表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/91

チョコの溶かし方

年も変わり、2月。

北海道では、雪まつりが行われている。

見に行こうかとも思ったけど、今目の前でソワソワしている瑠璃ちゃんからしてみれば、いつも見ている雪が形を変えて見世物になったとしてもそんなに興味ないかな、なんて考えてしまう。まぁ俺も受験生の相手ばかりで、毎日のように帰るのが遅くなってしまっているから、休みの日ぐらいはゆっくりしたいと思っていた。

んで、どうして瑠璃ちゃんがソワソワしているのかと言うと、2月といえば雪まつり以上に重要な全国的なイベントがある。

そう。バレンタインデーである。

俺も小学生の頃、バレンタインデーの前の日なんかはドギマギしながら学校とかに行ってたなぁ。まぁもらえないんだけどね。

瑠璃ちゃんは、怜央くんとヒロトくんにあげるんだろうか? 羨ましいわー。

しかも手作りにするらしく、作るためのシュミレーションをしているのか、俺が『簡単にできる基本のトリュフ』というネットのページを印刷した紙を何回も読み直している。

手作りということもあって、我が家のキッチンにはゴムべらやら泡立て器やオーブンシートなんかが増えた。今後も使うことがあるんだろうか?

このへんは俺が揃えてあげたんだけど、毎月瑠璃ちゃんにお小遣いとしてあげ始めた千円から、チョコを作るための材料費は出していた。自分でお金を出して、自分で作って、ドキドキしながらあげる。まるで恋する乙女じゃないか。

・・・小学4年生で恋とか、まだ早いよね? でも最近の小学生は手が早いっていうし・・・いやいや。瑠璃ちゃんをそんじょそこらのガキンチョなんかと一緒にされたら困るよ。瑠璃ちゃんは大人っぽいし、大人しいし、何より俺が育ててるんだから、そんじょそこらのガキンチョになるはずがない。うん。きっと義理チョコをたくさん作るんだよ。うん。

実はもらえるかどうかって一番ドキドキしてるのは俺かもしれない。

そして俺は確実に瑠璃ちゃんのチョコをもらえるような作戦を一つ考えついたのだ。


「瑠璃ちゃん」

「はい」

「練習してみたら?」

「れんしゅう?」

「うん。チョコ作る練習」

「でもざいりょうがありません」


そう言われると思ったぜ。


「だからもう1セット買っておいたんだ」


俺は昨日の帰りに、瑠璃ちゃんが買ったのと同じチョコと生クリームとココアパウダーを買って、気づかれないように冷蔵庫に入れておいたのだ。

そう。作戦というのは、練習用のチョコをもらうというものだ。

たとえ練習用でもバレンタインのチョコにはかわりあるまい。我ながらなんとも虚しい作戦ではあるが、もらえなくて一人ベッドで涙を流すよりもマシだ。

そんな俺の言葉に、ちょっとだけムッとしたような瑠璃ちゃん。

・・・なんで?


「ありがとうございます。じゃあ今から練習してもいいですか?」

「あっ、もちろん!」


そう言うと立ち上がって、キッチンに立つ瑠璃ちゃん。

最近料理も少しずつ教えているので、包丁の扱いぐらいは安心して見ていていられる。前はカレーも作ったし問題ない。

お菓子は分量とかが超重要らしいが、トリュフならそんなに分量を気にしなくても大丈夫だから、心配するポイントもない。というか本当は練習すら必要ないチョコなんじゃないかとさえ思えてくるほど簡単に作れる。

瑠璃ちゃんはまな板の上でチョコをカタカタと包丁で細かく刻んでいる。

練習ということもあって、板チョコは1枚しか使っていない。生クリームも結構あまりそうだ。

チョコを刻み終わると、生クリームを温めて、それをチョコと混ぜ合わせて少し冷やす。そして軽く混ぜて、適当な大きさにスプーンですくって、オーブンシートを敷いた皿の上に並べて、冷蔵庫で冷やす。

その間にコーティング用のチョコをまた刻み始める。

冷やしたチョコを冷蔵庫から取り出し、手を冷やしながら丸めていく。

コーティング用のチョコを軽く湯せんし、それを丸めたチョコの周りにつけて、最後にココアパウダーをふりかけて完成。

なんやかんやで1時間ぐらいで終わってしまった。

それにしてもシュミレーションの成果なのか、すごい手際で作ってしまった。

瑠璃ちゃんはパティシエとかになれるんじゃないかと思うほどだった。


「あっ!」


とか思っていると、瑠璃ちゃんが自分で作ったトリュフ5個のうち、2個をパクパクと口に入れてしまった。


「なんで食べるのさ!」

「これはれんしゅう用なので、自分であじみをしないとあじがわかりません」

「そうだけどさ、間違ってないけどさ・・・」


まさかこんな結果になろうとは・・・

明らかにシュンとする俺に、瑠璃ちゃんは残り3個のうち、1個は自分で食べて、2個を俺にくれた。


「もうおなかいっぱいなので、まさちかさんにあげます。れんしゅう用なのでおいしくないかもしれません」

「瑠璃ちゃん・・・」


俺はチョコを口に2個とも放り込んで、瑠璃ちゃんに抱きついた。きっと瑠璃ちゃんは驚いていただろう。でもこんなに優しい子に育ってくれて俺は嬉しいよ!

瑠璃ちゃんに抱きついたという衝撃のほうが大きくて、チョコの味はよくわからなかった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


小悪魔瑠璃ちゃん誕生。

前から正親にイジワルする瑠璃ちゃんを書いてみたかったんですよねー。

・・・この子、ホントに小学生か?w


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ