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実家の帰り方

俺はじいちゃんの家を出て、その足で実家に向かった。

母さんに連絡をして『帰るから』と伝えると、嬉しそうに『待ってるよー』と返事が来た。

実家とは言っても、そこまで遠いわけではない。地下鉄からJRに乗り換えて、そこからさらに30分ぐらいだ。

瑠璃ちゃんにとっては遠出かもしれないが、明日も休みなので、付き合ってもらうことにした。


「ただいまー」

「あらあらおかえりなさ・・・」


家に入ると、母さんが玄関まで来て出迎えてくれた。

そして瑠璃ちゃんを見て不思議そうにしていた。

まぁそうなるわな。


「瑠璃ちゃん。うちの母さん。挨拶してね」

「はじめまして。はせがわるりです」

「あらどうもご丁寧に。正親の母ですー」


そう言って互いにペコリと頭を下げ合う。


「で? この子は?」

「・・・中に入ってから話すよ」


今日は瑠璃ちゃんのことを話しに来たんだ。初めて教育実習で教壇に立ったときと同じくらい緊張してるかも。

じいちゃんが言っておけよと言っていたので実家に来たわけだけど、結局宝くじのことを母さんに話さなくちゃいけないよな。

リビングに行くと父さんもいた。そりゃ土曜日なんだしいてもおかしくないわな。

母さんと同じように不思議そうに瑠璃ちゃんを見て、ペコリと頭を下げた瑠璃ちゃんに対して、慌てて自分も頭を下げるという慌てっぷりを見せてくれた。

L字型に並んでいるソファの1つに瑠璃ちゃんと並んで座ると、母さんと父さんが並んでもう一つのソファに座った。


「正親。もしかしてあんたの子ど」

「先に言っておくけど、結婚報告とか隠し子とかではないからな」


母さんに被せるように釘を差しておいた。


「びっくりしたわー」

「父さんも胃から心臓が出るかと思ったぞ」


どういう状態だよ。


「色々と言わなきゃいけないことがあるんだけど、まず最初に・・・えっと、宝くじが当たったんだ」

「へー。いくら? 10万ぐらい?」

「あー・・・5億ぐらい」

「・・・5億?」

「母さん。5億っていくらだ?」

「そりゃ5億って言ったら5億でしょ」

「5億だよな。うん」


完全に思考が停止してしまったようだ。

このまま瑠璃ちゃんのことも言ってしまおう。今なら逆に言いやすい!


「それで、この子なんだけど、俺がその金で買ったんだ」

「買った?」

「そう。買った」

「人って買えるの?」

「買えるところがあったんだよ。じいちゃんに教えてもらった」

「お父さんに?」

「お義父さんに?」


そう2人が声を揃えて言い、固まった。

ホント似たもの夫婦だな。

その時、階段を降りてくる音が聞こえて、リビングのドアが開いた。


「あれ? 帰ってたのか。おかえり」

「兄ちゃん。ただいまー」


兄ちゃんだった。

同じように瑠璃ちゃんとの挨拶をすませ、兄ちゃんにも説明した。


「宝くじ当てたのか! 俺にも分けろよ!」

「嫌ですー。絶対に分けませんー」

「その子って孤児院かどっかから買ったってことか?」

「まぁ・・・そんな感じ」

「ふーん。世の中何があるかわかんねぇもんな」

「俺も思った」

「んで? その子の紹介に来ただけじゃないんだろ?」


さすが兄ちゃんだ。そこで固まっている両親とは違う。


「実は・・・」


兄ちゃんに瑠璃ちゃんの存在をどうしようか悩んでるという説明をしている途中で、両親も硬直から復活し、話に耳を傾けていた。


「ってことなんだけど」

「簡単なことじゃないの」


話を聞いた母さんが両手を合わせてパンと叩いた。


「お父さんの隠し子にしちゃえばいいのよ」

「母さんっ!?」


母さんの言葉に父さんが驚いた。

さすがじいちゃんの娘だ。思考回路が同じだ。


「じいちゃんも同じこと言ってた。『俺の隠し子にするかな』って」

「お父さんは無理だけど、私たちの隠し子ってするなら大丈夫じゃない?」

「大丈夫か? 無理があるだろ」

「そんなことないわよ。ほら。あの国民的家庭アニメの家族だって、24歳の長女と小学5年生の長男よ? ちょうど同じぐらいじゃない?」


たしかに。言われてみればあれだけ有名なら、俺に妹がいても不思議ではない。

不思議ではないけど・・・


「でも瑠璃ちゃんと俺って、苗字違うんだぞ? そのへんはどうなんだよ」

「だから隠し子なのよ。それなら苗字違っても大丈夫じゃない?」

「・・・誰の子どもになるんだよ」


兄ちゃんが突っ込んだ。そりゃそうだ。突っ込まざるを得ない。


「じゃあ私が違う男と作ったってことにするわ」

「・・・父さんはもう何も言わんぞ。言っても無駄だ」

「ほら。お父さんもこう言ってることだし、これに乗ってみれば?」


何も言わないんじゃなくて、何も言えないんだろうが。

父さんの目が遠くを見ている。ごめんな父さん。


「でも正親はそれでいいのか?」

「どういうこと?」

「一応その子を育てるって責任を負ったわけだろ。だったらもう正親の隠し子にしちゃえばいいだろ」

「でも苗字違うじゃん」

「女を孕ませちゃって、その女が知らないところで産んで、『これはあなたの子どもです』って言われて育てることになったでいいじゃん」

「・・・おぉ!」


ちょっと感心してしまった。

これなら誰も損をせずに・・・いや、俺が損するかもしれないけど、それは俺が我慢すればいいだけだ。だったらこれでもいいかもしれない。

俺が損をするのは全然問題ない。

まぁこの事実が教育委員会とかに行ってしまうと大問題になるけど、そこまで行かないだろうから、これでもいいかもしれない。


「兄ちゃん! さすが兄ちゃん!」

「こ、こんなんでいいのか?」

「これならバッチリだろ! ありがと、兄ちゃん!」


我ながら適当かもしれないが、これならいけると思った。


「せっかく母さんが覚悟を決めたのにー」

「覚悟を決めたのは父さんだろ」


母さんが残念そうにしている横で、父さんがホッとしていた。

とりあえずは追求されたときはこれで誤魔化してしまおうと思う。

さすが持つべきものは兄ちゃんだ。頼りになる。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


どうやら僕にはこれ以上の言い訳は思いつきませんでしたw

ちなみに『裕美=母さん』です。


次回もお楽しみに!

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