お祝いの仕方
すっかり夏の暑さもなくなって、比較的過ごしやすい涼しい9月。
9月と言えば、俺と瑠璃ちゃんが出会った月だ。
そして今日は瑠璃ちゃんと出会った日ということで、デパ地下で買ってきたちょっとオシャレなケーキなんかをテーブルに並べていたりする。
ジュースとワインで乾杯をし、瑠璃ちゃんの希望で作ったビーフシチューとサラダを食べ終わって、ケーキを食べていた。
「そういえば瑠璃ちゃんの誕生日っていつ?」
「12月です。12月4日です」
「・・・えっ?」
マジスカ?
「ホント?」
「はい。私へんなこと言いましたか?」
「いや、俺もその日が誕生日なんだけど」
「えっ!?」
そりゃ驚くわ。俺だって驚いたもん。
「じゃあ次にケーキを食べるのは12月4日だね」
「そうですね」
そんなフワッとした会話をしていて思った。
『そろそろ敬語じゃなくてもいいんじゃないか』と。
前から思ってはいたんだけど、もう1年になるんだし、色々あった1年だったんだし、俺と瑠璃ちゃんの距離もそれなりに縮まったはずだ。少なくとも最初の会話0のときに比べれば、だいぶ縮まったはずだ。
だったら一緒に暮らしてるんだし、敬語じゃなくてもいいんじゃないか。
よし。思い切って言ってみよう。1年記念だし。
「あ、あのさ、そろそろ敬語とかやめない?」
「えっ・・・でも・・・」
「なんていうの? 親しき仲にも礼儀ありって言うかもしれないけどさ、なんか敬語って他人行儀っていうか・・・」
「正親さんはけいごじゃないほうがいいんですか?」
「できれば・・・」
最初は瑠璃ちゃんは敬語じゃないと話せないのかと思ってたんだけど、運動会の時に、怜央くんとヒロトくんと一緒に話してたときは敬語じゃなかったから、きっと『年上には敬語』みたいな概念があるんだろう。
時々敬語じゃないときもあるってことは、意識して敬語使ってたってことだもんな。
「わかりました。けいごは少しづつ気を付けていきます」
このセリフを敬語で言っちゃうあたりが瑠璃ちゃんだよな。説得力0だ。
「ぜひ善処してください」
「ぜんしょ?」
「あー、頑張ってくださいってこと」
「うん。わかった」
おー。これはこれで可愛い。さすが瑠璃ちゃん。
この勢いでちょっと踏み入っちゃおうかなぁ。1年記念だし。
「瑠璃ちゃんってさ、好きな子とかいるの?」
これはマズった。自分で質問の選択をミスった。
イエスの場合。
『これはどうにかしてやるしかない』
ノーの場合。
『瑠璃ちゃんに興味が無い奴はおかしい』
こうなるのが目に見えてる。
やっちまったけど、もう後戻りはできない。頑張れ俺。
「はい」
「えっ? マジで?」
「玲央くん」
あーマジか。あーマジか。あー・・・マジでかー・・・。
「と、ヒロトくんと、笹木さん」
ん?
「なかよしなのはこの3人。みんな大好き」
ちょっと照れながらそう言う瑠璃ちゃん。
・・・あ、そういうことか。
まだ恋愛感情とかまではわからないってことか。
LOVEはまだ瑠璃ちゃんには早かったか。
マーベラス! ディ・モールトベネ! ベリーグッド!これは素晴らしい! 模範解答だ!
そんなことは一切表情には出さずに、俺なりの聖母のような微笑みで笑いかけた。
「そっか。ちゃんと仲良くするんだよ?」
「うん」
「あ、ケーキ美味しい?」
「すごく美味しい」
「良かった」
ふぅ。危機を乗り越えた感が半端ないや。
でも考えたくないけど、瑠璃ちゃんにも彼氏とか出来る日が来るんだろうな。その日までには心の準備をしておこう。・・・できるか?
ケーキも食べ終わり、いつものように並んで座ってテレビを見ていた。
「この1年どうだった? 短かった? 長かった?」
「わからないです。でも楽しかった」
「そっか。良かった」
こうして俺と瑠璃ちゃんの1年記念は終わった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
ビーフシチューをリクエストした瑠璃ちゃんを想像したら萌え禿げた。
そして最後らへんのを書いてる最中に、ちょっとグッとくるものがあって泣いてしまったww
唐突に終わってるのはそのせいです。
ごめんなさい。
次回もお楽しみに!




