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お金の使い方

初めての人も初めてじゃない人もよろしくお願いします。

世の中には、奇跡というものがある。

例えば道を歩いていたらたまたま靴紐がほどけて、それを結び直している間に、頭があった位置をライフルの弾が通過していったりする。

例えば雪でツルツルになっている道で転んでしまって、その時にたまたま目の前にいた女性のスカートをオーバーヘッドでめくってしまったりする。

例えば間違い電話をしてしまった相手が立てこもり犯の携帯で、仲間と勘違いして犯人が電話にでた隙に警察が突入したりする。

奇跡とはさまざまだ。

仕事帰りに運試しと称して、サッカーくじで有名なBIGをなんとなく買って、財布に入れっぱなしだったのをつい最近思い出して、これまた仕事帰りに当たったかどうかを確認してもらうと、なぜか銀行の個室に連れて行かれて、『おめでとうございます』とか言われて1等が当たったと言われ、口座を作るように勧められたのだって、奇跡と言えるだろう。

そう。俺、武田正親(たけだ まさちか)は億万長者になってしまったのだ。

俺はなんの実感もわかないまま、言われるがままに口座を作り、その通帳に書かれた見たこともない金額の桁数に呆然としながら家路へとついた。

正直どうやって帰ったのかもわからない。

ただ誰にも会わなかったのは幸いだった。

そして俺は家で風呂を溜めて、固まったままになっていた頭をゆっくりと溶かすように落ち着かせた。

落ち着けば落ち着くほど頭は混乱していった。

手が水面をバシャバシャと揺らした。その音で、自分の手が経験したこともないぐらい震えているのに気づいた。

風呂から上がっても、温まったはずなのに依然からだの震えが止まらない。

改めて、居間のテーブルに置きっぱなしになっていた通帳を見た。

そこには5億ぐらいの金額の数字が書かれていた。


「うおぉ・・・」


ここで俺は宝くじが当たったのが夢ではないことを再確認したのだった。

とりあえずこのことを誰に話せばいいんだ?

とは言っても話すような友達なんていないし、どうせどいつもこいつもあいつもそいつも『金分けてよー』とか言ってくるに違いない。

だとすれば家族・・・いや、それこそダメだ。家族になんて話したら最後、それこそ優しすぎる黄金色の王子像のように鳥に金を分け与えさせるような生活が待っているに違いない。これは俺の金だ。

でも相談しないとどうにかなってしまいそうだった。


「あ、そうだ」


一つだけ使い道を思いついた。

俺には夢があった。

いつか可愛い女の子を家に住まわせて、エロマンガのようなメイドにして、エロエロなご主人様生活を送るのが夢だった。

我ながらこんなくだらないことにしか脳みそが働かないのかとも考えたが、これはこれで立派な夢だ。

そうと決まれば・・・


「ってそんなに都合の良い女の子がいるわけないだろ・・・何考えてんだ、俺は」


冷静になるとバカみたいだ。

誰か金持ちの友達とかいねーかなー。そしたら女の子の買い方とか・・・


「あっ」


ここで俺はあることに気がついた。


「そういえばじいちゃんが昔は大金持ちだったみたいなこと言ってたなぁ」


じいちゃんだったら何かわかるかもしれない。

いや、別にじいちゃんに女の子の買い方を聞くわけではない。ただ、じいちゃんになら話してもいいかなと思ったのだ。

俺は小さい頃からじいちゃんっ子だった。

何かあるたびに近くのじいちゃんの家に遊びに行っては、一緒に将棋とかを打ってた。

そんなじいちゃんは、今思い返してみるとそれなりにリッチな生活をしていたようにも思える。

豪遊には程遠いが、小さなところで金を使っていたようにも思える。

ちょっと高いポン酢を買ったりとか、ちょっと高い布団を買ったりとか、3年に一回はテレビを買い替えたりとかもしていた。

そう考えると金持ちだったのだろう。

俺は、そんなじいちゃんに連絡をして、明日遊びに行くよと伝えた。


翌日、半年振りにじいちゃんに会ったが、全然変わっていなかった。

縁側でお茶を飲みながら一息ついていたじいちゃんは健康そのもので、にんにく卵黄のCM並みに健康だった。皇潤は飲まなくても平気らしい。

今年で(よわい)80になろうかという立派な年寄りだ。


「おー。正親(まさちか)か。久しぶりじゃな」

「久しぶりって、前に来たの半年前だぞ?」

「年寄りには半年は結構長いんじゃよ。毎日毎日暇で暇で仕方ないわい」

「何が暇だ。じゃあなんか運動とかしたらいいじゃん」

「歩くのだって立派な運動じゃ。今日だってあそこの大きな公園の周りをぐるっと一周して、近くのすぅぱぁで昼飯のぱんを買ってきたんじゃ。これを運動と言えないでなんだと言うか」

「はいはい。元気そうでなによりだよ。あー・・・ちょっと話あるんだけどいい?」

「ん? どうした?」

「できれば中で話したいなー・・・なんて」

「・・・まぁ上がれ」

「さんきゅ。おじゃましまーす」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


さてさて始まりました新連載です。

今までとは全然違う感じで進んでいったりしちゃうと思いますが、そのへんは心広き読者の皆様の寛容な気持ちで乗り切ってください。


では次回もお楽しみに!

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