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隠し事の仕方

「酒井先生って知ってるよな?」


昼休みにいつものようにコンビニで買っておいた弁当を食べていると、なんの前触れも無く秋山先生が言った。


「いきなりですね。瑠璃ちゃんの担任の先生ですよ」

「あーそっかそっか。そんで酒井がさー、『最近お受験お受験って親御さんが言ってるんですよー』って言ってくるんだわ」


ここ近年、『受験』は中学高校だけのものだけではなく、小学生でも受験をする時代である。

昔から小学生の『お受験』はあったのだが、そこまで多くの小学生がしているわけでもなく、ごく少数だった。理由は大学付属の学校へ行ってエレベーター制を利用したり、単純に高学歴を狙うために行ったりとさまざまだ。


「最近は小学生でもお受験する時代ですもんね。僕の頃は付属中とか行ってる子はなんか違う目で見られてましたからねぇ」

「俺の頃なんか行ってる奴はいなかったっての」

「僕は『お受験』なんて言葉は知らなかったです」

「だよなー。ってそうじゃなくて、瑠璃ちゃんはお受験とかしないのか?」

「お受験ですかー。全然考えてなかったですね」

「おいおい。それでも教師かよ」


笑いながら言う秋山先生に、俺も笑いながら答えた。


「こう見えても教師です。でも自分が高校受験が最初だったせいで、瑠璃ちゃんが小学生で受験するなんて考えもしなかったです」

「そんなもんなのか」

「そんなもんなんじゃないですか? 僕の場合は瑠璃ちゃんの親御さんと面識がほとんど無いんで、そういうことって全然聞かないせいかもしれませんね」

「面識がないって言うけどさ、参観日とかどうしてんの?」

「・・・さんかん・・・び・・・」


俺はハッとした。


「あ? なした?」

「・・・そういえば瑠璃ちゃん、参観日のお知らせみたいの一回も持ってきたことないですね」

「おいおいマジかよ」


他の用紙はちゃんと持ってきてる。運動会だってそうだったし、来月末の学習発表会だってちゃんと持ってきてたし・・・


「僕に気をつかって・・・瑠璃ちゃんならありえそう」

「話でしか聞いたことないけどさ、瑠璃ちゃんってそんなに隠し事多いのかよ」

「いや、そんなことないですよ。困ったことがあれば言うようになりましたし、わがままだって言うようになりました。そこらへんの子よりはしっかりしてると思います」

「完全に親の主観じゃねぇか。んで肝心なところは隠してるってアレだろ? もっと隠されてることあるんじゃないのぉ?」

「ちょ、やめてくださいよ。きっと俺に気をつかって言わなかっただけですって。俺と瑠璃ちゃんの絆は海よりも深いんですから」


そうだ。俺と瑠璃ちゃんはいろんなことを乗り越えてきたんだから。


「海よりも深いところにあって本心は見えないってことか」

「誰が上手いこと言えと」

「でも瑠璃ちゃんだって・・・6年生だっけ? 隠し事の一つや二つあってもおかしくないだろ」

「そんなもんなんですか?」

「そんなもんなんじゃないのか? まぁとりあえず帰って聞いてみろよ。もしかしたら参観日っていう制度がない学校なのかもしれないし」

「そんな学校あるんですか?」

「もしかしたらだっての。人がせっかくポジティブに考えさせようとしてたのに」

「すんません。帰ったら聞いてみます」


そして学校の全行程が終了して、俺はそそくさと家に帰ってきた。

瑠璃ちゃんが出迎えてくれたのだが、すぐに聞く気にはなれず、結局ご飯を食べ終わってからになってしまった。

食後に一緒にテレビを見ていた。

よ、よし。聞くぞ。俺は聞くぞ! る、るる・・・


「る、瑠璃・・・瑠璃ちゃ・・・」

「?」


瑠璃ちゃんは、言う勇気を振り絞ろうと頑張っている俺を見て、不思議そうな顔をしていた。

振り絞りすぎて気絶しそうになったが、瑠璃ちゃんのそんな顔が視界に入ったので、オホンと気を取り直してサクッと聞いてみることにした。

名付けて『さらっと言ってから後悔しよう』作戦。


「瑠璃ちゃん。俺になんか隠し事してない?」


言っちゃったー。あー言っちゃったー。

どうにでもなーれ。


「隠し事?」


さっきと同じ顔のまま首を傾げる瑠璃ちゃん。


「ほら例えばさ、その・・・参観日とか? あと参観日とか? 他には・・・参観日とか?」


参観日だけに3回・・・なんつって。

こんな冗談を言ってないとやってられない精神状態なのだ。ただでさえ瑠璃ちゃんが俺に隠し事をしてたってだけでもダメージがデカいのに、それを事実化してしまったらもうどうなることか・・・


「参観日? だってまさちかさん、来れないでしょ?」


意外。瑠璃ちゃんはあっさりとそう言った。


「まぁそうだけど・・・」

「だから見せてなかった」

「だからってことはないでしょ。行けなくたって、そういうのは見せないとダメじゃん」

「そうなの?」

「そうでしょ。もしかしたら行けるかもしれないし」

「んー・・・じゃあ今度から気をつける」


あっさりとそう言った瑠璃ちゃんは、またテレビを見始めてしまった。

なんかしっくりこなかったが、今度から気をつけるって言ってくれたわけだし、気をつけてくれるんだろう。

俺はテレビでやっていた改築番組の続きを瑠璃ちゃんと見た。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


風邪を引いて喉がガラガラで大変です。

3日でのど飴を3.5本食べました。

過去最高記録を樹立しそうなのど飴の消費率ですw


次回もお楽しみに!

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