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お墓参りの仕方・後

途中、お昼ご飯を道すがらに見つけたそば屋で食べ、また車で移動を再開した。

向かうは札幌から少し離れた旭川。瑠璃ちゃんが生まれた土地である。

あらかじめ例のおっさんから、瑠璃ちゃんの過去のことを調べてもらっていた。

すると旭川で両親と過ごし、両親の死後は親戚のおじさんのところへ行くために札幌へ来ていたということがわかった。そしてさらに瑠璃ちゃんの両親のお墓が旭川にあるそうだ。

今日はそこのお墓参りがメインなのだ。

まだ瑠璃ちゃんには話していないが、助手席に座るじいちゃんには話している。

表向きには『じいちゃんが俺に頼んで墓参りに連れていってもらう』となっているが、じいちゃんは万が一何かあった時のためにと付いてきてくれたのだ。本当は瑠璃ちゃんと2人で行く予定だったのだが、このことを例のおっさんから聞いたじいちゃんが、ついていくと言って聞かなかったというのが現実だった。

車を運転するのは久しぶりだったが、時間もあるためのんびりとしたペースで進み、約3時間ぐらいで旭川市内に入った。中心部へと近づくにつれて、さすがにどこに行くか気になってきたのか、信号待ちのタイミングで俺に向かって聞いてきた。


「どこに行くの?」


その言葉にじいちゃんのほうをチラッと見たが、寝ていた。使えないじいさんだ。


「お墓参りだよ」

「だれの?」


俺はちょっと迷ったが言うことにした。


「瑠璃ちゃんのお父さんとお母さんのお墓参り」

「えっ?」

「瑠璃ちゃんには悪いと思ったけど、ちょっと調べたんだ。そしたら旭川の墓地にお墓があるっていうから、連れていこうと思って」


瑠璃ちゃんからの返事がなかったのでバックミラーで見てみると、驚いたように俺の背中を見ていた。見ていたというよりも固まっていた。

途中でどこかに止めようかとも思ったが、もう近くまで来てしまっているので、このまままっすぐ行くことにした。

目的の墓地へと到着し、車を駐車場に止めた。そしてエンジンはかけっぱなしで車から降りたのだが、爆睡しているじいちゃんはともかく、瑠璃ちゃんが降りてこない。瑠璃ちゃんが乗っている後部座席のドアを開けて、瑠璃ちゃんに降りるように促すと、重そうな足取りで降りてきた。

ゆっくりではあるが一緒に歩いてくれている瑠璃ちゃんは、嫌そうというか辛そうというかなんというか・・・

余計なお世話だったか?

でも瑠璃ちゃんの話を聞いて、いくら一家心中しようとして、瑠璃ちゃんだけ生き残ってしまったとはいえども、両親と別れの挨拶もしてないというのはどうかと思ったのだ。それに俺も瑠璃ちゃんを育てていく身として挨拶をしておきたいと思ったのだ。

俺のわがままかもしれないが、瑠璃ちゃんには一緒にお墓の前までは行ってもらう。

なお重い足取りで歩く瑠璃ちゃんに話しかけた。


「何も言わないで連れてきてごめんね。でも瑠璃ちゃんに、お父さんとお母さんに別れの挨拶をしてもらいたかったんだ」

「・・・・・・」

「嫌だった?」

「・・・・・・」


珍しく反応を示さない瑠璃ちゃん。

いつもなら言いにくかったら首を振ったり頷いたりするのだが、それすらない。


「怒ってる?」

「・・・おこってない」

「嫌だった?」

「イヤじゃないです」

「じゃあ」

「でも何もおしえてくれないでつれてこられたのはイヤでした」


そこか。

内緒にしてたことに怒ってるってことか?


「・・・ゴメン」

「はぁ・・・。まさちかさんが私のことを思ってやってくれたのはうれしいの。でもきゅうにお父さんとお母さんに別れのあいさつとか言われてもわかんないじゃん」

「ゴ、ゴメン」


瑠璃ちゃんがため息をついたので、ちょっとビックリしてしまった。怒っていたのではなく、俺に呆れていたように聞こえたのだ。


「よしっ。さぁ行きましょうっ」


覚悟を決めたのか、俺の手を取って引っ張っていく瑠璃ちゃん。

あらかじめ聞いていた区画を全体の案内板で探し、そこに行くと『長谷川家』と書かれた墓石があった。

俺はばあちゃんの墓と同じように墓石を洗い、線香を立てて、持ってきていた仏花を1束置いた。

そして瑠璃ちゃんの背中を押して、言いたいことを言うように促した。


「お父さん。お母さん。ひさしぶりです。私は元気です。まさちかさんといっしょにくらしてます。まさちかさんとやくそくしたとおり、幸せになります。バイバイ」


瑠璃ちゃんは一気にそう言うと、クルリと墓石に背を向けて俺のお腹あたりに飛び込んできた。そして静かに泣いていた。

俺は『頑張ったね』『ごめんね』と口には出さずに、代わりに頭を撫でた。

次は俺の番だ。


「初めまして。武田正親といいます。瑠璃ちゃんと一緒に暮らしてます。これからは俺が瑠璃ちゃんを育てていくので、安心して眠ってください」


いろいろ言いたいことは考えてあったのだが、いざ墓前に立つと雰囲気に押されて結局短くなってしまった。多分帰りの車の中とかで言いたかったことを思い出すんだろうな。

泣きながらではあったが、瑠璃ちゃんにも手を合わせるように言い、2人で手を合わせてお墓をあとにした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とかかいていただけると嬉しいです。


あいかわらずのコメディ要素無しですね。

ホントジャンル詐欺・・・


次回もお楽しみに!

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