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運動会の締めくくり方

運動会は最後の各学年で選ばれた代表者が走るリレーで締めくくられた。

赤組と白組の勝敗は、白組がリレーでも勝って圧倒的勝利を収めた。この勝敗なのだが、運動会を盛り上げるのが目的なので、特に景品が出たり罰ゲームがあったりとかそういうのはもちろんない。ただ勝ったという事実だけが残るだけである。

そんな勝ち組の1人の瑠璃ちゃんが、意気揚々と帰ってきた。


「おつかれさま」

「がんばりましたっ」


目の前で小さくガッツポーズをしてるところを見ると、結構テンションが高いようだ。


「ちゃんと見てたよ」

「んふふー」


俺は満面の笑みを浮かべる瑠璃ちゃんの頭を撫でた。

そうかそうか。そんなに嬉しいか。そんなに幸せそうな顔を見せられたらこっちまで嬉しくなってくるわ。

ホント可愛いなぁ。


「友達はもういいの?」

「はい。みんなかぞくといっしょにかえるって言ってました」

「そっか。じゃあ俺たちも帰ろうか」

「はい」


俺は瑠璃ちゃんと手をつないだ。

そして母さんたちに声をかけた。


「おーい。帰るぞー」

「ちょっと待って! あと一口だから!」

「何で帰る? 車か? 車で帰るなら飲酒運転だろ」

「正親。これはどうやったら見れるんじゃ?」


この酔っぱらい達はどうしたらいいものか。父さんは完全にボケてるし、母さんは急いで残った缶ビールを飲み干してる。じいちゃんに至っては、もう録画したのを見ようとしてる。どうしたものか。

なんとかして小学校から連れ出し、それぞれ持ってきた荷物を持って小学校をあとにした。俺は左肩にクーラーボックスと敷物を持っている。俺の右手と手を繋いで歩く瑠璃ちゃんは、ゴミを持っている母さんの代わりに袋に入った重箱を持ってくれている。

疲れてるかな、とも思ったが、終始ニコニコとしていて機嫌が良さそうだった。


「運動会楽しかった?」


俺は前を向いて歩いたまま瑠璃ちゃんに訪ねた。


「はいっ」


声だけでもわかるような返事だった。


「そっか。それは良かった」

「その・・・ありがとうございます」

「ん? なにが?」

「私、がっこうに行けてとても幸せです」


改めてそう言われるとちょっと恥ずかしいな。

チラッと瑠璃ちゃんの顔を見ると、目を細めて遠くを見ていた。


「そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」

「私、もっと幸せになります」


・・・一瞬、ウエディングドレスを着た瑠璃ちゃんが、俺の目の前でペコリとお辞儀する姿が思い浮かんだ。

俺がひるんでいると、瑠璃ちゃんは続けた。


「まさちかさんとやくそくしたから。幸せになるって」


そう言えば会った時にそんな話したな。アレは思い出せば出すほど恥ずかしいな。


「だから私、いっしょうけんめい幸せになります」

「瑠璃ちゃん・・・」


そんな瑠璃ちゃんの決意を聞いて、ちょっとウルっときた。

こんなに俺の『幸せになってほしい』って言葉をしっかりと実行しようとしていたなんて、思いもしなかった。あの時はあまりにも瑠璃ちゃんが『幸せ』って言葉からかけ離れた生活を送りそうだったからそう言ったんだけど、ここまでその言葉を刻みつけていたなんて思いもしなかった。

こんな風に思ってくれるなんて、俺は幸せ者なんだなぁ。


「俺は瑠璃ちゃんと会えて幸せだよ」


俺が瑠璃ちゃんを見てニコッと笑うと、瑠璃ちゃんもニコッと笑い返してくれた。


「正親っ!!」


母さんの声が後ろから聞こえた。





直後、身体の左側に何かが当たり、右側にいた瑠璃ちゃんがものすごい勢いで後ろに下がっていくのが見えた。

何が起こったのかわからず、ただクーラーボックスがぶつかったのか、左側の骨盤と脇腹と手の甲が痛いのと、母さんと父さんが俺の名前を呼ぶ声だけが聞こえた。


俺は意識が途切れた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


むやみにフラグは立てるものではありません。

どうしようかと考えていたんですが、ちょっとだけお付き合いください。

詳細は活動報告をご覧ください。


次回もお楽しみに。

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