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借り物と騎馬のこなし方

午後の競技は5年生の借り物競走から始まった。というわけで、我らが瑠璃ちゃんの出番である。

瑠璃ちゃんの出番が回ってくる前に、『ビデオカメラ』というお題でじいちゃんのビデオカメラが持っていかれたときに、マジギレしてるんだか泣きそうなんだかわからない声で『正親。これが大人の威厳じゃ』とかわけわかんないこと言ってた。

そして瑠璃ちゃんの出番が回ってきた。律儀に手と足を走る前の形にしてスタンバイしている。


『よーいドン!』


そう流れた放送と共にピストルの音が鳴った。その音に合わせて、生徒の席で誰かが撃たれた真似をしたのは言うまでもない。

その音共に走り出した瑠璃ちゃんはまっすぐ走っていき、地面に置かれた紙の一枚を取って裏返した。紙と言ってもA3サイズの厚紙に借りてくるものが書いてあり、見てる側も楽しめるよう配慮されていた。

そしてそこに書かれていたのは『洗剤をもった人』だった。


「おいおい。瑠璃ちゃんのお題って無理じゃね? 誰が運動会に洗剤なんて持ってくるんだよ」


洗剤と言っても色々ある、食器洗い用・洗車用・洗濯用などなど。色々あるのだが、そんなのを運動会という名の宴会会場に持ってくるなんてどうかしてるぜ!

そう思って見ていると、瑠璃ちゃんがこっちに向かって走ってきた。そして近くまで駆け寄ってきたときに、後ろから1人飛び出していた。

うわー。こんなとこに洗剤持ってきている奴なんているのかよ。グッジョブとか言いたいけど、ちょっと尊敬したくないわー。

と思っていたらウチの母さんでした。


「ってなんでぇええええ!?」


思わず叫んでしまった。

いやいやいや。手には確かに除菌も出来ることで有名な食器洗い用洗剤がバトンのように握られている。でもなんで持ってるの?

その時、父さんが口を開いた。


「あいつ・・・なんで持ってるんだ?」


父さんにとっても驚愕の事実だったようだ。

もしかしたらと思ってじいちゃんを見てみたが、デジタルなハンディカムで瑠璃ちゃんの勇姿を収めるのに夢中になっていたから放っておいた。

そしてなんとそのまま瑠璃ちゃんと母さんペアが1着でゴール。見事白組の勝利に貢献したのだった。

ゴールしたあとに、瑠璃ちゃんと母さんがハイタッチをかわし、母さんだけがこっちに戻ってきた。

もちろん問い詰めた。


「なんで洗剤なんて持ってるんだよ」

「ウチの洗剤が無くなりそうでね、来る前に忘れないようにってスーパーで買っておいたのよ。まさかこんなところで使うなんてねぇ。世の中何があるかわからないわねぇ」

「ホント神秘レベルですごいな」

「褒めても何も出ないわよぉ」


褒めて・・・ないよな?


そして僅差ではあるが白組リードのまま迎えたメインイベントの騎馬戦。

瑠璃ちゃんが騎馬の上を務めるということで、どうなるのか期待しながら見ていると、入場後に騎馬を作り、それに跨って乗っている瑠璃ちゃんが見えた。頭には体育帽をかぶっている。ハチマキだとやっぱりひっかかれたりとかで危ないのだろう。

瑠璃ちゃんに聞いた話だと、まず乱戦と呼ばれるバトルロワイヤル方式の戦があって、その残った騎馬で一騎打ちをしていくそうだ。乱戦で大将が負けたら話にならないので、乱戦には大将は出ないそうだ。

そうこうしているうちに準備が終わったらしく、アナウンスと共にピストルが鳴り、乱戦が始まった。

瑠璃ちゃんは頼もしそうな騎馬に導かれるままに初陣を飾っていく。そしてその隣を並走しているもう1騎の騎馬。まさかとは思うが・・・まさかな。

そのまさかだった。

赤い帽子を被った1騎の騎馬に近づいていくと、接近に気づいた騎馬が瑠璃ちゃんのほうへと寄ってくる。これは終わったか?

そう思ったとき、瑠璃ちゃんの乗る騎馬がバックで後退を始めた。

逃げる瑠璃ちゃんの騎馬。それを追う敵の騎馬。

そして10歩ぐらい下がったところでピタリと止まった。これを好機と見たのか、敵の騎馬が襲いかかってきた。

しかしさっきまで並走していた味方の騎馬が突如現れて、その敵の騎馬の帽子をスルリと奪い去っていった。

そう。瑠璃ちゃんは囮として使われたのだ。

瑠璃ちゃんが注意を引きつけて、もう1騎が帽子を取る。

小学校の運動会でまさかの『戦術』だった。

誰がこんなことを・・・と思っていると、その様子を満足そうに腕を組みながら見ている1人の先生が居た。

白い上下のジャージに身を包んだ酒井先生だった。

初めて見た時からただものではないと思っていたが、まさか小学生にガチで戦術を教えるなんて、黒い・・・黒すぎるぞ!

でも協力して帽子を取った瑠璃ちゃんは嬉しそうに仲間の騎馬と喜んで、次の獲物を狩りに向かっていた。

・・・結果オーライなのか?

その戦法で5騎以上の騎馬を策に嵌めた瑠璃機であったが、一騎打ちではあっという間に帽子を取られてしまった。

なお大将同士の対戦は、互いにこんにゃくディフェンスで避け合う形となり、白熱した戦いが繰り広げられた結果、白組の大将が見事勝利を収めた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


『女子の騎馬戦とかあるの?』という質問は受け付けておりません。

ヒントは『フィクション』です。


次回もお楽しみに!

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