番外編・携帯電話のいじり方
夜ごはんを作っている間、瑠璃ちゃんは説明書を見ながらずっと携帯電話をポチポチをいじっている。
フィルタリングサービスを使い、ネットのほうには制限をかけている。
そしてまだ開けてから30分も経っていないので、アドレス帳はもちろん、画像とかも何も入っていないからそんなに見るものもないはずだ。それに説明書も読めない漢字だらけだろうに。
それでも瑠璃ちゃんはポチポチといじっていた。
俺は気になって仕方なかったのだが、とりあえずご飯を作ってからゆっくりと聞くことに決めた。
今日はチャーハンと麻婆豆腐。ちょっとした定食みたいになった。
瑠璃ちゃんに合わせて甘口の麻婆豆腐を作って皿に分けてよそり、チャーハンも同じくよそる。
そして皿をテーブルに並べると、瑠璃ちゃんも携帯を閉じて席につく。
「じゃあいただきます」
「いただきます」
「はい、召し上がれ。熱いから気を付けてね」
そう言ったそばから冷ましもしないで口の中に入れて、はふはふと口の中の麻婆豆腐を冷ましている。
そんな瑠璃ちゃんに麦茶が入ったコップを差し出すと、それで熱い麻婆豆腐を流し込んで、ちょっと涙目の瑠璃ちゃんが小さく息を吐いた。
「はー。あつかった・・・」
「だから言ったのに。人の話を聞かないからでしょ」
「ごめんなさい」
「やけどとかしてない?」
「ヒリヒリする」
「んー・・・辛いのか熱かったのかわからんな。まぁ口の中だからすぐに治るでしょ」
口の中を見たけど全然わからなかったので、とりあえず食事を再開した。
そして瑠璃ちゃんに話を振った。
「さっき携帯で何見てたの?」
「いろんなボタン押してた」
「押してただけ?」
「左上のボタン押したらメニューがひらいたから、いろいろ見てた」
「説明書は?」
「絵だけしか見てないよ。だって全然漢字わかんないもん」
絵だけでわかるもんなのか? 最近の説明書って、誰でもわかるようになってるから、絵だけでもわかるようになってるのか?
「で、どうだった? ポチポチいじってみた感想は」
「まだよくわかんないけど、みんなとメールとかしたいなー」
口元にチャーハンの粒をつけながら笑う瑠璃ちゃん。
その粒を取りながら俺は言う。
「あとで俺のアドレス教えてあげるから、それで練習しよっか」
「うんっ」
ホント嬉しそうだな。
でもこう考えてみると、瑠璃ちゃんにこういうの買ってあげたの初めてかも。ゲームとかぬいぐるみとか全然欲しがらないし。
育てる面では手間のかからない子だけど、逆を言えば欲が無くてちょっと心配。
無いわけじゃないんだろうけど、言いにくいのかな。
今回の携帯は良いきっかけだったかもしれない。ご飯食べ終わってからずっとメールするんだろうなー。
まぁそんな予想は大当りするわけで、ご飯を食べて食器を片付け、いつもならテレビを見るところ、携帯を手にした瑠璃ちゃんが俺にアドレスを聞いてきた。
赤外線を使ってアドレスを送ると、『おー』と瑠璃ちゃんが喜んでいた。
何もかもが新鮮に見えるようだ。
瑠璃ちゃんから受け取ったメールアドレスに、俺が適当に文章を作ってメールを送ってあげた。
『麻婆豆腐美味しかった?』
「来たっ! 美味しかったよ。熱かったけど」
「そこはメールで返してよ」
「あ、そっか」
俺が笑いながらそう言うと、瑠璃ちゃんは俺に教わりながら文章を作り、メールを返信した。
『おいしかったよ』
「おぉっ! 届いた?」
「届いた届いた」
「おー。むずかしいねー」
「慣れるまでは大変だろうさ」
「使いこなせるのかなぁ?」
「できるって。瑠璃ちゃんぐらいの子はみんな頭が柔らかいから、すぐに使えるようになるよ」
逆に俺ぐらいになると、もう頭が固まり始めてるから、記憶力とかちょっと危ういかも。まだ大丈夫だと信じたいお年頃。
「明日、天野とかに教えてもいいか聞いておくからさ、楽しみにして待っててくださいな」
「恭子ちゃんと香恵ちゃんとメールするんだもんね。ちょっとドキドキする」
「頑張ってくださいな」
「うん。頑張る」
「もうちょっと練習しよっか」
そして瑠璃ちゃんが携帯を持ったまま眠りにつくまで、俺と瑠璃ちゃんは並んでベッドの上でうつ伏せになって、隣にいる相手にメールの送り合いをしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると激しく喜びます。
瑠璃ちゃんペロペロ。
次回もお楽しみに!




