表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/91

番外編・前日の準備の仕方

瑠璃ちゃんが小学校に転入する前に晩の話です。

夜ごはんも食べ終わり、のんびりとテレビを見ていた。

ちょうど見ていたテレビが終わったので、これから瑠璃ちゃんにレッスンをしようと思う。


「よし。じゃあちょっと練習しようか」

「れんしゅう?」

「うん。瑠璃ちゃんだって友達欲しいでしょ?」

「ともだち・・・」


瑠璃ちゃんはうつむいてしまう。


「欲しくないの?」

「・・・・・・」


ちょっと考え込むように見えなくもなかったので、少し待った。

そして顔を上げると、俺のことを見つめた。


「どう?」

「がっこうにいけるだけでいいです」


瑠璃ちゃんにとっては、それだけで幸せなのか。

もしかして学校とか行ったことないのか?


「学校って行ったことないの?」


首を横に振る瑠璃ちゃん。


「でも友達は作らなきゃダメ。わかった?」

「・・・はい」


そんなに悲しそうな顔をしなくても・・・心が痛む。

でもこのまま誰とも仲良くしないなんてもったいない。

ここは心を鬼にして特訓だ。


「というわけで、まずは自己紹介の練習をしよう」


唇が少しだけ嫌そうに動いた。でもそれも一瞬だった。


「イヤ?」

「イヤ、じゃな、いです」

「めっちゃ嫌そうじゃん」


俺が笑いながらそう言うと、瑠璃ちゃんはうつむいてしまう。

まだこういう冗談は通じないようだ。

とりあえずは練習しよう。


「瑠璃ちゃんも変わってみないと、何も進まないと思うよ? 頑張ってみよう? まずは自己紹介からしよう」


うつむいたままの瑠璃ちゃん。

どうしたものか・・・

すると瑠璃ちゃんがパッと顔を上げた。その顔は、どこか覚悟を決めたかのようにも見えた。


「は、はせがわ、るり、です」

「おぉ・・・」


俺は思わず声を出してしまった。

小さい声だけど、言えるようになっただけでも結構な進歩だ。

こういうちょっとした成長が嬉しかったりする。


「よくできました」


ペコリと頭を下げる瑠璃ちゃん。

もうこれだけでいいんじゃないかと思えてきた。

瑠璃ちゃんなりに頑張っているわけだし、俺があれこれ言うのはどこか筋違いのような気もした。

というわけで、最後に一つだけ練習というか言っておきたいことだけやって終わろうと思った。


「瑠璃ちゃん。俺のこと呼んでごらん」


そう言うと、困ったような顔を見せる瑠璃ちゃん。

一応初めて会ったときに自己紹介はしてるわけだから、名前を知らないというのは違う。

多分、なんて呼べばいいのかわからないのだろう。

現に、今まで俺のことを呼んだことはない。


「じゃあ『まさちか』って呼んでみ」

「・・・よびすてなんてできません」

「じゃあ『さん』つけてもいいよ」

「・・・まさちかさん」


意外とあっさり。

ホントは『旦那様』とか『ご主人様』って呼ばれるかと思ったけど、呼び方はそれぞれなのか。


「今度からはそう呼んでね」

「はい」


これで瑠璃ちゃんとの距離がなんか近づいたような気がした。気がしただけで、あんまり変わってないのかもしれない。

本当は自分から俺のことを呼んでくれたりして欲しかった。

これだと強制的に言わせてるみたいでなんか罪悪感が・・・

いやいや。でも自己紹介ができないと瑠璃ちゃんも成長していかないわけだし、ここは心を鬼しよう。


「瑠璃ちゃん」

「はい」

「幸せになるっていうのは、自分から掴み取りに行くものなんだ。待ってるだけじゃ来ないってじいちゃんも言ってた。俺は瑠璃ちゃんに幸せになって欲しい。だから瑠璃ちゃんには頑張ってもらいたいんだ。恥ずかしかったり怖かったりするかもしれないけど、幸せになるためには大事なことなんだって思ってほしい。だからまずは友達を作ってみない?」


俺がそう言うと、瑠璃ちゃんはちょっとだけ俯いてから顔を上げた。

そして首を縦に振る。


「返事は?」

「・・・はい」


あー。これで嫌われたらどうしよう。

でも幸せになってもらうためには、嫌われ役も必要だよな。それが俺か。

はぁ・・・

こうして自己紹介の練習も終えて、布団に入り寝ることとなった。

俺は瑠璃ちゃんに嫌われたかと思って、悶々としたまま目を閉じていたのだが、夜中に瑠璃ちゃんが俺の布団に入ってきて、寝言で『まさちかさん』と言っていたのを聞いてしまい、ニヤけた顔のまま眠りについた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いちゃってもいいんですよ?


懐かしき消極的な瑠璃ちゃんです。

この頃の瑠璃ちゃんは、よく正親の布団に寝ぼけて潜り込んでいたという裏設定です。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ