直接対決の仕方
午前中は低学年と中学年が中心の競技だった。
4年生の短距離走から始まり、3・1・2・5・6年生と走った。
1・2年生はグラウンドの中心を縦に走る直線コースだったが、3年生以上はトラックを半周するコースで、6年生なんかは見てるこっちもちょっと興奮するほど迫力があった。瑠璃ちゃんが白組なので、白組の生徒を応援していた。
ちなみに5年生の短距離走で瑠璃ちゃんが走ったのだが、まぁ・・・ビリじゃなかった。うん。不幸中の幸いだ。ホントに運動が苦手なんだなと改めて感じた。
そして1年生のお遊戯を挟み、2年生の玉入れやら他にも色々な競技が行われていった。午前の部は、5・6年生を除いた学年の大玉運びで終了となった。
昼休みになり、1・2年生は帰り、その他の学年はそれぞれの保護者の元へと向かい、昼ご飯を食べてから午後の部が開始となる。
「瑠璃ちゃんおつかれさまー!」
「おつかれ!」
「瑠璃ちゃんの勇姿はバッチリカメラに収めたぞ!」
完全にデキあがっている大人3人衆が瑠璃ちゃんを出迎えた。じいちゃんは2人の酔っ払いの雰囲気に当てられて酔ったんだろう。雰囲気酔いってやつな。
短距離走の結果を引きずっていたのか、ちょっとしょんぼりして戻ってきた瑠璃ちゃんだったが、酔っぱらい3人を見て元気が出たらしく、小さく笑って『ありがとうございます』と言ってから俺の隣に座った。
「お腹すいたでしょ?」
「はい」
「ワシが昨日の朝から漬けておいたザンギを食べたいじゃろ?」
「お父さんのはいいのよ。それより私が作ったザンギのほうが美味しいわよー。隠し味に柚子胡椒入ってるんだからねー」
言ったら隠し味じゃなくてただの調味料じゃんよ。
「いいとはなんじゃ。ワシは瑠璃ちゃんに食べてもらいたくてじゃな」
「私だって瑠璃ちゃんのために作ってたのよ」
「分かったからケンカすんなって。まったく父さんも止めろよ」
「HAHAHA! ケンカするほど仲がいいって言うじゃないか!」
ダメだここの大人。みんな頭がおかしくなってる。酒のような何かを飲んだのか?
「食べていいの?」
「あーごめんごめん。そこの酔っぱらい達は放っておいて食べようか」
「はい」
ザンギやら玉子焼きやらを箸でつまんでいく。それらを食べる度に、おいしいおいしいと食べていく瑠璃ちゃんを見て、酔っぱらい達のテンションも落ち着いてきたようで、ニコニコと瑠璃ちゃんが食べる様を見ながら、酒を飲んだりおかずをつまみながら話をしていた。
そしてそれから少しした時だった。
「おっ! いたいた!」
「ヒロト。ちゃんとあいさつしないとダメでしょ」
どこからともなく男の子2人がやってきた。
俺はこの2人組を見て直感した。それはもうひらめきとかそんなチャチなもんじゃなねぇ。それよりももっと恐ろしい勘が働いてしまったんだ。
「あっ、2人ともどうしたの?」
「長谷川の家族を見に来たんだよ」
「ふふ。長谷川さんがよく話してるまさちかさんってどんな人か見に来たんだ」
口は悪いがなぜかトゲがない男の子と、落ち着いた感じの男の子だった。不思議な組み合わせだな。まるで『静』と『動』の典型的な感じがした。
俺は瑠璃ちゃんに声をかけた。
「瑠璃ちゃん、この子たちは?」
「えっと」
「長谷川さんの友だちの神田怜央です。よろしくおねがいします」
「オレは高橋ヒロト。よろしくな!」
丁寧に頭を下げる怜央くんと腰に手を当ててニシシと笑うヒロトくん。ホント正反対な2人だ。
「どうも。俺は武田正親。いつも瑠璃ちゃんと仲良くしてくれてるみたいで、ありがとね」
「ぼくらこそ長谷川さんにはお世話になってます」
「怜央。オレたちが世話してるんだろ」
「ヒロトは友だちの世話をしてるの? にわとり小屋の世話みたいな世話してるの?」
ヒロトくんの『世話』発言に、怜央くんが強い口調で言った。
「そ、そういうことはしてないって。おこんなよ」
「べつにおこってないよ」
怜央くんの凄みにヒロトくんはビビってしまい、思わず後ずさっていた。怜央くんって怒ると怖いタイプなんだろうな。
隣に座る瑠璃ちゃんが俺を見上げて言った。
「怜央くんとヒロトくんは私の友だちです」
「2人とも良い子そうで安心したよ」
俺は瑠璃ちゃんの頭を撫でながら言うと、くすぐったそうに瑠璃ちゃんが笑っていた。
まぁ『友達』としては認めてやろう。それ以上は話は別だからな。
「あれ? 笹木さんは? いっしょじゃないの?」
「あー」
「笹木さんはまだご飯食べてるんじゃない?」
「ふーん」
フフフ。
『ふーん』とか言いつつも、正座している足がムズムズ動いてる。これは『ちょっと見に行ってみたいなー』ってことだろう。
「行っておいでよ」
「いいの?」
「せっかく2人も来たんだし、ブラブラしておいで。あとでその笹木さんっていう子も連れてきてくれると嬉しいけど」
瑠璃ちゃんの友達は全員把握しておきたい。害を与えるような輩がいれば、即刻排除したい。
瑠璃ちゃんは俺のそんなゲスい考えなどどこ吹く風で、パァっと笑顔を作ると、取り皿に乗せていた玉子焼きをパクパクと食べると、立ち上がり、
「いってきますっ」
とちょっと弾んだ声で言った。
俺は、
「いってらっしゃい」
と笑顔で見送った。
なんにせよ、瑠璃ちゃんに友達が出来たのは良いことだ。純粋に楽しんでいる瑠璃ちゃんの邪魔をするつもりはないし、瑠璃ちゃんが選んだ子ならきっとみんな良い子だろう。そう思った。
「あんたもすっかり瑠璃ちゃんの父親ねぇ」
「まだ子どもだと思ってたのにな」
「ワシのおかげじゃな」
感慨深く俺のことを見てくる酔っぱらい3人衆。
「・・・恥ずかしいから酔っててくれませんか?」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
さっくりと対面させました。
昨日家に帰ると、承太郎さんのフィギュアが落ちていて、足首が折れてました。
アシクビヲクジキマシター!
・・・はい。
次回もお楽しみに!




