表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/91

楽しい外食の仕方

実家でその他もろもろの詳細も話し、こまめに連絡を取ることを約束し、瑠璃ちゃんを育てることの許可を得た。

元々我が家は、結構放任主義なところがあって、『警察のお世話にならなければ何をしてもいいよ』という育児方針なので、今回の瑠璃ちゃんの件も大目に見てくれたのかもしれない。

少し長居をしてしまい、実家をあとにしたときにはすでに日も傾きつつあり、夕方3時を回っていた。

帰りの電車に揺られながら、隣に座っている瑠璃ちゃんに声をかけた。


「今日はありがとね。色々付き合ってくれて」


瑠璃ちゃんは前を向いたまま首を振った。

そんなに苦じゃなかったのかな?


「お礼に、どっか食べに行こうか」


その言葉を聞いた瞬間に、瑠璃ちゃんが俺をバッと見上げた。

ビックリしたー。

どうしたんだ?

俺が不思議そうな顔を向けると、悪いことをしてしまったかのようにうつむいた。


「どうかした?」

「・・・もったいないとおもいました」

「もったいない?」


コクリと頷く瑠璃ちゃん。

節約生活するほどお金に困ってるわけじゃないし、節約生活をしてるなんて言ったこともない。


「別にもったいなくないよ?」

「ひとりでおるすばんしてます」

「あーそういうこと」


納得。激しく納得。

瑠璃ちゃんは自分が外食なんてするのはもったいないってことだったのか。

2人ぐらいなら外食のほうが安くつくなんて語ってもいいけど、瑠璃ちゃんにはちんぷんかんぷんだろう。コスパとかの話とか。


「瑠璃ちゃんのお祝いもしてないし、ここは一緒に食べに行こ?」

「おいわい?」

「瑠璃ちゃんと俺が一緒に住み始めたお祝い。2人の出会いに乾杯ー的な」


瑠璃ちゃんは首を傾げると、不思議そうな顔をした。

相変わらず表情は変わらないけど、雰囲気が『意味わからん』と語っているのがわかる。

今まで瑠璃ちゃんは『喜怒哀楽』のうちの『哀』とほんの少しの『喜』しか見たことがない。怒られるようなことはしないから『怒』は無いほうがいいけど、『楽』はあってほしい。

でも最近はなんとなく雰囲気だけで、瑠璃ちゃんの感情というものがわかりかけてきた気がする。

ほんの少しずつだけど、瑠璃ちゃんも変わってきてるんだと思う。


「だから一緒に食べに行こう」



というわけで、渋々といった感じの瑠璃ちゃんを食事に誘った。

とは言っても、そんな高級なところに入るわけではなく、近くのファミレスだ。


「さぁ好きなの食べていいよー」


こう見えても、今は億万長者なのである。

しかし瑠璃ちゃんは、きっと初めてであろうファミレスのメニューを見たまま戸惑っているようだ。

これはこれで可愛い。

なんかこうやって瑠璃ちゃんを、正面から見る機会って滅多にないんだよな。いつもは隣に座ってテレビとか見ながら食べてるから、この角度での瑠璃ちゃんは珍しい。

改めて見ると、結構可愛い方なんじゃないだろうか。

これでもうちょっと愛嬌があればモテるんだろうけど、これはこれで人形みたいで可愛いと思うんだけどな。

・・・やっぱりそう思うのは親心なのだろうか?

いい加減にしよう。うん。


「瑠璃ちゃんって嫌いな食べ物あるの?」


ちょっとだけ迷ってから首を振った。

やっぱり嫌いな食べ物あるんだ。


「何が嫌いなの?」

「・・・ないです」

「嘘ついたらダメだよー」

「・・・ぴーまん、です」

「ピーマンかー。まだまだおこちゃまだなー」

「でもたべれます。がんばってたべます」

「それはいい心がけだ」


反対側に座っている瑠璃ちゃんの頭を撫でようとすると、怒られると思ったのかビクッとした。

俺は小さく微笑むと、そのまま頭に手を置いて、そっと撫でた。


「俺は瑠璃ちゃんに対して怒らないから。でも悪いことしたらダメだよ?」

「はい」

「さーてと。なに食べるか決めよう」

「なんでもいいです」

「ダメー。今日は瑠璃ちゃんが食べたいものを自分で決めてくださいー」


瑠璃ちゃんは、今日一番の困った顔を見せると、メニュー表とのにらめっこが始まった。

真剣にメニュー表を見てる瑠璃ちゃんが可愛いなんて言えない。


「きめられません」

「じゃあ・・・500円ぐらいのだったらなんでもいいよ」


これで『ライス小』とか『コーンスープ単品』とかを頼む心配は無くなった。多分、このまま行くと、瑠璃ちゃんは決めないだろう。だったら自然とお子様ランチに誘導するのがベストだと考えた。


「じゃあお子様ランチなんかどう?」

「じゃあおこさまらんちでおねがいします」


もう限界だった。困ってる瑠璃ちゃんを見ているのが耐え切れなくなってしまった。手を差し伸べたくなる可愛さだ。

これでもし瑠璃ちゃんに自我が芽生えて、ワガママを言って、『おもちゃ買ってー!』とか言い始めたら、なんでも買っちゃうんだろうなーとか思った。まさしく親バカってやつだな。

でも瑠璃ちゃんが喜ぶならいいかな。フフン。

俺は瑠璃ちゃんとの楽しい食事を楽しむことにした。

そしてこれからの生活を瑠璃ちゃんと楽しんでいくことにした。


「お決まりですかー?」

「お子様ランチとカレーバーグディッシュで」


俺は力強くメニューを店員さんに言った。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


なんか最終回っぽい終わり方になってしまいました。

まだまだ続きますからねー。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ