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目覚め方

「あれ? 俺・・・ってかここどこだ?」


目の前には見慣れたはずの天井が広がっていた。

そうだ。ここは俺の部屋じゃん。何言ってるんだか。ついに俺もボケたか。ハハ。

そう思って起きようと思ったのだが、身体が全然動かなかった。


「嘘だろ? まさか・・・金縛りかよ・・・」


生まれて初めて金縛りにあった。全く動けないって怖いもんだな。

視界の端にカーテンが見えた。いつもならうっすらと光を通しているはずのカーテンも、今は光を通してはいなかった。

ってことは、まだ深夜なのか。

身体も動かないことだし、もう少し寝るかな。まだ寝てたって誰にも文句は言われないはずだ。

そう思って寝ようとした。


『・・・さん』

「ん?」


なんか今声が聞こえた気がした。

金縛りだけじゃなくて、ついには幻聴もかよ。やめて欲しいよ・・・


『まさ・・・ん』


なんか声がドンドン近づいてる気がする。

ちょっと怖いんだけど。

俺は目を固く閉じて寝ることにだけ集中することにした。

怖くない怖くない怖くない・・・


『まさちかさんっ!』



俺は目を開いた。白が広がっていた。よく見ると、白い天井に白いカーテンレールがしかれているのが分かった。

どこだここ?


「正親?」


母さんの声が聞こえたので、そちらのほうを向こうとしたのだが、首に激痛が走り、全く動かなかったので目だけでそちらを見た。からだの他のところもところどころ痛い。特に左側が全体的に痛い。


「正親っ? 大丈夫? あなた! 目覚ましたわよ!」

「本当か!」


ドカドカと音が聞こえて、父さんの声が近くで聞こえた。


「正親? 大丈夫か? 生きてるか?」

「か」


『勝手に殺すな』と言おうとして、上手く声が出せなくて驚いた。

なんか脇腹の辺りも痛くて、大きく息が出来なかったのだ。


「か?」

「勝手、に、殺す、な」


小さい声で、少しずつではあるが伝えたいことを伝えた。

ってか俺、なんでこんなにボロボロなんだ?

そう思って記憶をさかのぼってみた。

運動会に行ってたんだよな。いろんな競技を見て、帰り道でも瑠璃ちゃんが幸せそうで・・・

そうだ。そこで急に何かに突き飛ばされたような・・・

ダメだ。わからん。

ここどこなんだ?

なんで俺ボロボロなんだ?

やけに周りが静かだけど、夜なのか?


「はぁ・・・良かった・・・」


横で母さんが大きなため息をついて、ドサリと座り込んだ。

良かった?


「心配したんだぞ・・・命に別状はないって言われても、お前がなかなか目を覚まさないから・・・父さんも母さんも心配で・・・」


父さんがこんなに涙まじりの声に鳴ってるのは初めて聞いた。

いい大人が何泣いてるんだか。


「なん、泣いて、る、ゲホッゴホッガホッ!」

「喋らなくていいから大人しくしてなさい」


母さんが胸の辺りをさすってくれた。

だがそういうわけにもいかん。


「ここ、どこ?」

「覚えてないの? 車に轢かれて、丸2日寝てたのよ」


は?


「運動会の帰り道で、無免許の若者が運転してた車に轢かれたの。こう・・・左半身が後ろからもっていかれる感じにね。クーラーボックスと敷物を持ってたおかげでちょっとはマシだったみたいだけど、それでもちょっとよ」

「肋骨と左足の脛骨と左腕と左手甲の骨折。首と左足首のねんざ。その他擦り傷切り傷うちみ打撲もろもろだそうだ」


どうりで痛いわけだ。左側なんか動くところがあるほうが少ない。肩ぐらいなら動かせるけど、固定されてるみたいで今は動かない。

轢かれたのか・・・。生まれて初めて轢かれたから全然わからなかった。

右手なんかは少しぐらいは動くけど、ぶつけたのか痛みはあった。

・・・はっ!


「る、りちゃ、んは?」


さっきから瑠璃ちゃんの姿が見えない。もしかして事故に巻き込まれて、違うところで寝てるのか? それともただいないだけか?


「大丈夫よ。ちょっと転んだ拍子に膝を打っただけよ」


そっか。


「よか、った」

「この状況で瑠璃ちゃんのことを心配できるなんてたいしたもんね。すっかり父親らしくなってきたんだじゃないの?」


こんな状況だから気になるんだろ。

話を聞いてれば、俺の怪我なんて時間が経てば治るものばっかりじゃん。もし瑠璃ちゃんの身になにかあったら俺はどうしたらいいんだよ。

・・・まぁそれは母さん達も同じか。

こんなとこで親の想いを知ることになるとは思わなかった。


「お義父さんが連れてきてくれるはずだから、もう来ると思うんだが」


その時バタバタと足音が聞こえて、視界に今心配していた顔が現れた。


「まさちかさんっ!」


瑠璃ちゃんは叫んだ。


「大丈夫? 大丈夫なの?」


ベッドから出ていた右手をギュッと握られた。

痛みはあったが、それ以上にこみ上げてくる何かがあって、痛いとは言えなかった。


「だい、じょぶ」

「よかった・・・よかった・・・うえーん」


何度か『良かった』と口に出したあと、瑠璃ちゃんが声をあげて泣き始めた。

心配させてゴメンね。瑠璃ちゃん。

そんな瑠璃ちゃんを、母さんが抱きしめてあやしていた。


「よしよし。心配だったんだもんね。いっぱい泣きなさい!」

「グスッ。グスッ・・・また死んだらどうしようかと思った・・・グスッ・・・」


・・・また?

俺、轢かれるの初めてだし、瑠璃ちゃんが来てから大きな病気もしてないから、死ぬようなことしてないよな。

どういう意味だ?

ここまで読んでいただきありがとうございます。


活動報告での温かいコメントにはとても感動しました。

ありがとうございます。

まぁツイッターの方ではぶっぱなしたんですが、漢字の『二』がつく大人の病でしたなんて、こんなところでは言えませんよ。

口が裂けてもキーボードが壊れても言えなくなっちゃいました。

いろいろとごめんなさいw


次回もお楽しみに!

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