友だちへの怒り方
ぼくとヒロトはなるべく早いほうがいいと思い、学校が終わってからのかえり道で、長谷川さんに話しかけることにした。
笹木さんはそうじ当番だから、ぼくらのあとを追いかけることはできない。
そしてしばらく長谷川さんのあとをつけてからぼくが話しかけた。
「長谷川さん」
しかし長谷川さんはあいかわらずの無視だった。
するとヒロトが長谷川さんの前に走っていって、両手を広げて、長谷川さんの前に立ちふさがった。
「お前、いいかげんに無視するのやめろ。ムカツク」
「長谷川さん」
それでも長谷川さんは話そうとしない。
下を向いてしまった。
「あんまり無視ばっかりしてると、ぜっこうだからな! あと10秒以内に話さないとぜっこうだからな! 10! 9!」
そう言ってカウントダウンをはじめるヒロト。
やっぱりぜっこうはイヤなのか、長谷川さんはかおを上げてオロオロしはじめた。
そして・・・
「5! 4!」
「ご、ごめんなさい!」
ひさしぶりにきいた長谷川さんのこえだった。
「ぜっこうはイヤだ」
「だろ? だったらなんでオレたちを無視してたのか言え」
「うん・・・」
ぼくもヒロトとならんで、長谷川さんの前にいどうした。
「でも、ここだとダメだからえっと・・・」
「きかれたらマズイのか?」
「たぶん・・・」
「じゃあぼくの家行く?」
「けっこうとおくね? ぎゃく方向だろ」
「あっ、私の家、くる?」
「長谷川んちか! はじめて行くな! 近いのか?」
「・・・そこ」
ゆびさした先には、白いマンションだった。
長谷川さんのあとについてかいだんを上り、ろうかを歩いて、一つのとびらの前で止まる。
ランドセルからカギを取り出すと、とびらのカギをあけた。
「どうぞ」
「おー」
ワクワクしているのか、くつをぬぎながらこえを出しているヒロト。
ぼくもはじめて入る女の子のへやにちょっとドキドキしたのだが・・・
「おぉぉおおおお?」
ヒロトのワクワクしていた『おー』がぎもん系の『おー?』に変わった。
それもそうだ。
なんか女の子らしさはぜんぜんなく、ドラマとかで見る男の一人くらしのような部屋だった。
ちょっと入るへやをまちがえたかと思った。
「どうぞ」
クッションをテーブルの前において、そこにすわるようにと長谷川さんは言った。
ぼくとヒロトはとりあえずすわった。
そして長谷川さんもはんたいがわにすわる。
「えっと、無視してたことなんだけど」
「ちょっと待ってくれ」
さっそくほんだいに入ろうとする長谷川さんをヒロトが止めた。
「なに?」
「ここホントにお前んちか?」
「え? うん」
「なんか女の子らしくないな」
「・・・ごめんなさい」
「コラ! ちょっとはことばをえらびなよ!」
「だってホントのことだろ。もっとこうぬいぐるみとかあってピンクなもんが・・・でも長谷川のへやがそんなかんじだったら変だな」
言ってるとちゅうで、ヒロトは思い直したかのように言った。
たしかに長谷川さんのへやがそんなかんじだったらイヤだ。
「もうへやの話はいいからさ、無視してた理由をきこうよ!」
「おー! そうだったな」
「さっ。長谷川さん」
ちょっと落ちこんでいた長谷川さんだったが、気を取り直して話しはじめた。
「えっと、無視してたのは『怜央くんとヒロトくんと1しゅうかん話さなければ、友だちになってあげる』っていう手紙を笹木さんからもらったの」
やっぱり笹木さんだった。
「だから無視してたの。ごめんなさい」
「なんでそんなの信じるんだよ。ウソに決まってんじゃん」
「えっ? ウソ?」
長谷川さんはポカンとしていた。
ぼくもヒロトも同じことを思っていたようで、ぼくが言いたいことをヒロトが言ってくれた。
「あいつらはお前がいやがってるのを見て、楽しんでんだよ。だからあんなやつらと友だちになるな」
「でも私、友だち少ないから・・・」
「あのな。そんなことしてくるやつと友だちになって、これから先何が楽しいんだよ。このバカ!」
まじめに怒っているヒロトの前で、長谷川さんはシュンとしていた。
「長谷川さん。友だちはそんなことしなくても作れるんだよ。ぼくとヒロトと友だちになったときだって、そんなことしてないでしょ?」
コクりとうなずく長谷川さん。
「だったら無視なんてやめて、ちゃんと笹木さんに言おう」
「・・・ごめんなさい」
「わかればいいんだよ。わかれば」
「ぼくとヒロトは長谷川さんの友だちだからね」
ぼくとヒロトがニコッと笑うと、長谷川さんも安心したのか、微笑んだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
次回で『瑠璃ちゃん無視編』が終わります。
僕の作品は基本ハッピーエンドです。
ドロドロにする予定はないので、すっきり終わらせますよー。
頑張ります。
次回もお楽しみに!




