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答えの聞き方

「えー。ここの数式をここに代入すると、ここの式が求められるから、これをこうやって・・・」


放課後の講習をいつも通りにこなす。

徹夜だからとは言っても、ここにいる受験生たちには全く関係ないことで、とにかくわからないところを一つでも多くわかるようにしてあげなければ、この講習に参加している意味がないのだ。だから俺もいつも通りにわからないところに答え、わかるところは完全に完璧にさせる。

とはいえ、例題や練習問題をさせている時だけは、寝ないように座らずに壁に寄りかかって待っているのだが、ついぼーっとしてしまい朝のことを思い出してしまう。



「俺はお前のこと好きみたいだ」


そう言った俺のことを目を大きく見開いた天野が見ていた。

そりゃあ驚くだろう。俺だって驚いている。


「はは・・・な、何言ってんの? 徹夜で頭おかしくなったんじゃないの?」


流れていた涙を袖で拭いながら天野が言った。


「そうかもしんないけど、そう思った」

「・・・ホントに? 私信じちゃうよ?」

「あー・・・結構本気だ」

「何パーセントぐらい?」

「89パーセントぐらい」

「残りの11パーセントは?」

「えっと・・・10パーセントが将来への不安で、1パーセントが頭おかしくなってる可能性」

「不安多いね」


そう言うと天野は小さく笑った。

そして小さくため息をつく。


「やっぱりダメだって」

「なんで?」

「だって武田もずっと言ってたけど、教師と生徒だもん」


やっぱりそれか。


「じゃあ卒業したら俺のところに来い」

「えっ?」

「卒業するまでは天野は俺の生徒の天野だ。卒業したら俺の彼女になってくれ」


自分でも何を言ってるのかよくわからなくなってきた。

こうやってテンションに任せて物事を進めるのはいつ振りだろうか。


「お前だって長い間俺に気持ちを伝えててくれたんだ。だから俺があと半年ぐらい待つぐらいなんともないさ」

「でも・・・」

「あー、答えもその時まででいい。無理に今出さなくたっていい」


俺は小さく笑って言う。


「とにかく今は瑠璃ちゃんを学校に行かせて、お前も学校に来てくれ。そして半年考えてくれ」

「・・・結局瑠璃ちゃんかい」

「ランドセルが視界に入ってたら、思い出さざるを得ないだろ」

「それもそっか。ふふっ。じゃあ思いっきりモヤモヤしててね。ちゃんと武田と話すように瑠璃ちゃんにも言っておくから」

「おう。頼んだぞ」


軽く手を振りながら玄関を出ていった天野を見送って、少しふわっとした気持ちのまま準備をして学校へと向かった。


朝のことを考えてしまうと、自分でもなんであんなことを言ったのかわからないが、とにかく今は天野のことが頭の中でぐるぐる回っている。

いやいや。帰ったら瑠璃ちゃんのことも話し合わないと。

でも俺は関係ないって言ってたな。ということは学校で何か嫌なことがあったとか?

いやでもでも、他人に当たるようなことをするような子じゃないし、そもそも瑠璃ちゃんが怒ったところなんて見たことないし・・・

学校ではそんなに怒ったりしてるとか?

・・・いやいや。それはないでしょ。

んー。悩み事かー。全然思い当たらない。


講習も終わり、サクサクと家に帰ってきた。

玄関を開けると、料理のレパートリーが広がった瑠璃ちゃんの作るカレーの匂いがしてきた。なんか久しい。


「ただいまー」

「おかえりなさい」


カレーをぐるぐるかき混ぜている瑠璃ちゃんがいた。

俺は着替えながら話しかける。


「天野の家どうだった? 楽しかった?」

「うん。恭子ちゃんちおもしろかった」

「そっか」

「うん」


そしてしばしの無言タイム。

どうやって切り出そうかと考えていると、瑠璃ちゃんのほうから切り出してきた。


「あのね、クラスの子に言われたの。『まさちかさんとはどういう関係なの?』って。『お父さんじゃないなら、誰なの?』って」

「・・・それで瑠璃ちゃんはなんて答えたの?」

「『まさちかさんは私のお父さんだもん』って答えちゃった。お父さんじゃないのに・・・」

「それを言えなくてずっとイライラしてたの?」


そう聞くと、カレーの火を止めて瑠璃ちゃんが俺の胸に飛び込んできた。

顔を埋めたままぐすんぐすんと泣いていた。

そうだよな。六年生にもなればそう聞かれても不思議ではないよな。

無理、させてたのかな。

養子扱いにしなかったのは、瑠璃ちゃんのご両親のことを知らないまま一緒に暮らし始めたからっていうのもあった。

でも今はもう全部・・・とまではいかないけど、ほとんど知ってるんだ。

いい機会なのかもしれない。


「瑠璃ちゃんはさ、俺がお父さんになるのってどう?」

「どうって?」


抱きついたまま顔を上げて聞いてくる。


「養子って言って、キチンと手続きさえすれば瑠璃ちゃんを俺の子どもってことにできるんだ」

「私がまさちかさんの子ども?」

「そ。だからそうなったら今回みたいになんやかんや言われても、『まさちかさんは私のお父さんだー』って言えるよ。どうかな?」

「なるっ! 私まさちかさんの子どもになりたいっ」


い、意外とあっさりだな。こっちが驚いちゃったよ。


「もうちょっと悩まなくていいの?」

「いい! なる!」


この様子だと前から思ってたのか?

ホント、瑠璃ちゃんは一番教えて欲しいところは教えてくれないな。

これが子育てってやつなのかな。

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、抱きついたままぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


昨晩、寒気と頭痛に悩まされ更新が途切れるかと思いきゃ、パブロンを飲んで寝たらスッキリ爽快でした。

薬の力ってスゲー。


次回もお楽しみに!

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