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Inheritance  作者: KOUHEI
地下世界
18/168

サルッツア 3

帽子から靴、服のデザインなった宝飾品まで、全てを揃えた衣装をトレイに乗せた使用人の列が

扉の外の通路の奥まで続いている。

室内ではザカリアート人が試着する作業が始まり華やかな活気を帯びている。


サルッツア空港まではしゃいでいたサスケはユーザーの登場でおとなしくなり、

通された室内の手の込んだ彫り物のある調度品を、出されたお茶を飲んでは見回し、お菓子を食べながら薄布の軽やかさが色彩豊かな壁を抑える様を素晴らしいわ、と思っていたのは最初だけで、椅子に座ったっきり何もすることが無く時間を持て余している。


あちらこちらと飛び回っては衣装の仕上がり状態をチェックしていたユーザーは

一人取り残されたサスケを気にかけて、

お茶を飲むふりをしてサスケの座っているテーブルのそばまで行き、

醜い顔を近づけないよう配慮してそっとサスケに声をかけた。


「退屈でございましょう。そうでしょうとも、これらの衣装はすべて彼らの物。ご自分の衣装ならあなた様も退屈することなど無いでしょうに。新し衣装を着るということはどんなに楽しいことか。まだあなた様の衣装はテルがデザインを考えている最中。ディアン様と一緒に歩いても見劣りのしない良いものが出来ます。しかしもうしばらくお時間がかかります。よろしければウズの街でも探索なされたらばいかがでしょう。あなた様は初めてでしょうから少しは楽しめるというもの。そうなさいませ」と、ユーザーの横広がりの口がにっこり笑う。

宇宙でも富裕層のみを相手に商売をしているイギンラ人は醜い容姿とは逆に慈愛に満ちた優しい性格をしている。


サスケはいぼに覆われた茶色の小人の存在に十分に慣れていた。

それくらい長い時間、椅子に座っていたのだ。

池のそばで見た時は恐る恐る観察していたが、豪華な居間に通され、

明るい光の下で見るユーザーは、

全員にお辞儀をしては次の衣装の仮縫いや仕立て上がりに目を配り、

部屋の隅々まで居心地の良い空間を作ろうとしているのはサスケにも伝わっていた。


そのユーザーがたとえ社交辞令でも今のサスケに声をかけてくれるだけで嬉しいのである。


一人だけ場違いの人間だと思っていたサスケは翻訳機の内容に飛びあがらんばかりに喜んだ。

ユーザーに勧められるまま部屋を出ていきたいが

ここはディアンに了承を得なければとサスケは首を伸ばしたところへ、

続けて翻訳機はエルフの声を訳してくれた。


「サスケ、ユーザーの言葉に甘えなさい。ユーザーの屋敷はウズの街並みのどこからでも良く分かる。清潔で良く管理されている。サルツ人の視点で見る生活も見聞を広めるというものだ」

とエルフの助け舟。


ディアンはというと、頭からすっぽりとかぶった薄布の長さを直接顔のあたりでハサミを入れている最中で身動きが取れない。


サスケはロケットの中で誰が制作したのか分からないザカリアート星の紹介ビデオを見ている。

基幹産業の案内も無い、文化としての街並みの紹介もなく、

ただ大勢のザカリアート人の一人一人をピックアップしたビデオを見てきた。


銀の髪の毛が美しいとか、黒髪の中に憂う顔は宇宙一の美しさとの賛辞が最後まで連呼されていた。

美しいといわれる顔も次から次とみているとどれもサスケには同じ顔に見えている。

ビデオを見せたディアンとしてはてっとり早く仲間を紹介したつもりでいるが、空港に降りて本人を前にした時は少々心臓の鼓動が速くなったが、今は後ろ姿ばかりだし翻訳機をかけて会話を聞こうにも大勢がしゃべっていて短い単語だけが訳されて意味が分からずに面白くなかった。


それにザカリアート人は美しく教養高い知識人(を演じるモードに入っている最中)で近寄りがたい雰囲気を醸し出している。

特に仮縫い途中のディアンはロケットの中の操縦とは打って変わって、優雅にそして繊細に振る舞い、

美しい動きに召使たちは魅了されて羨望の視線がディアンの動きとともに移動している。


エフリー、イーヴァー、クロスト、ドレド、ロード、等、部屋にいる全員のザカリアート人は街の見学に行くように勧める。


「ウズの街は良い気候です。いってらっしゃい」

(サスケとやらは大人しい生き物よ)


「楽しみませい」

(ちと弱っているが、運動させねば自力で歩けぬのう)


「楽しみませい」

(見るからに貧弱だ、サルツ人よりも見劣りがする)


(ディアンに鍛えるように言ってくれ。星までもたぬぞ)

(諦めろ、スアレム人にもう少し丈夫な者を貰ってはどうか)

(スアレムの移住地まで戻るのは辛いの)

(もう一人をスアレム人に連れて来て貰うというのはどうだ)

(そうだのう。次の議会場まで一緒に来てもらえればこれほど安全な事はない)


ユーザーの船を買うように勧めたがいつディアンはへそを曲げて

ロケットを操縦すると言い出しかねないのだ。


(何を言うておる。あれは俺が星に間違いなく連れて帰る)

にっこりとディアンは笑みを浮かべる。


周囲に居るイギンラ人に分からないようにザカリアートの言葉で言い返す。

せっかく面白い生き物をそばに置いておけるのに、今更取り替えられては困るのだ。


脇腹の傷は簡単に治り、サスケの残した皮膚の一部はディアンの筋組織の一部と変化している。

(俺が責任を持ってサスケを誕生の穴に入れてやる)


(そうしてくれ)

隣のエルフが答えた。期待はしていないがやってみる価値はあると思っている。

そのためには何が何でも生きてサスケを星に連れて帰らなければならない。


途中で仕事を放り出すディアンではないし欲と欲の突っ張り合いの中に

サスケを放り込むことになると不安をエルフは抱いたが、

異星人が儚い生命力の女に価値を見出す者はいないと考え直した。


まずはウッドハの星まで無事に生きて到着出来ることを祈るしかない。

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