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卒業式の終わり方

今日は小学校の卒業式。

高校の卒業式から1週間弱が過ぎた。

今日で瑠璃ちゃんも立派に小学校を卒業となる。

この式のあとに俺と天野が付き合うことになった報告やら、卒業おめでとうの意味を兼ねて、前に行った居酒屋に飲みに行く予定だ。

俺と瑠璃ちゃんなのだが、瑠璃ちゃんを俺の養子にすることにしたのだが、すごい中途半端な時期だったので、小学校を卒業してから養子縁組の手続きを行うことを話し合って決めた。そして中学生になった瑠璃ちゃんは、『長谷川瑠璃』ではなく、『武田瑠璃』となるのだ。

その話を天野にしたら、『結婚したかと思われたりしてね』とか笑われた。結婚には年齢制限があるのだ。法律的に婚姻届が受理されないわ。ちなみに中村もおんなじようなことを言っていたらしい。なんだこいつら。

とにかく卒業式はサクサクと進み、呼びかけやら送る言葉、卒業生代表の言葉、校長先生の言葉、歌、などなどを終え、無事に卒業式を終えた。

高校の卒業式のように固っ苦しい感はなく、小学生らしいものだった。

卒業式を終えたあと、退場した卒業生たちは自分のクラスで最後の帰りの会をするということで、親もその教室に集まった。

参観日のように教室の後ろの方に並んで子どもたちを見る。

考えてみるとこうやって父親(仮)が一人で来てるのってあんましいないな。ってゆーか俺だけっぽい。

そしてきっと、こうして教室の後ろから見る光景を味わったことがないのも俺だけなんだろうな。

そう考えると瑠璃ちゃんには申し訳ないことしたな。

教卓には酒井先生が立っていて、笑顔で中学生に上がる生徒たちに向けて喋っている。

最後に通知表やらを卒業証書と一緒に手渡し、その光景を見ていた親の数名が泣き出していた。

俺はあまり感動というのはなく、瑠璃ちゃんが何事も無く・・・いや、何かはあったんだろうけど、こうして無事に卒業できたことにホッと胸をなでおろしていた。


帰りの会も終わり、廊下に出てきた瑠璃ちゃんと合流すると、その後ろに怜央くんとヒロトくんの姿も見えた。さらに後ろには二人の両親と思しき姿も見えていた。

瑠璃ちゃんが俺の元へ来ると、ニコッと笑ってクルリと反転。


「怜央くんとヒロトくんのお父さんとお母さんがあいさつしたいって」

「あっ、初めまして。いつも瑠璃ちゃんがお世話になってます」

「いえいえ。こちらこそヒロトがお世話になってるみたいで」

「初めまして。怜央ったら瑠璃ちゃんの話ばっかりして、毎日楽しいみたいです」

「お母さんっ!」

「あら、これ内緒だったんだっけ? ごめんねー」

「ハハハハ」


二人は家族ぐるみでの付き合いがあるみたいで、親同士も仲が良いように見えた。

俺も『親同士の付き合い』ってのをしていかないとダメなのか?


「そういえば長谷川さんは高校の先生やっているんですって?」

「そうです。こう見えて高校教師です」


ヒロトくんのお母さんが、俺のことを『長谷川さん』って呼んでるのは訂正するべきなのか? それともこのままスルーしたほうがいいのか?


「おばさん。私、中学生から『武田』になるの」

「えっ?」


ヒロトくんのお母さんだけじゃなくて、その場にいた全員が驚いていた。

まさかこの二人にも言ってなかったとは。瑠璃ちゃんって意外と秘密主義?


「もしかして・・・ご結婚?」

「違います」


ヒロト父が口にした言葉に、即座に反論した。

俺は瑠璃ちゃんの肩に手を置いて言った。


「いろいろと事情がありまして、瑠璃ちゃんを養子にすることになったんです」

「養子に・・・」

「わ、若いのに大変だな」

「僕は大変だなんて思ったことはないです。色々ありましたけど、瑠璃ちゃんの幸せが僕の幸せみたいなところがあるんで、楽しく過ごしていくための決断です」

「・・・あなたもしっかりしないとね」

「若いのに立派ねぇ。ねっ、お父さん?」


それぞれの妻からそう言われた旦那2人は、罰が悪そうに旦那同士で顔を合わせて苦笑した。

ふと下を見ると、玲央くんが瑠璃ちゃんに話しかけていた。


「じゃあ長谷川さんは『武田さん』になるの?」

「うん」

「怜央も『瑠璃』って呼んでやればいいじゃん」

「でも・・・」

「無理なら『長谷川さん』でもいいよ?」

「んー」


顔をのぞき込んだ瑠璃ちゃんに対し、怜央くんが少し顔を赤くしながら目をそらす。

ははーん。俺にはバレバレだぞ少年。


「違うわよねぇ。怜央は『瑠璃ちゃん』って呼ぶのが恥ずかしいのよねぇ」

「お母さんは黙っててよぉ」


怜央くんの耳元で怜央母がそう言った。

怜央母も気がついてるみたいで、完全にからかいにきてる。

そんな怜央くんを見て気がついた怜央父が、瑠璃ちゃんと怜央くんを交互に見やる。

そして怜央くんがさらに顔を赤くしながら言った。


「じゃあ、こ、今度から『瑠璃ちゃん』って呼んでもいい?」

「『瑠璃』じゃなくていいのか?」

「ぼ、僕にはムリ!」


怜央くん可愛いなぁ。


「もちろん! 私も玲央くんって呼んでるしね」


怜央くんの勇気ある行動に笑顔で答える瑠璃ちゃん。

そんな光景に、その場にいた全員が笑顔になった。


「あら。こんにちわ。皆さんで談笑ですか?」


声がした方を見ると、なんかすごいヒョウ柄のスーツ(?)を着た女の人が立っていた。

その隣には笹木さんが立っていた。

ということは・・・笹木さんのお母さんってことか。

すごいよ、笹木家。



学校を出て、瑠璃ちゃんがもらってきた荷物のほとんどを紙袋に入れて、俺が片手に持ち、反対側の手で瑠璃ちゃんと手をつないで帰る。


「あっそうだ。卒業おめでと」

「うんっ。ありがとっ」


笑顔を向けてくる瑠璃ちゃん。よっぽど嬉しかったんだろう。

同じ学区の子は同じ中学校に進学するので、小学校の卒業式は高校ほど湿っぽくはならなかった。『じゃあ中学校で』みたいな感じ。

ちなみに春休みの間に引越しをするのだが、その引っ越し先も同じ学区内に決めてあるので、中学校も元々行くところとは変わっていない。


「今度からは中学生ですけど、楽しみですか?」

「楽しみ! いっぱい友達作る!」

「おー。瑠璃ちゃんは元気いっぱいですなー」

「なにそのしゃべり方ー」

「変?」

「へんー」

「やっぱり変か」

「「ハハハハ」」


いつもみたいな会話をしながら家へと向かった。

きっと周りからは親子にしか見えていなかっただろう。


そして1週間後、俺と瑠璃ちゃんは、法的にも親子になった。



第一部『小学校編』完結

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


というわけで、第一部が最終回となり完結いたしました。パチパチ。

前から活動報告の方で話していたとおり、キチンと瑠璃ちゃんが結婚するまでは続けますので、ご安心くださいませw

次回からは番外編をいくつか投稿し、完結という形にし、第二部の『中学校編』からは、別作品として投稿したいと思います。

主にジャンルを変えようかと思ってますw

このままだと『コメディがない!』とか『ジャンル詐欺者めっ!』とか言われてしまいますので、ジャンルを変えるつもりです。

何も思いつかなかったらそのまま詐欺者として生きていきますw


とりあえず次回もお楽しみに!

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