夕食時の会話の仕方
「こもん?」
「そ。今年は部活の顧問をやるんだ」
「何部?」
「サッカー部」
新学期が始まり、始業式が終わった日の夕食時。
俺は瑠璃ちゃんにサッカー部の顧問をすることになったことを伝えた。
去年も顧問の話は来ていたのだが断っていた。でも今年は瑠璃ちゃんも6年生になるし、俺もだいぶ落ち着いてきたからと思って受けてみた。もしも急用があった場合は、サッカー好きな伊藤先生がフォローしてくれるって言ってたし。ちなみに伊藤先生は生徒会やその他委員会を取りまとめたりしている。何気に多忙な先生なのだ。
持ち上がりで3年の担任になったわけだけど、実際に勉強するのは生徒たちだし、講習とか入ったとしても、部活の最後の方にちょっと顔出せば問題ないらしいから少しは楽だろう。
「まさちかさんはサッカー出来るの?」
「中学校まではサッカーしてたんだけど、高校ではやらなかったかな。その頃バイトとかしてたし。でも見るのは好きだよ」
「ふーん」
見るのとやるのは別だけど、顧問とはいえども、うちのサッカー部はコーチとして外から指導者の人を迎え入れているため、俺があーだこーだ言わなくても大丈夫なのだ。
「瑠璃ちゃんはサッカー好き?」
「よくわかんない。やったことないもん」
「女の子はサッカーとかやらないか」
そう言って瑠璃ちゃんはザンギを口に一つ放り込んだ。
今はなでしこジャパンとかの影響で女子サッカーも流行ってきているが、それでも小学生の女の子が興味を持つのはまだまだ先になりそうだ。それに授業とかでもサッカーはやらないだろうしね。
「でも怜央くんとかヒロトくんとかはサッカーしないの?」
「よくゲームしてるー」
現代っ子だなぁ。俺が瑠璃ちゃんぐらいの頃は、学校から帰ってきたら、すぐに遊びに行って、暗くなってから帰って母さんに怒られてたなぁ。
今の子はそんなことしないのかなぁ。
公園とかも遊具減ってるみたいだし。
子どもはちょっとやんちゃな方がいいと思うんだけど、やっぱり親とか見てると過保護すぎるんだよな。
でも子どもが心配なのは瑠璃ちゃんと過ごしててよくわかる。瑠璃ちゃんかわいいもん。
そうそう。
学年が上がりクラス替えもあって、天野は俺が担任のクラス、中村は隣のクラスと別々になってしまった。ちょっと残念そうな天野だったが、中村があれこれ説得したみたいで、平常運転の天野に戻っていた。結局は俺が担任ということが決め手になったらしい。
瑠璃ちゃんのクラスはそのまま持ち上がりだったので、玲央くんともヒロトくんとも笹木さんとも同じクラスのままだった。
ってゆーか瑠璃ちゃんってゲームするのか。意外だ。
「ゲームってなにしてるの?」
「いっつもWiiとか4人でできるやつやってる。でも笹木さんとヒロトくんはDSとかもやってる」
「へー」
俺の頃で言うところの、ゲームボーイと64みたいなもんか。よく64のコントローラー持って遊びに行ったなぁ。通信ケーブルも今は無いみたいだし。懐かしいなぁ。
「瑠璃ちゃんはDSとかやらないの?」
「うーん・・・」
ちょっとうつむく瑠璃ちゃん。
・・・あっ、もってないもんね。
「欲しい?」
「そんなにほしいとは思わないかも」
「そうなの?」
「うん」
あら意外。
みんなやってたらやりたくなるもんじゃないのかな?
でも瑠璃ちゃんって周りに流されないっぽいから、そういうところがあっても不思議じゃないか。
「外で遊んだりするほうが好き?」
「うん。体育好きー」
「体育の授業で何が好き?」
「バスケットボール!」
おー。
「じゃあなんかそういうのあるでしょ。クラブチームみたいなの。そーゆーのやってみれば?」
「んー・・・中学校に行ったらやってみたいけど、今はいいです。怜央くんたちと遊んでるほうが楽しい」
まだそのへんは子どもか。
・・・ってあれ?
「瑠璃ちゃんってバスケ出来るの?」
「・・・好きと上手いはべつなんだって酒井先生が言ってた」
「・・・なんかごめん」
俺と瑠璃ちゃんは2個残ったザンギを、1個ずつ分け合って口の中に放り込んだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
さて新年度になりました。
結構サクサク進みそうな予感です。
ここからものんびりとお付き合いください。
次回もお楽しみに!




