初詣の行き方
「じゃあ行こっか」
「うん」
今年もあと1時間もしないで終わろうとしている。
そんな中、俺と瑠璃ちゃんは、前から約束していた初詣に出かけるために、夜中に家を出発した。
今日この初詣のために、瑠璃ちゃんは昼寝をたくさんしており、夕方にたくさん寝ていた。だから『夜は大丈夫』とか言ってたけど、やっぱりいつもは寝ている時間なので、頭がボーッとしているようでどこか眠そうだ。
そんなボーッとした瑠璃ちゃんと一緒に近所の神社に向かった。
去年は家で普通に過ごしてて、年が明けてからじいちゃんとこと実家に挨拶に行った程度だった。
というよりも、初詣なんて何年ぶりだろうってくらい行ってない。
俺は仏教でもなければそういう行事ごとにはとことん疎い。いや、そこまで興味がない。1年の始めに初詣に行くという風習はよくわからない。
だからこんな夜中に初詣に行くのなんて久しぶりだった。
隣を歩く瑠璃ちゃんを見て思ったけど、こうやって誰かと一緒に行くからいいのかもしれない。1人だったら絶対に途中で帰る。寒いし。
俺と同じようにダウンとニット帽と手袋をつけた完全防備の瑠璃ちゃんだが、それでも俺と同じように寒そうに歩いている。寒いのは苦手だ。でも暑いのはもっと苦手だ。夏なんて無くなってしまえばいいのに。
腕をピンと伸ばしながら歩いてて、今にも『私寒いです!』と言いそうな瑠璃ちゃんに声をかけた。
「寒い?」
「さむくない」
「めっちゃ寒そうだよ?」
「さむくないの。はつもうでに行くんだもん」
「はいはい」
最近わかったのだが、瑠璃ちゃんってば意外と頑固なのだ。
一度決めたことは最後までやり抜くし、完遂するまではやり続けるタイプだった。
誕生日に1000ピースのパズルを買ってあげたんだけど、それも1人で完成させちゃったし。忍耐力が素晴らしい。俺もちょっと手伝いたかったのは内緒。
ちなみに俺はネクタイをもらった。毎日つけて行きたいと思っている。
寒さで顔が痛いにもかかわらずのんびりと歩いていると、神社が見えてきた。
近所の神社だからそこまで混んでいないと思っていたのだが、すでに100人ぐらいが列を作っていた。
ここでこの人数ってことは北海道神宮なんかはもっとすごいんだろうな。
俺は瑠璃ちゃんが迷子にならないように手をつなぐと、列の最後尾に並んだ。
ケータイで時間を見てみると、あと20分で今年が終わる。
「すごい人だね」
「みんなはつもうでに来てるんでしょ」
「そうみたい。俺も夜に並ぶのは初めてかも」
周りを見てみると、結構子ども連れの人もいた。よく起きてられるなぁ、と思ったが、俺の横にも同じような歳の子がいるのを思い出して、その考えを修正した。
「寒いねー」
「さむくない・・・ックシュン!」
「ほらー。やっぱり寒いんじゃん。別に寒いって言ったって途中で帰ったりしないって」
「うぅー」
「鼻水出てんじゃん。ティッシュ持ってきてたっけ?」
カバンの中からティッシュを取り出すと、手袋のせいで鼻がかめない瑠璃ちゃんの代わりに、鼻をかませてあげた。そしてカバンにティッシュをしまって、代わりにカバンから秘密兵器を取り出した。
「ジャジャーン」
「おぉ!」
思わず漏れる瑠璃ちゃんの声。
ふふふ。素晴らしいリアクションだ。それが見たかったんだよ。
俺がカバンから取り出したのは、振ると温かくなるカイロ。どうせ寒いと思って持ってきていたのだ。
「寒いと思って持ってきたんだー」
言葉には出さないが、『早くくれ!』と言わんばかりの眼差しを向けてくる瑠璃ちゃん。
「でも寒くないならいらないんじゃない?」
「うっ・・・寒い! 寒いです!」
撤回早かったな。カイロの魔力には敵わなかったか。
俺は瑠璃ちゃんにカイロを渡すと、早速シャカシャカと振り始めた。
俺も同じように振っていると、だんだんと温かくなってきた。それを顔にあてると生き返るようだった。まるで砂漠だったお肌に水が入った状態。
瑠璃ちゃんも同じように顔に当てて笑顔を見せていた。この笑顔が見れただけでもカイロを持ってきて良かったってもんだ。
すると急に周りがざわざわし始めた。
そして周りからカウントダウンが聞こえてきた。
『5』
『4』
『3』
『2』
『1』
『『イエェーーーーーーイ!』』
なんとカイロを振って温まっている時に年が明けてしまった。
瑠璃ちゃんと顔を見合わせると、2人で小さく笑った。
「あけましておめでとう」
「うん。あけましておめでとうございます。よろしくおねがいします」
「こちらこそよろしくね」
そしてまた笑った。
年明けと共に進んでいく列と一緒に進み、用意していた5円玉を賽銭箱に入れて、ガラガラと縄を振って、手をたたき、目をつぶって心の中で祈った。
『今年もいい年でありますように』
その後引いたおみくじ。
「うわっ。末吉・・・微妙・・・。瑠璃ちゃんは?」
「えへん」
「大吉! さすが瑠璃ちゃん!」
「やった」
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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誕生日回だと思った? ねぇ誕生日会だと思った?
残念。初詣回でした。
次回もお楽しみに!




