますから、少々流行りを取りれるかもしれませんな」

他愛もないこととさらりとながして聞かせる。


三枚目の衣装を着こみ勝手に手直す箇所を告げて四枚目にそでを通したのはイーヴァー。

ユーザーのデザインは文句なく優雅できらびやかで、イーヴァーが一番目立つように作られていて満足している。

「ウッドハは民にこびるからな。ありそうだな。ところで何色を取り入れると思うか。同じ色を身につけるのはまずい。どんな言いがかりをつけられるかわからないからな」


正直に感想を言うイーヴァーに苦笑しつつも、甘えるような笑顔に引き寄せられて

二着の衣装を召使に持たせて広げさせる。

この二着に使われてない宝石がウッドハが身につけるものである。


わかったと鏡の中のイーヴァーがうなずくと椅子一つ隔てたクロストもユーザーに向かって微笑んで見せた。

二人のザカリアート人に感謝の態度を取られて天にも上る心地のユーザーである。


イギンラ人のユーザーは宇宙一の美しさを持つザカリアート人が大好きだ。

一人ひとりの個性的な美しさも称賛に値するが、なにをおいてもザカリアート人は差別という言葉がないのではと思うくらい容姿に好き嫌いが無い。


客は素晴らしい技術を持っているユーザーに対して嫌々お世辞を言う。大半の客は一度の顔合わせも何かと理由をつけて断り採寸表だけを送りつけ作ってくれと命令調だ。

スアレム人の紹介で来たザカリアート人たちは最初からユーザーにデザインを一任した。

手持ちの宝石の原石を持参しては三分の一はサルツ人のためにと惜しげもなく置いて行く。

醜いユーザーの姿など無いかのように振る舞う彼らに、ユーザーの子供たちも彼らが立ち寄るとなるとこぞって手伝いに出てくるくらいである。


先任者テルから引き継ぎ、美しい人々のために美しい衣服を作り続けた中で、特にザカリアート人はたくさんの客を紹介してくれユーザーの懐を潤わせてくれた。七つの冬を迎えて一度も地下に籠ること無く仕事をこなしてきたのは長い付き合いだった彼らとの時間が大事だったからだ。


地下に籠もらないでいることは外界の時間を肌にもろに受けて弊害もある。


刺激的な美しい人々との付き合いをやめて地中に潜ると決め、仕事を別なイギンラ人に回し今回を最後として、彼らの仕事だけを引き受けている。

とりもなおさずザカリアート人との会話は心地よく彼らの美貌は例えるものが無い。そのほほ笑みをまぶたに残してして古い友人らの住む地下に降り悠久の時間に浸る。次に目覚めるのは七つの雨季の後だろうか。

新しく再生されたユーザーの身体と心は、始めてみるものに新鮮な感動にまた会えると思うと背中のいぼがぞくぞくする。


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