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秘密の特訓の仕方

2月入り、放課後の受験対策の特別講習なんかも引き受けたりしていたせいで、いつもよりも帰りが遅くなる日が多くなってしまっていた。遅くなる日が多くなることは、瑠璃ちゃんに話して了承を得ているのだが、それでも家に1人で留守番をさせていることが心配なので、なるべく早く帰るようにはしていた。

そして今日も講習があったせいで遅くなってしまったが、いつもよりも早く帰ることができたわけなのだが、玄関を開けるとなにやら奥でドタバタしている音が聞こえた。

最近俺が帰ってくると聞こえてくるこのドタバタ音なのだが、発生源は瑠璃ちゃんだった。

最初は何事かと思ったんだけど、よくよく考えてみると今は2月だ。

そして知らないうちに増えていたお菓子の本。

そしてそして日常生活で使うことのない、冷蔵庫の中の生クリーム。

いくら俺でもわかった。

きっと去年みたいにバレンタインデーに向けて練習しているんだろう。

それに気づいた俺は、気づいてない見てない聞こえてないフリをしている。俺ってば大人ー。

去年はチョコくれたんだし、今年ももらえるだろう。もらえなかったら・・・泣く自信がある。

そんなことを考えながらいつものようにダラダラと靴を脱ぎ、玄関と部屋の間にあるドアを開けた。


「ただいまー」

「「あっ!」」

「・・・あれ?」


『やべっ! バレた!』みたいな感じで固まる瑠璃ちゃん。と、もう1人。

この子は・・・瑠璃ちゃんの話に出てくる笹木さんか?


「お、おかえりなさいー」

「えっと、お邪魔してますー」

「いえいえ。むしろ俺がお邪魔しちゃいましたー」


3人でエヘヘと笑って、とりあえずごまかした。何をごまかしたかというと、それはもういろんなものである。とにかくごまかした。


「その子が笹木さん?」

「そうっ!」

「さっ、笹木キララです!」


キララ。すごい名前だなぁ。うしろに『397』とかつきそうな名前だ。

髪もちょっと茶色が入ってるみたいだし、なんか縦にクルクルドリルってるし、完璧なお嬢だな。


「君が笹木さんか。いつも瑠璃ちゃんがお世話になってます。瑠璃ちゃんの保護者の武田正親です」

「あなたが『まさちかさん』。話は瑠璃から聞いてるわ」

「そんなに俺のこと話してるの?」

「話してるっていうか、まさちかさんまさちかさんってよく言ってるよ」

「ちょっと笹木さん・・・」


笹木さんがそう言うと、瑠璃ちゃんが隣で照れていた。

やっぱり俺、瑠璃ちゃんに好かれてるなー。俺も大好きだから嬉しいさー。

そういえば瑠璃ちゃんがうちに誰か連れてくるのって初めてじゃないか?

バレンタインデーに向けての特訓を2人でしていたのだろうか。ってゆーか、うちに連れてくるなら連れてくるって言ってくれれば、お菓子とかなんか色々買っておいたのに。あ、お菓子を作ってたのか。

でもそれにしても作ったお菓子はどこに消えているんだろうかと思い、部屋の中をキョロキョロとしたがどこにも見当たらなかった。ふむ。わからん。


「じゃあキララ帰るね」

「あ、うん。気を付けてね」

「途中まで送っていこうか?」

「大丈夫。すぐそこだもん」

「そんなに近いの?」

「うちの裏の裏ぐらい」

「近いな!」


予想以上に近かった。歩いて5分かからないじゃん。


「じゃあまた明日ね」

「うん。バイバイ」


玄関で見送って、暖かい室内に戻った。

すると瑠璃ちゃんの動きがギクシャクし始めて、そわそわしていた。

多分いつもよりも帰ってくるのが早かったから、隠しきれてない部分があるんだろう。

俺はそう解釈すると、カバンとコートを置いて言った。


「今日は汗かいちゃったからちょっとシャワー入ってくるね。ご飯ちょっと遅くなってもいい?」

「大丈夫。まだそんなにお腹へってないから」

「フフッ。そっか。じゃあちょっと入ってくるわ」


特に入ろうと思ってなかったタイミングでシャワーに入った瞬間、なにやらドタバタと聞こえたので、俺の予想は正しかったと思った。

この様子だと、バレンタインデーは期待していいってことだな。

こんだけ協力(?)してるんだから、きっとすごいものが出来上がるんだろう。

こんなに楽しみなバレンタインデーは久しぶりだ。

そう思いながら、俺は脱衣所で服を脱いだ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


正親は先に部屋に入った2人のことは知りません。

知らないことで幸せなこともあるのです。


次回もお楽しみに!

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