お墓参りの仕方・前
「あ、もしもし」
『やぁひさしぶりだね』
「ご無沙汰してます」
『今日はどういったご要件で?』
「ちょっと教えてもらいたいことがありまして」
『・・・一応個人情報になるだろうから、タダじゃないよ?』
「はい。それでですね・・・」
8月になり、北海道にも夏が訪れていた。
他県他府他都に比べると、北海道の夏なんて寒いものかもしれないが、暑いものは暑い。
せっかくの夏休みも、ほとんど部活のほうに顔を出しっぱなしで、それ以外は夏休みの夏期講習をしていた。そのせいで瑠璃ちゃんにかまってあげることもできず、ズルズルと来てしまった結果、もう夏休みも残すところ1週間となっていた。
この時期はお盆ということもあり、サッカー部のほうも3日間の連休となっていた。今日はその初日だ。
一方瑠璃ちゃんはというと、いつもの3人と遊んだりして、それなりに充実をしているみたいで、宿題の1行日記なんかも書く事には困らないようだった。遊ばない時は家で宿題やらなんやらをしていた。
そして今日は、俺のばあちゃんの墓参りに行こうと計画していた。
これはじいちゃんからのお願いでもあって、俺にレンタカーを借りて連れていってほしいということだ。
瑠璃ちゃんにもかまってあげたいけど、たまにはじいちゃんにもかまってあげないと、寂しくて孤独死してしまうかもしれない。まぁうちのじいちゃんの場合はそうでもないんだろうけど。
瑠璃ちゃんにその話すると一緒に来たいというわけで、今こうして車でばあちゃんの墓がある墓地へと向かっている。
助手席にはじいちゃん、後部座席には瑠璃ちゃんが座っている。
瑠璃ちゃんは俺と暮らし始めてから遠出をするのが初めてで、見たことない景色にキョロキョロとしていた。
その間、俺とじいちゃんは世間話をしたり、瑠璃ちゃんに話しかけて学校や友達の話を聞いたりしていた。
そんなこんなで墓地に到着すると、住職さんに軽く挨拶をし、墓石を洗う道具を借りてばあちゃんの墓に向かった。そして水をかけて綺麗に洗い、線香と花を添えた。
「よし。こんなもんか」
「ありがとな」
俺が洗い終わって一歩下がると、じいちゃんは墓の前にしゃがみこみ、手を合わせた。
「ばあさん。正親が今女の子を育ててるんじゃ。瑠璃ちゃんって言うんじゃがな、それがもう可愛くてな・・・」
今日のばあちゃんへの報告のメインは、瑠璃ちゃんのことだったみたいだ。それからも瑠璃ちゃんの話が続き、申し訳程度に自分のことを話した。
「ってことじゃ。ワシはまだまだそっちには行けんが、もう少し我慢してくれ。ホホホ」
そう言って手をパンパンと叩いて立ち上がった。
俺も何か言おうかと思ったけど、
「いつも元気で頑張ってます」
これしか言うことが思いつかなかった。いざこうやって報告みたいな・・・ってゆーか報告なんだけどさ。こういうときって何話していいかわからないんだよね。そんなに劇的な生活をしてるわけじゃないし。
「瑠璃ちゃんも何か話すかい?」
「私は会ったことないです」
「こういうのは挨拶みたいなもんじゃから、気にせず自己紹介とかでいいんじゃよ」
そうじいちゃんに言われると、瑠璃ちゃんは墓の前に立った。
「は、はじめまして。長谷川るりです。まさちかさんといっしょにくらしてます。よろしくおねがいします」
そう言って顔だけでこちらを見て『これでいいの?』と聞いてきたので、それに笑顔で応えると、ホッとしたようでこちらに戻ってきた。
その後、道具を返して車へと戻ってきた。
車内はサウナみたいに暑かったので、クーラーをかけて涼しくなるまで外で待ち、それから中に入った。
車内の涼しさに全員が一息ついた。
「じいちゃん」
俺はじいちゃんと目を合わせて頷くと、じいちゃんも小さく頷いた。
「瑠璃ちゃん。これからもう一つちょっと遠いところに行くんだけど、付き合ってもらってもいい?」
「うん。大丈夫だよ」
「ありがと」
俺にとってはこれからが本番なのである。じいちゃんは付き添ってくれたにすぎない。
カーナビでだいたいの方向を確認し、車を走らせた。
「でも先にお昼ご飯にしようか」
腹が減っては戦は出来ぬって言うしね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とかあれば書いちゃってください。激しく喜びます。
後編に続く!
執筆中BGM「マミさんのテーマ」
次回もお楽しみに!




