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緊急事態の頼み方

「えー、本日の放課後に職員会議を行いますので、すみませんが遅くまでお付き合いください」


わ、忘れてた・・・

教頭先生が朝の教師の朝礼で、そう告げた。前々から決まっていたことだが、すっかり忘れてた。

ちょっと前までなら、『はぁ・・・もうこんな時間じゃん』とか思いながらとぼとぼと帰っていたが、今では瑠璃ちゃんがいるので、あまり残業をできないのだ。

瑠璃ちゃんなら大丈夫だとは思うが、それでも遅くなるのは避けたいというのが本心だ。1人で家で留守番させるのも避けたい。やっぱりなんやかんやで心配なのだ。

とは言っても、誰に頼めばいいものか・・・

母さんとかに頼んでもいいんだけど、母さんは鍵もってないから家は入れないし、じいちゃんも同じだ。それ以前に瑠璃ちゃんとあまり面識が無い家族が行ったところで、瑠璃ちゃんの警戒心を解かずに、家にすら入れてもらえないだろう。

となるとどうしたらいいものやら・・・


「だからな、中村。お前はどうしていつもサボったりするんだ」

「だってめんどくさいから」

「めんどくさいめんどくさいって、いつもそれじゃないか」

「めんどくさいもんはめんどくさいんだから仕方ないじゃん」

「仕方ないってお前な。親が授業料払ってくれてるんだろ?」

「じゃあもっと面白い授業しろっての」

「・・・すみませんでした」

「わかればいいんだよ。ん? 何見てんだよ」


俺が中村と中村のクラスの担任の伊藤先生が話しているのを見ていると、中村と目があってしまい、ガンを飛ばされてしまった。

慌てて目をそらそうとして思いついた。

・・・そうだ!


「中村!」

「な、なんだよ」

「ちょっとお願いがあるんだけど、天野呼んできてくれないか?」

「はぁ? あたしをパシリに使うとはどういうこった?」

「今度ラーメンおごるからさ」

「乙女にラーメンで手をうつってどうなんだよ」

「じゃ、じゃあ何がいいんだよ」

「うーん・・・」


真剣に考え始める中村。

中村さん? そんなに真剣に考えなくてもいいんだよ? グリーンダヨ?


「よし。じゃああの子のこと教えてよ」

「うっ・・・」

「それじゃないと武田のお願いは聞いてやんない」

「お前・・・悪魔のような女だな」

「小悪魔系って言ってよ。んじゃ呼んでくるねー」

「あっ! おいっ!」

「考えといてくれなー」


楽しそうにヒラヒラと手を振って職員室を出ていく中村。

これは人選を間違えたのかもしれない・・・


そして次の休み時間。


中村が天野を連れて、ニヤニヤと笑みを浮かべてやってきた。

これは完全に人選ミスだった。

直接天野だけに頼んだほうが、まだマシだったかもしれない。

しかしもう戻ることはできない。だって頼んでしまったんだから。


「ちょっと頼みたいことがあるんだけどいいか?」

「はい! 武田の言うことならなんでも聞いちゃうよ!」

「あたしも面白そうだから聞いてあげる」

「・・・中村、さっきのは」

「わーかってるって。ちゃんと覚えておくから安心してよ」

「いや、覚えておくのは俺の方じゃ」

「だからわかってるって」


そう言って俺のことを笑顔で見てくる中村。

これは『ちゃんと覚えておいてね。あたし忘れないからさ』という訳になるのだろう。

女って怖いな。特に中村。


「2人でなに話してるの? もしかして私だけ仲間はずれ的な?」

「大丈夫。今度ちゃんと恭子にも教えてあげるからさ」

「絶対だよ?」

「もちろん。まぁ武田次第だけど」

「Oh・・・」


何回も思うけど、中村怖い。

もうちょっと可愛げがあってもいいんだけど・・・


「それで頼みって何?」

「お手柔らかにお願いします」

「お手柔らかにするから、早く言ってよ」

「今日の放課後、職員会議があるんだ」

「うちの伊藤も言ってたよね。『今日は職員会議があるから、部活は長引かないように』って」

「それで、もちろん俺も職員会議なわけですよ」

「ははーん」


ここまでで中村は理解したようで、大きく頷いていた。

さすが中村。

まだ全然わかっていない天野に向けて続ける。


「それで俺が帰るまで、瑠璃ちゃんの面倒をみてて欲しいんだ。多分、8時すぎると思うんだけど、頼めるか?」


一応話し終えると、中村が天野を見ていたので、俺も天野の反応を伺う。

天野を見ると、とても輝いた笑顔を向けていた。


「もちろん! 武田の頼みなら山越え谷越え天城越えだよ!」

「さすが天野だ。天野なら答えてくれると思ってたよ」


ちょっとだけホッとした俺がいた。


「面倒見てればいいんでしょ?」

「おう。瑠璃ちゃんとそれなりに面識があって、頼みやすいのは天野と中村ぐらいだからな」

「それはありがたき幸せです!」

「じゃあ学校終わったら頼むな」

「はい!」

「んじゃ、武田。鍵ちょうだい」

「あーそうだったな。ほれ。合鍵とか作るなよ」

「ハッ! その手があったか!」

「ねぇよ。やめてくれ」

「武田の信頼を失うようなことは、この天野恭子! 絶対にしません!」


そう言って敬礼をする天野。敬礼は右手だ。左手じゃないぞ。

そして職員室を出ていく直前に、中村が振り返って言った。


「そんじゃ約束、忘れないからね」

「・・・考えとくよ」


不敵な笑みを浮かべて、中村は職員室を出ていった。

俺はため息をついた。完全に人選を間違えた気がする。


「武田先生」

「はい?」


中村のクラスの担任の伊藤先生が声をかけてきた。


「中村との接し方を教えてください」

「・・・は、はぁ」


今日帰れるのだろうか?

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


さてはてどうなることやら。

そして伊藤先生と宏太と前作のぼっちくんを足して3で割って高身長にすると、作者が出来上がりますww


では次回もお楽しみに!

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