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入院の仕方

俺が目覚めてから丸1日が経った。

折れていた骨は完全にくっつき、傷ももうわからないぐらいまで回復し、あとは退院して家に帰るだけだった。

・・・ということにはならず、ベッドの上での生活が続いていた。

俺の怪我は全治1ヶ月はかかるらしい。ここまで来たら贅沢は言わない。車に轢かれて生きてただけで良かったよ。

高校のほうは休む形になってしまうが、副担任の山本先生がなんとかしてくれるだろう。

瑠璃ちゃんは昨日までは学校に行ってなかったらしい。俺のことを心配してくれていて、ほとんど母さんと一緒に付きっきりだったんだとか。母さんも瑠璃ちゃんがずっと心配してたから『学校に行きなさい』とは言えなかったらしい。でも今日は無理矢理行かせた。学校を休むのは良くないし、なにより俺が教師だから休ませたくないというのもあった。学校が終わったらまたここに来るらしい。

俺のいる病室は4つのベッドが並ぶ4人部屋なのだが、今は俺の他にうちのじいちゃんよりも歳上なじいさんが1人と40歳ぐらいのおっさんが1人だ。

じいさんのほうはほとんど寝たきりで、今の段階ではまだ起きたのを見たことがない。

おっさんはちょっと前に盲腸の手術をしたらしく、明日退院予定なんだとか。今は最後の検査ってことで病室にはいない。

痛みにも慣れてきて、普通に話すぐらいはできるようになってきた。でも左腕は包帯とギプスで固定されたままだし、足も同じ。右側は動くのだが、右側だけ動いても出来ることなんて限られてるのだ。なにより肋骨が折れてるのが一番痛い。起き上がるときに痛みはあるし、咳き込んだ時に脇腹が痛くなるのが辛い。片腹痛いぜ(骨折)。

そして色々と手術もしたらしい。母さんはグロい話はダメだから、父さんから聞いたんだけど、なんでも折れた肋骨が飛び出てたんだとか。医者曰く『飛び出てて良かったですよ』とのこと。バカにしてるのかと思ったが、内臓側に突き出ていたら命に別状があったかもしれないということだったそうだ。

俺を轢いた無免許の若者達なのだが、そのまま逮捕されたらしく、その親達が代わりに謝りに来たそうだ。若者は3人で全員未成年で19歳とのこと。車は親のもので、時々内緒で乗り回していたらしくて、今回も内緒で乗っていた時に、若者の1人が後ろからイタズラをして、運転手の若者がハンドル操作を誤り、俺を撥ねたとのこと。入院費等も全部出してくれるし、壊れたクーラーボックスも敷物も全部新しいものを買ってくれたらしい。全部親が。

俺はまだ寝てて会ってないんだけど、また近々俺に謝りに来るらしい。その時は若者連中も連れてきてくれるということ。言いたいことを言ってやろうと思う。

でも俺ってなんやかんやで厳しいことは言えないんだよな。きっと『これを良い経験だと思って以後気を付けなさい』的なことしか言えないんだろうな。それでも子どもを育てるのが教師の役目でもあるんだから、自らが犠牲となって若者連中に教えたって思えばいいか。・・・いいのか? まぁいっか。あとで考えよう。

そして俺は今、右手のみで母さんが買ってきてくれた小説を読んでいた。久しぶりにゆっくりした時間となり、兄ちゃんの家にあったシャーロックホームズの短篇集をいくつか持ってきてくれていた。

中学の時の読書感想文の題材で、兄ちゃんから借りて読んだのを覚えていたが、内容までは全然覚えておらず、結構面白い。家の階段の段数なんで覚えてないって。でも観察力ってそういうことなんだろうな。俺もちょっといろんなことを気にしてみよう。

さっき昼の薄味病人食を食べ終わり、小説を読んでいるが、もう2時間もすれば瑠璃ちゃんも来ることだし、退屈はしなさそうだ。

のんびりと小説を読んでるってのもたまにはいいな。

しかしそう思っていたのはこの瞬間だけだった。


「おーっす」

「武田ー」

「お前らなっ・・・」


扉を開けて入ってきたのは、天野と中村だった。

大声で驚こうとしたのだが、いろいろと痛かったので驚けなかった。

こいつら・・・サボってきたな。


「大丈夫?」

「・・・全治1ヶ月だってよ」

「マジか」


何か言ってやろうと思ったのだが、本気で心配している顔をしている天野と中村を見て、何も言えなかった。

いろんな人に心配されてんだな。


「じゃあ1ヶ月は学校来ないってこと?」

「まぁそうなるな」

「そっか・・・」


シュンとする天野。


「瑠璃ちゃんはどうしてんの?」

「母さんが実家で見てくれてる。送り迎えもしてくれるから大丈夫」

「それなら安心だな。あてがないならあたしと恭子で面倒みようかって話してたんだ」

「ありがとな。気持ちだけで充分だ」


中村は天野と目を合わせてホッとしたように頷いた。


「お前ら、サボってきたのか?」

「サボってないし。ちゃんと早退してきたもん」

「同じく」

「それをサボるっていうんだよ」

「人がお見舞いに来てあげたっていうのにその言い方は酷くない?」

「でもこうして来てくれたのは嬉しいよ。ありがとな」

「・・・プッ。クックック」


中村が天野の顔を見て必死に笑いを堪えている。

天野は俺のほうを見たまま動かない。


「恭子。恭子ー」

「・・・ハッ! 香恵。私ダメだ。武田のこと好きすぎる・・・」


そういう話は本人のいないところでして欲しいものだ。


「武田?」

「・・・なんだ?」

「抱きついてもいいですか?」

「・・・入院期間が延びるからダメだ」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


昨日『ランキング上位の方々の感想欄って荒れてるのか?』と思って見てました。

意外と皆さん真面目に返事をしていてビックリしました。

そして自分がふざけすぎているのがよくわかりました。

これからもこの姿勢を貫いていこうと思いますw


次回もお楽しみに!

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