サルッツア 1
ロケットエンジンの不機嫌な音か、
年齢とともにやってくる耳鳴りか分からない音が、
サスケの頭の中で渦巻いている。
ユーザーの住む空港に着地した時サスケは正常な状態ではなかった。
ふわふわ浮いていた船内と違い、星の重力に血液が全部足元に集まった気分でいる。
大丈夫かと尋ねられた時はディアンの声がエンジンの音と一緒くたになって聞こえ怒られたと思い
「私、体重が増えたの。運動不足かしら」と、すぐに動けない辛さを頓珍漢な返事でごまかした。
身体も思うように動かないが、明るい画面ばかり見ていたサスケの目は
突然の外の暗さにも対応できていなかった。
待望の外気を吸い、到着した空港を見ても身体の重心をどこに置いてよいか分からずサスケは座り込んた。
始めは夜の空港に降り立ったのかと思っていたが、どうやら巨大な洞窟の奥に作られた空港に船は降りたらしい。
頭上高く暗い色の天井には、丸い穴から明るい日差しが遠くに見えている。
深く息を吐いては吸い込み、湿った大気が肺にはいりこむと
ぼんやりしていたサスケの頭の中がすっきりと冴えだし、大地を踏みしめる足に力が入った。
(違う。サルッツアにはアン・オーサーと同じような太陽が輝いていたし。古い石作りの家並みと、もじゃもじゃのジャングルは?)
広がる洞窟の高い天井の四隅をぐるぐると見回して、よろけてディアンに腕を取られて歩くよう促された。
「あ、ごめんなさい」
(まずはイギンラ人のユーザーさんちに行く。わー ディアンさんと同じくらい背が高くて素敵な人がいっぱい。この方達がザカリアート星の住人なのね。あ、よろしくお願いします。そちらの方も、よろしく。ヴィテッカの街から来ました。サスケです)
離れた場所を颯爽と歩いている背の高い人を見つけては右に左にと会釈をして
始めてみる本物のザカリアート人にサスケはほほを染める。
(ディアンさんも素敵だけど表情のない所は、ヴィテッカの人たちと一緒でつまんない。あら。挨拶を返してくれたわ)と銀髪の青年の会釈に無邪気に喜んでいる。
支えがないと歩けないサスケを置いて他のザカリーは遠く影のように浮き上がった建物の中に入って行った。
(夜の議場前広場見たいだわ)
見聞が目的だと思い込んでいるサスケはどんな些細なことも見逃さないようにと興味深く見ているが一つ一つ説明してもらえないと暗くて何も分からなかった。
二人の進行方向には全身灰色のかぶり物をした大勢の小人がキノコのように立って待っている。
(ユーザー様の曾孫の方々ね。変態前の幼生期ね、子供ではなく幼生期の完全体。ア、耳まで口が裂けている。いぼいぼが無いわ。こいうのをなんて説明するの。成長過程で突起物が出て最終形態のイギンラ人になる、ね)
ロケットの中で最終章まで学習資料画像を見ていた事がなく、繰り返し見て覚えた冒頭の人物紹介だけがしっかりとサスケの頭に叩き込まれている。
「ディアンさんの上司の方に、挨拶はしなくともよろしいので」と要望を歪曲に曲げてディアンに尋ねる。
颯爽と建物に入った行く素敵な人たちと顔見知りになりたいけれど。返事はない。
見上げれば感情の読め無い顔が進行方向を見ていてサスケの問いかけに答えてくれない。
白いキノコの群れの半分はザカリアート人の後を追い、残りの半分は荷物を下ろしに船へと散らばった。
最後の客人には十人の白いキノコの一人が優雅に頭を傾げてこちらへと手招いた。
奥には銀髪のザカリアート人が地下へ下りるエレベーターの前で待っている。
草と木がデフォルメされた門をくぐりぬけ大きく口を開けた広いエレベーターに乗れば
巨大な箱は静かに動き始めてわずかな振動も乗客には与えずに止った。
なぜ洞窟の中に空港があり、また地下に潜るのとの問いをサスケにさせずに
華やかな乗客はいかにも楽しそうに振る舞い小人の白装束の後についていく。
長身のザカリアート人二人に抱えられる様にしてサスケは青赤黄色の不思議な色の扉の奥へと進んでいった
「いたずら好きのボックスはどうしたんだい。なぜ顔を見せないのか教えてくれないか」
慣れ親しんでいたユーザーの愛豹の姿が見えない。
薄い桃の花が口を開いたかのようにイーヴァーは微笑んで見せる。
ここからは筋肉の形態を外界人仕様に固定する。




