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手続きのすませ方

「はい。ではこれで一応終わりになります。またあとで上のほうからの連絡が来てから、瑠璃ちゃんに書類をお渡ししますので、それに書いて持たせてください」

「何から何までありがとうございました」

「いえいえ。私もこれが仕事ですから」

「ほら。瑠璃ちゃんもお礼を言いなさい」

「・・・ありがとうございました」

「どういたしましてー。これからよろしくね。瑠璃ちゃん」


瑠璃ちゃんは、コクリと頷いた。

転校(?)の手続きは、酒井先生がいろいろと手早く準備しておいてくれたということもあって、意外とすんなりと終わった。

これで明日から瑠璃ちゃんの学校生活が始まる。

書いた書類をトントンと揃えながら、思い出したかのように酒井先生が口を開いた。


「あ。そういえば、一つ聞きたかったことがあるんですけど」

「なにか?」

「瑠璃ちゃんと武田さんってどんな関係なんですか?」

「えっ!?」

「さっき玄関で聞いたときは武田さんと同じ苗字だったような気がしてたんですけど、さっき書いた書類には『長谷川』って書いてあって、アレ?って思ったんですよー」


この酒井先生という若い先生。

きっと俺と同じか、高くて2つ上ぐらいだろう。長い髪を後ろで結い上げて、髪留めでまとめている。うちの高津先生なんかよりも美人だと思う。というよりも『可愛らしい』という感じだ。おっとりしてるというかふんわりしてるというか・・・

とにかく見た目で結構抜けている先生かと思いきゃ、些細なことも見逃さない先生だったとは。

いくらあの時うっかり言ってしまったとは言えども、ここは誤魔化さざるを得ない。


「親戚の子なんですけど、あんまりこういう経験したことなくて、うっかり自分の苗字を言ってしまいまして。HAHAHAHA」


よし。我ながら素晴らしい回避の仕方だ。


「そうなんですか。でしたら、何か困ったことがあればいつでも聞いてくださいね」

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」

「瑠璃ちゃんもわからないことがあったらなんでも聞いてね?」


瑠璃ちゃんはちょっと悩んでからコクリと頷いた。

何の間だったんだろう?


「明日から通うわけですけど、校舎の中見て行きますか?」

「どうする? 見てく?」


俺は瑠璃ちゃんを見た。すると瑠璃ちゃんも俺を見た。

うんともすんとも言わない瑠璃ちゃん。


「じゃあ見ていくか」


ここでやっと頷く瑠璃ちゃん。

家と外では全くの別人だな。家ならほんのもう少しはしゃべる。


「では案内してもらってもいいですか?」

「了解しました。では行きましょう」


酒井先生のあとに続いて瑠璃ちゃんと並んで歩いた。

校舎内を案内してもらいながら、頭の隅で瑠璃ちゃんのことを考えていた。

俺も考えすぎかもしれないけど、瑠璃ちゃんは自分で決めていいのかどうかわからないのかもしれない。

今まで選択肢を与えられてこなかったせいか、二択で質問したときは基本的に頷いてくれる。あんまり断ったことがないのかもしれない。というよりも、断られて怒られたりしたのかもしれない。

このへんも言って聞かせないとダメかもな。

明日から学校で、他の子からの質問攻めにあった時の対処法も練習しておかないと、友達も作れないとかわいそうだしな。

あ。あとランドセルも買わなきゃ。近くに売ってるところがあるから、帰りにそこに寄っていこう。


「はい。ではこれで校内案内を終わりますね」

「ありがとうございました」


俺が頭を下げておじぎをすると、瑠璃ちゃんも俺に習っておじぎをした。


「明日からよろしくお願いします」

「こちらこそお待ちしております」


最後にまた頭を下げて小学校を後にした。

これで明日から瑠璃ちゃんも小学生だ。

ホッと一安心だ。


「優しそうな先生で良かったね」

「はい」

「まだ誰かと話すの怖い?」

「・・・・・・」


首を縦に降る瑠璃ちゃん。


「そっか。でも早く慣れないと、友達もできないから、頑張ってみような」


その言葉には、瑠璃ちゃんは頷きも振りもしなかった。


「よし。じゃあ帰りにアリオでランドセル買って帰ろうか」

「・・・いいんですか?」

「小学生といえばランドセルでしょ。そのくらいは入学祝いとして買ってあげるよ」


瑠璃ちゃんは何も答えなかったけど、手をギュッと握ってくれた。

そしてわずかに瑠璃ちゃんが笑ったように見えた。

なんかむず痒かった。

笑ったように見えたのが気のせいじゃないことを祈りながら、瑠璃ちゃんと夕暮れ道を一緒に歩いた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いて頂けると嬉しいです。


瑠璃ちゃん人気ありすぎワロタ。


次回もお楽しみに!

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