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飲みたい気分のお方

『今日、瑠璃ちゃん、ウチ泊まる』


そんなカタコトめいたメールが天野から送られてきた。

よっぽどだよなぁ・・・

そんなどん底テンションの中、部活の終了を確認し、誰もいない家へと帰るために学校を出た。


「武田せーんせいっ」

「・・・あぁ坂本さん。それに高津先生も・・・お疲れ様です」


部活が終わってちょっとテンションが上がってる坂本さんが隣に駆け寄ってきた。ちょっと後ろには高津先生もいた。同じバスだから一緒に帰ることも少なくないらしい。


「お疲れ様です。って元気ないですね。どうかしました?」

「あーいえ。家庭の事情というやつです・・・はぁ」

「なんか嫌なことでもありました?」

「まぁちょっと・・・」

「もしかして瑠璃ちゃん絡みですか?」


高津先生が俺の様子を見てそう言えるってことは、案外職員室中に知れ渡っているのではないだろうか。

でも今はそんなことまで頭は回らん。


「まぁそんなところです」

「そうですか・・・」

「瑠璃ちゃんって誰です?」

「武田先生が預かってる女の子です」

「預かってる?」

「親戚の子を預かってるんですよ」

「あーそーゆーことですか。その子がどうかしたんですか?」

「なんというか・・・ケンカというかなんというか・・・」

「いくつなんすか?」

「6年生です」

「反抗期ってやつですかー」

「やっぱりそうなんですかね?」

「そのくらいの年頃は誰もが親と距離を置きたがる時期ですからねぇ。僕も親が嫌いでサッカーばっかりしてました。ははは」


あははと笑いながら坂本さんは言った。

俺もこのぐらい軽く考えられればいいんだけどなぁ・・・


「家に帰ったらその子が待ってて、帰りたくなーいとかっていう感じですか?」

「いや、今はあま・・・友達の家に泊まりに行ってるんです」

「そうですかー。じゃあ飲みに行きましょうか!」

「は?」

「嫌なことは飲んで忘れるのが一番ですって」

「でも・・・」

「こう見えて聞き上手なんすよ。いくらでも愚痴聞きますって」


ドンと胸を張ってそう言う坂本さんは、なんかよくわかんないけど頼もしく見えた。

どうせ帰っても誰もいないし。たまにはいっか。


「わかりました! 行きましょう! 行っちゃいましょう!」

「そうこなくっちゃ!」

「わ、私もお供します!」

「高津先生も行きますか! よし。そうと決まれば、僕いい店知ってるんですよ! 行きましょう!」

「おー!」


こうして3人で坂本さんの案内する店へと向かった。

坂本さんが案内した店は小洒落たバーで、雰囲気満点のジャズがかかっていた。

店自体はそこまで大きくなく、カウンターの席が7席ぐらいあるだけの小さなお店だった。

秋山先生とか宏太とかと飲むときはいつも居酒屋ばかりだったので、こういう店は初めてでちょっとドキドキした。


「おーっす!」

「おー。芳樹(よしき)じゃん。久しぶりー」

「久しぶりー」


片手を上げて親しげにカウンターの中に立っている顎髭を蓄えた短髪のイケメンと挨拶をする坂本さん。

下の名前は『芳樹』っていうのか。初めて知った。


「いらっしゃいませ。って何? 友達?」

「俺がコーチしてる学校の先生」

「どうも。武田です」

「高津です」

「いらっしゃいませ。芳樹の大学の時のサッカー仲間の川島です。ごゆっくりどーぞ」


坂本さんの友達の店だったのか。

簡単な自己紹介も終わり、坂本さんがカウンターの椅子に座ったので、俺と高津先生も座った。

左から坂本さん、高津先生、俺という並び。


「なんにします?」

「飲み放題で! ってよかったですか?」

「もちろんです」

「あ、私もだいじょぶです」

「んじゃとりあえずビールかな」

「はいよ」


そう言ってビールサーバーにジョッキをセットすると、こちらを見て川島さんが小さく笑った。


「こういう店は初めてですか?」

「俺は初めてです」

「わ、私も」


高津先生は完全に空気に飲まれてカチコチになってしまってるみたいだった。

薄暗い店内、カウンターの奥に並ぶ英語で書かれた酒瓶、その横には小さめのテレビがあって、外国のサッカー中継が流れていた。

その様子を見て川島さんはまた小さく笑った。


「怪しいお店とかじゃないんで安心してくださいね」

「ははは。こいつ、昔から趣味がよくわかんないんすよ。サッカーと酒とかならまだわかるんですけど、そこにジャズ好き、コーヒー好き、お寺好き、その他もろもろ」

「多趣味って言えよ。ジャズの良さ語ってやろうか?」

「聞き飽きたっての」


そう笑い合う坂本さんと川島さんは、見ているだけで仲がいいことはよくわかった。

高津先生のほうをチラッと見ると、笑顔を浮かべていて、緊張が解けていたように見えた。

でも俺の頭の中は、瑠璃ちゃんのことがぐるぐると回っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


うちの母上がインフルエンザにかかりました。

風邪かと思ってたらーってパターンでした

皆さんも気を付けましょう。ゲホゲホ


次回もお楽しみに!



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