長期休暇の過ごし方
ゴールデンウィーク。
それはカレンダーでの休日が密集した大型連休のことである。
俺も公務員ということで、その大型連休の対象者であるため、もうすぐで昼になるにも関わらず、いつもよりものんびりと過ごしていた。瑠璃ちゃんは、のんびりした朝に合わせてくれているのかは知らないけど、ずっとテーブルで勉強をしていた。
今年のゴールデンウィークは7日間あるが、今日はその2日目。
昨日は普通の休日のように、瑠璃ちゃんと一緒にスーパーで食料を買ったり、夜ごはんを一緒に作ったりと、すごい普通に過ごした。
そして今日は特に予定がなく、ただのんびりとしていた。
瑠璃ちゃんを見ていると、なんか落ち着く。
邪魔するのもなんだとは思うんだけど、どうでもいいことを話したくなる。
「ねぇ瑠璃ちゃん?」
「はい」
「なんの勉強してるの?」
「こくごのかんじをおぼえてます」
ノートをのぞき込むと、いろんな感じが縦に並んだマスにびっしりと書かれていた。
「勉強楽しい?」
「はい」
「おー。それは嬉しい」
教師として、勉強が楽しいと思っている子に出会えるのはとても嬉しい。そういう子には特別待遇をしてあげたくなるのが教師だ。
「瑠璃ちゃんはゴールデンウィークに予定ないの?」
「はい」
「友達と遊ばないの?」
「怜央くんとヒロトくんはかぞくで旅行に行くって言ってました。笹木さんも旅行に行くって言ってました」
ん? 笹木さんって子も増えてるな。順調に友達増えてるみたいだけど、まさかまた男ではあるまいな・・・
「笹木さん?」
「さいきん友だちになったんです。はじめての女の子の友だちです」
嬉しそうに答える瑠璃ちゃん。俺も嬉しいよ。やっと女の子の友達ができたか。
「そっか。ってかみんな旅行とか行ってるのかー」
そりゃゴールデンウィークだもんな。旅行に行くのもわかる。
瑠璃ちゃんって、アレ欲しいとかコレ欲しいとか無いし、あそこ行きたいとかここ行ってみたいとかっていう、欲望がないからちょっと心配になっちゃうんだよな。
いい機会だし聞いてみるか。
「瑠璃ちゃんってどっか行きたいところとかある?」
「うーん・・・」
さぁ好きなところを言うんだ! ドーンと来い!
金ならたくさんあるんだ。どこへでも連れていってあげるよ!
「おじいさんのところとまさちかさんのおかあさんに会いたいです」
「へ?」
「ダメですか?」
「いや、ダメじゃないけど・・・」
なんでそのチョイス?
「なんかもっと海外とかに行きたいって言うかと思ってたからさ」
「外国はまだよくわからないから、まずは近いところをしってからとおくに行きたいです」
瑠璃ちゃんにも考えがあるってことか。『敵を知るにはまずは味方から』って言葉があるけど、『外を知るならまずは近場から』って感じだ。
「じゃあ今日の夕方にでも行こうか。そのままじいちゃんとご飯でも食べてこよう。母さんのところは明日行こう」
「はいっ」
少し弾んだ声で言う瑠璃ちゃん。そんなに嬉しいか。可愛い子め。
「したっけじいちゃんに連絡してみるかなー」
俺はケータイを手に取り、早速じいちゃんに電話をした。
『もしもし』
「あ、もしもし? じいちゃん? オレオレ」
『新手のオレオレ詐欺の方かの?』
「オレオレ詐欺って全然新手じゃないじゃん」
『ホホホ。久しぶりじゃの。最近連絡もしてこないから心配してたんじゃ』
「悪い悪い。連絡がないのは元気な証拠って言うじゃん」
『それもそうじゃな』
あいかわらず元気そうだ。
「今日の夕方ぐらいに行こうと思ってるんだけど、家に居る?」
『いるもなにも、予定なんてないから安心せい。いつでも家にいるわい』
「そっかそっか。んじゃ今日の夕方にでも行くから、一緒にご飯食べるべ」
『待ってるぞ』
「うん。じゃあまたねー」
電話を切って瑠璃ちゃんを見ると、じっとこちらを見ていた。
「来てもいいってさ」
「よかったです」
「ってことで夕方になったら行こうか」
「はい」
そう言って俺と瑠璃ちゃんは、またのんびりとした時間に戻った。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
昨日までの『動』の内容とはうって変わって、今日のは『静』でした。
たまにはこういうのもないとね。
次回もお楽しみに!




