暇のつぶし方
「暇だ」
そう呟いても誰も答えてなんてくれない。
入院生活も早2週間。
リハビリ代わりの運動が午前中にあり、その後病院食、そして午後の暇な時間があって、瑠璃ちゃんがやってくる。
最近はこの瑠璃ちゃんが来るまでの時間が退屈で仕方なかった。
毎日のように本を読んでいたのだが、目が疲れるようになってきたし、右手一本で読んでるもんだからては痛くなってくるし、さらに言うと同じ体勢で読んでるもんだから、肩やら首やらが疲れて仕方なかった。
怪我の具合なのだが、肋骨のほうは完治したみたいで、胴体に巻いていた包帯も取れて痛みも無くなっていた。だから寝たきりというわけではなく、時々起きたりしているのだが、いかんせん左の足と腕が骨折してるもんだから、動きにくいのは変わりなかった。
だから病室からでることもままならないし、大人しく怪我を治すことに専念しようとは思っているのだが、暇なもんは暇だ。
備え付けのテレビとか見たりしてるんだけど、この時間帯のテレビってあんまり面白くないんだよね。ドラマかニュース、あとはテレビショッピングとかばっかり。
ニュースでもいいんだけど、毎日テレビを見ているせいか、同じ内容ばかり繰り返して報道するもんだから飽きてしまった。
はぁ。早く瑠璃ちゃん来ないかなー。
「まさちかさん」
いつものように瑠璃ちゃんが入ってきた。
その声に同室の老人がピクリと反応する。なんでも小さい子の声にちょっとだけ反応するらしい。看護師さんが言ってた。原因は不明。
ってか早いな。いつもより1時間は早いぞ?
「今日早くない?」
「今日は午前授業でした」
「あーそういえばそんなことも言ってたね」
「あんたは瑠璃ちゃんの話も聞いてなかったのかい」
「これだけ暇な時間が続くと、いつの話だったかどうかわかんなくなるんだよ」
瑠璃ちゃんのあとについて入ってきた母さんに言ってやった。
のんびりすぎる生活は1日が超長いもん。どれがどの日の記憶かグチャグチャになるわ。
「今日はね、テストで100点をとりました」
「おぉー! さすが瑠璃ちゃん!」
「・・・へへ」
ランドセルの中から取り出したテストには、赤ペンで書かれた丸がたくさんついており、点数の欄の『100』のところには花丸が書いてあった。
そして俺が頭を撫でると嬉しいのか、笑顔になる瑠璃ちゃんだった。
とはいえ、瑠璃ちゃんがテストで100点以外の点数をとってきたことがないのもまた事実だ。これは将来は大臣か医者か・・・でも瑠璃ちゃんには好きなことをしてもらいたいな。そんな親心。
「調子はどう?」
「んー。暇かな」
「元気そうね。このまま大人しくしてれば早くくっつくかもって言ってたし、暇なのは我慢しなさい」
「せめて腕だけでも治ってくれれば楽なんだけどなぁ」
「たくさん牛にゅうのんでね」
「それはもちろん飲んでるんだけどね・・・」
瑠璃ちゃん。人間には牛乳のカルシウムだけではどうにもならないことだってあるんですよ。
「あらー。こんにちわー」
「こんにちわ」
「あ、息子がお世話になってます」
「いえいえ。さて、武田さん。検温の時間ですよー」
病室に担当の看護師さんが入ってきた。
とても美人で綺麗な看護師さんだとよかったのだが、そのへんのおばちゃんにナース服を着せただけのようなおばちゃんが俺の担当だった。胸のところに付けられた名札には『桃井』と書かれていた。
ほぼ毎日来ている瑠璃ちゃんと母さんは、すっかり常連となっていて、検温の時間帯になるといつも挨拶も込みでやってくる。
でも今日はいつもより早いぞ?
「いつもより早くないですか?」
「えっ? あぁ。うっかりしてたわ。ついお母さんと娘さんが来たから検温の時間だと思っちゃった」
舌をペロッと出して可愛く頭をコツンと叩く桃井さん。てへぺろ☆
大丈夫かこのおばちゃん。特に頭。
しかしこんな人でも看護主任とやらになれるということは、意外と看護師は簡単になれるのか?
「じゃあまた時間になったら来ますね。お母さん達もごゆっくりどうぞ」
そう言って去っていった。
いつも思う。いったいいくつなんだ?
「あの人何歳なのかねぇ?」
「・・・俺も同じこと思ってた」
「きいてみればいいんじゃないですか?」
「瑠璃ちゃん。女性に年齢を聞くのは、ダメなことなんだよ」
「どうしてですか?」
「瑠璃ちゃんも大人になればわかるわよ」
俺と母さんは、頭にクエスチョンマークを浮かべている瑠璃ちゃんの肩に手を置いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
みんんだ大好き桃井さんですよー。
これで満足ですよね?
次回もお楽しみに!




