会合 2
ロケットのハッチが閉まりサスケの宇宙への旅が始まったが、
宇宙とは言葉では広いが実際は狭いロケットの中での生活である。
起きているときはこれから立ち寄るサルッツアの情報を頭に叩き込み、
疲れるとカプセルの中で眠るかの二つの行動しかない。
サスケは出来るだけディアンの操縦の妨げにならないように短銃な質問も避けて過ごしていた。
サスケなりに学習装置の扱いにも慣れた頃、
サルッツアの手前で軌道を変えたロケットは
流星群の中に突っ込みジグザグ運転を続けたあげく船は急降下を始めた。
体中の血が背中に集まり内臓が口からせり出てくるような感覚に襲われそれが続くと、
サスケの思考は停止し、船は荒技師のような走行を止めた。
紙人形のように張り付いたサスケをディアンは抱えあげ何事もなかったように外に引っ張り出した。
ロケットの外は吹き上げられた溶岩の塊が、振動で崩れ落ち急傾斜を転がり落ちて、
無残に砕けあちこちに散らばった岩ばかりの風景が広がっている。
サスケは重たい頭を持ち上げ黒い岩に手を置き身体を支えた。
なにも考える間もなく胃袋からせりあがってきた物を吐いていた。
風に乗って人の話し声が切れ切れに流れてサスケの耳に届いても、
自分の心臓の鼓動と風の音が鳴り響き話声に耳を傾ける余裕はない。
立ち上る硫黄の臭いに顔をしかめ、声の聞こえた方向に顔を向けると
大勢の人の姿を見たが、今度は硫黄の臭いにむせて吐き気を催し
立ち上がることも出来ずにただ重力に引かれるまま身体を横たえ、サスケは目を閉じた。
「お手柄だが。あの様子だとサルッツアまで持つかは怪しいぞ」
怒りに燃えた目がサスケを見ている。
年長者エフリーの問いかけに上唇を歯ぐきが見えるぐらいねじあげてディアンは答えにした。
ディアンの得も言われぬ形相を受けてこちらの男も左右の首筋を浮き立たせて言う。、
「スアレム人もディアンの機嫌を取るようになった。良い傾向だ少々頼りないが味方につけておくに越したことはない」と、イーヴァー。
吐いた息までも凍りつくような冷たい視線で仲間の顔を見ている。
「スアレムも年寄りだ。彼らの意見はまっとうな事が多いが所詮入れ物を交換して延命させている生き物だ。いつくたばるか分からない、あまりあてには出来ないぞ」とクロスト。
眉間に寄ったしわはどんどん深く刻まれ目はらんらんと輝いている。
「その通りだな」
その場に入る全員をエフリーは睨みつけ、跳ね返ってくる反抗的な視線に威嚇するように歯ぐきをむき出しにして敵意を見せる。
「それよりもウッドハの結婚式だが四度目だろう。いい加減に内輪だけで披露目をやるとかの配慮はないのか。短期間に離婚結婚を繰り返してばかりで祝儀泥棒と陰口を叩かれるのも致し方がない」
吊りあがった口の奥には尖って並んだ歯が見えている。
「正確には七度目だな我々を招待する前に三度結婚をしているからな。あいつは。結婚を餌に肥え太って来たが次から失敗しての財産を半分持っていかれたので、あまり実入りの少ない領主の娘ばかりと婚姻を繰り返して所有する土地は広がったが商売は成り立たぬ。それでこのたびの婚姻だ。裕福な招待客の祝儀を期待して懐を潤わす腹づもりなのさ。あんな奴が連邦議会の議員章をはく奪されないのが不思議なくらいだがね」
クロストはさっきまで見せていた怒気に満ちた表情を変化させ感情の何も無い顔に戻していた。
「俺たちを虫集めの蜜代わりに使うなんざ賢いというか。大馬鹿というか」
肩を怒らせてまだ仲間との幸せな時間を楽しんでいるドレド。
「大馬鹿のほうだろう。ウッドハはザカリアートの星を丸ごと買おうと画策していた事もあるからな」とロッド。
ドレドと同じ両頬の耳近くまで口を開いて憎々しげに仲間を見ている。
「なに。あいつか、連邦議会の書庫の中に入った奴は。最初にコンタクトした情報を改ざんした跡があった」
「自分の軍隊では無理だから連邦軍として乗り込んで分割するつもりだったのだろう」
「惜しかったな。歓迎したのに」
吊りあがった眉毛と毒気に満ちた目、筋張った首筋、の恐ろしい顔が仲間に向けられた。
ザカリアート人の能力には形の識別以外に生物の発する電気信号を感知する。
生き物の行動は全て視覚で得て電気信号で情報は送られ脳で集積される。
岩場の人型生物は活発な信号は全く見られず、
微弱な電気信号が人型の筋肉の中ゆっくりと動いている。




