第5幕 スタートライン
基本メンバーのキャラが未だに定まらない気がする…
俺と和久月が副会長に選ばれてから、早い事に1週間が経った。
学校の噂が広まるのは早いもので、翌日には既に俺達が副会長に選ばれた事を、ほとんどの生徒が知っていた。
けどまぁ、副会長の噂が広まるのは別にいい。別に隠す必要も無いからな。
だけど、何故か根も葉もないデタラメな噂まで広まっていた事に、俺は絶望を感じていた。その所為で、女子はまるで腫れ物でも見るような感じだし、男子も俺を避けるようになっていた。
ホントに……俺が何をしたってんだよ……。
杵島や和久月、宮伽が居たおかげで、独りにならないと言うのが唯一の救いだった。友達って素晴らしい。
「稲葉くん、今日の放課後、生徒会の会議があるんだって一緒に行こ?」
「お、おう……分かった……」
素晴らしいんだけど……やっぱり慣れない。
この1週間で、呼び捨てに出来る程の仲にはなったけど、まだ俺が女性恐怖症と言う事は話していない。信用していない訳じゃないんだけど、話してそれを弱みとして握られると一瞬でも思ってしまう自分が居る。
もちろん、そんな事をするような奴じゃないと思うんだけどな。
会議室に着くと、既に数人の女子生徒が席に着いて談笑をしていた。けど、俺に気付くと、いきなりひそひそと声を小さくした。
ああ……居心地悪いな……。
そう思いながら、前回と同じように端に追いやられている男子席に向かう。男子はもう全員来ていて、もの凄く静かにしていた。
何と言うか……不憫だな……。
そんな事を思いながら座ると、何故か両隣の生徒に睨まれた。
……ここに味方は居ないのか?
「稲葉くん、あなたの席はこっちよ」
直後、会長席に座った会長――小清水先輩が自分の隣の席を指差してそう言ってきた。会長席の両隣には、2つずつ席が置いてあって、おそらくそこが副会長席なんだろう。1つ席を空けて和久月が座っている。
いやいや、両隣が女子って……無理ですよ?
「あのー、俺ここでもいいですか?」
「却下です」
んな即答せんでも……。
このまま拒否し続けてこの前のようになるのは嫌だったから、素直に動く事にした。
さすがに真ん中は嫌だと言うか無理なので、和久月に変わってもらう事にした。
座るのにも一工夫。長机だから動かす訳にもいかないから、椅子を少し引いてから横にずれる。和久月からは斜めに遠ざかる感じだ。
「どうしたの、稲葉くん?」
「いや……何でもない……」
少し呼吸困難になりながらも、それを悟られないように顔を逸らして言う。
気を紛らわせる為にも、俺は机に置かれた資料に意識を集中させる。
まず目に入ったのは、『創花祭』と言う単語。
この4月も始めに祭り事? 学園祭には早過ぎるしな。何だろうこれは?
「時間になりましたので、これより生徒会役員会議を始めます」
資料を見ていると、いきなり会長のそんな声が聞こえた。
顔を上げると、既に全員が揃っていた。
「本日の会議ですが、まず始めに、この度決まった副会長に挨拶をしてもらいます」
会長が立って、そう告げた。
後から知った話だけど、副会長は1年生から4人を選出するらしく、それは立候補で決まるらしい。定員を超えた場合は多数決だ。
しかし、それなら何故立候補もしていない俺と和久月が選ばれたかと言うと、それは(俺にとっては)大変迷惑な会長権限の所為だ。
その権限とは、会長は独断で2人まで自分の好き勝手に決めていいと言う事だ。もちろん選ばなくたっていい訳だが、今年は俺と和久月が選ばれてしまった。
「1年4組の樫木野鈴羅です。よろしくお願いします」
と一番端のポニーテール少女が言った。パチパチと拍手が起こる。
「8組の鳩場舞です。よろしく」
と、あまり愛想の良くないショートカットの女子生徒が言った。
……ってこの人、そう言えば前回男子をバッサリ切り捨てた事言った人じゃん!
「3組の和久月綾音です。よろしくお願いします」
隣の和久月が立ち上がって礼をした。座りながら、「次は稲葉くんだよ、頑張って」と言ってくれて、思わず泣きそうになった。
味方……ここに居ました。
和久月に励まされた俺は、勢い良く――はさすがに無理だけど、それでも前を向いて立つ事は出来た。
その結果――
つ、冷たい……視線が冷たすぎるッ!? 何か女子だけじゃなくて男子からも冷たい、いや、男子からは殺気を含んだ視線を感じる。
くっ……負けるか! そんな視線、この1週間浴び続けてもう慣れたわッ!!
……何か悲しくなってきた。
「さ、3組の稲葉和希です。えっと……な、仲良く力合わせて頑張りましょう!」
……………………………………………………………パチ……パチ。
わぉ……ここまであからさまだと、逆に清々しいな。と言うか、そんな「仕方ない、拍手ぐらいはしてやるか」みたいな拍手はいらないッ!
力尽きて、俺は席に着いた。
「稲葉副会長の言う通り、いがみ合わず、互いに協力していきましょう」
そんな俺をフォローするかのように言ってくれたのは、会長だった。
「それでは本題に入ります。議題は、来月末にある『創花祭』についてです」
会長のその一言で、会議室内の空気が少し変わった事に気付いた。
さっきまでの、重苦しいと言うか不満だらけの息苦しい空気じゃなくて、明るく気持ちが軽くなった感じがした。男子の表情も、少し和らいでる気がする。
『祭り』と言う一言でこう空気が変わるとは。お嬢様と言えど、やっぱり祭り事が好きなのは一般人と変わらないみたいだ。
「男子生徒の為にも説明しますが、この聖稜学園には大きく3つの行事があり、『創花祭』はその内の1つです。基本的には学園祭と変わりはありませんが、『新しい仲間で一致団結する』と言う狙いが主です。つまり、この創花祭の成功は、全校生徒皆が互いに助け合い、協力し合う事です」
当たり前の事のようだけど、今のこの学園ではそれは難しい事に聞こえてくる。去年までなら、それは普通だったろうけどな。
それを感じているのか、さっきまでの持ち上がった明るくなった空気は、再び重苦しい空気になっていた。
……と言うか、そこまで露骨に嫌そうにしなくてもなぁ……。
「稲葉副会長の発言は、これを先んじたものだと思います」
「へ?」
会長……そこでわざわざ俺の名前を出さなくても……。案外天然なのか、あんた。
「創花祭の目的は理解していただけたと思いますが、何か質問のある方はいますか?」
その問い掛けに、円になっている生徒会役員席の女子生徒が手を挙げた。
「全校生徒と言う事は、男子生徒とも協力し合うって事ですか?」
「もちろんです。むしろ、だからこそ、今年の創花祭は力を入れるつもりでいます」
なるほどな。
1週間経った今、1学年のどのクラスも、男女の仲はあまり良いものではないらしい。
だから、協力し合い親睦を深める機会として、時期的にも都合の良い創花祭を利用する訳だ。
けど、あんな質問するぐらいだから、一筋縄じゃいかなそうだな。
まぁ、それを何とかするのが生徒会の仕事なんだろう。兼任でクラス委員なんだし。
「皆さんには、明日のLHRで、クラスの出し物を決めてもらいます。資料の中にある用紙に具体的な内容を書いて、週末までに提出してください」
資料の中を探すと、一番下に提出用の紙を発見した。
こういうのを見ると、何か一気に楽しみになってくるな。準備中の作業は結構好きなんだよな。
「次に決めるのは、創花祭の私達の役割です」
ペラペラと資料を捲って見つけた。
役割はそれ程多くなくて、準備期間から当日を含んだ見回りや、道具類の運搬、会計といった項目が並んでいた。
「何かやりたい役があるなら、挙手してください」
会長がそう言うと、すぐに数人の生徒の手が挙がり、すぐに決定した。
すげー早いな。ちなみに4人会計で即決。残りの6人は見回りに決定した。
「他に居なければ、こちらで割り振りますがよろしいですか?」
会長が部屋の中を見回す。
……今気付いたけど、副会長の俺ら、何一つ仕事してないんだけど、これでいいんだろうか? 終始会長に任せっきりじゃないか。
「それでは、本日の会議はこれまでとします」
結局、資料を捲る以外に何もしないまま、役員会議は終了したのだった。
生徒達が部屋から出て行く中、俺はじっと席から動かなかった。
仕方ないだろ? あんな女子ばっかりの所に突っ込むとか、自殺行為に等しいんだから。
出入り口をぼーっと見ていると、出ようとしていた鳩場さんが、俺を一瞥してから出ていった。
どうやら俺は、鳩場さんや新宮さんと言った気の強いお嬢様には嫌われる運命にあるらしい。
ははっ……別にいいけどね。
「稲葉くん、お疲れ様」
「ああ、和久月もお疲れさん。会長もお疲れ様です」
呆けていたら和久月にそう言われたので、流れで会長にも言った。
幸いにも、みんな俺から遠かったからそんな余裕があった。
「ええ、みんなもお疲れさま」
「稲葉くんだっけ? あたしにはお疲れ様ないの~?」
と言ってきたのは、ポニーテールが腰まである元気そうな少女――えっと……樫木野さんだっけ?
完全に居ないものだと思ってた。いや、忘れてたとかじゃなくて、もう帰ったと思ったんだよ。
「えと……お疲れ様……」
「何か遠慮してるねぇ~。かしこまらないでいいし、あたしの事は鈴羅ちゃんって呼んでいいからね!」
「いや、ほとんど初対面で名前呼びはどうかと……?」
とは言え話しやすくて助かるな。立ち位置と言うかテンション的に。
この人は噂とか気にしてないみたいだし。じゃないと話してこないだろう。フランクな感じな人は割と好きだし。
「そう? でもあたしは呼び捨てで和希と呼ぶからね」
「まぁ、それは別にいいくど」
「「いいの!?」」
「え?」
思わぬ所から驚愕の声が聞こえた。
一応言っておくけど、今この会議室には俺と和久月、それから樫木野さんと会長しか居ない。
「だから和希も遠慮しないであたしの名前呼んでいいよ~?」
「分かった。そこまで言うなら名前で呼ぶよ」
「「えぇっ!?」」
……さっきから何だろう……あの2人……?
「じゃあ、親睦を深めよー!」
「っ!?」
突然、樫木野――いや、鈴羅が飛びかかってきた。
椅子に座っていた俺は、とっさに椅子ごと動いてそれを避けた。
危ねぇ……!? 不意打ちとはまさにこの事だな。
「何で避けるのよ~」
「いきなり突進してきたら誰だって避けるわっ!?」
本音→命の危険を感じたから。
「でもかず――稲葉くんって、いつもあたしの事避けるよね?」
「私も避けられてるわ」
和久月が何か言いかけたけど、それを気にする暇もないぐらい、何故か和久月と会長が不機嫌になっていた。
いっそ説明してやろうか? とか思ったけど、鈴羅は何か危険だ。言った瞬間から飛びかかってきそうだからな。
「別に避けてる訳じゃないから! その……お、俺は、人と一定の距離を保って話したいだけ!」
何とも意味分からん苦しい言い訳だなと、言った自分がそう思った。
「って、時間ヤバいんで先帰ります! お疲れ様でした!」
「あ、逃げた!」
背中に鈴羅の声を感じながら、俺は逃げるように会議室を出た。
* * * * * * * * * *
生徒会役員で、さらに副会長になってしまったから、帰りはさらに遅れる事になった。
「カズにぃ、最近帰り遅い……」
「ご、ごめん……」
このように、妹の小陰にも指摘される始末だ。
「なるべく早く帰ってくるようにはしてるんだけどさ……」
でも、これから創花祭の準備があるらしいから、さらに帰りが遅くなるのか?
いや、でも5月末って言ってたから、まだ大丈夫か。
「とにかく、料理は手を抜かないからな。そこは安心しろ」
「うんっ」
ああ……やっぱり癒やされるな。別にシスコンな訳じゃないからな!
こう、無邪気な笑顔って良いじゃん。
そんな事を思っていると、玄関から「ただいまー」と声がした。
「姉さん、今日は早いな?」
「偶には早く帰って家族団欒したいのよー。ね、小陰?」
「ヒナねぇ、お帰りなさい」
「やっぱり、かげは可愛いわ~」
姉さんが小陰を抱き締めていたその姿は、姉妹と言うよりも親子に見えた。
それを言うと怒られるから言わないけど。
「カズくんも、生徒会で大変よね?」
「そんな事言うなら副会長に推薦すんなよ……」
おかげで高校生活は既にお先真っ暗だ。変な噂も尾ひれが付いて走り回ってるし。
「ほら、飯出来たぞ。2人とも手を洗ってこい」
「「はーい」」
仲良く声を揃えた姉妹が、洗面所へと向かって行った。
俺はそんな2人を見ながら、深く溜息を吐いた。
「ねぇカズくん、副会長はどんな感じ?」
夕飯が終わって片付けをしていると、いきなり姉さんがそう尋ねてきた。
ちなみに、姉さんは学園では綺麗で上品なお姉さんみたいなイメージらしいけど、家ではそんな事は無い。
いや、確かに綺麗なお姉さんではあるけど、缶ビールをかっくらうその姿を見たら、昼と夜とで同一人物とは思いたくなくなるだろう。
「どうも何も、まだそれらしい仕事やってないから何とも言えないよ」
言ったのは本音。今はまだ忙しい訳でもなく、かと言って暇を持て余してる訳じゃないからだ。
と言うか、多分やってる仕事は副会長関係無くて、ただ単に役員の仕事な気がするけど。
「副会長の仕事は創花祭で忙しくなると思うから、頑張ってね?」
本当に……他人事のように言ってくれるよな、姉さんは。
「それより、女の子には慣れそう?」
「!?」
全く予想してなかった言葉に驚いて、危うく食器を落としてしまう所だった。
「何慌ててるの?」
「な、何でもない……」
そう、何でもない。別に慌ててる訳ではない。
「私としても心配なのよ。カズくんの恐怖症は」
「……」
「この前気絶したって聞いて、本当に、心配したのよ……」
1週間前のあの事だろう。
あの時は深く聞いてくる事はなかったけど、やっぱり心配させてしまっていた。
それに、ただでさえそんな事で心配させてるのに、さらに変な噂まであるんだ。姉さんが心配しない筈がない。
「大丈夫だよ、姉さん。慣れるかは分からないけど、ちゃんと友達も居るからさ。生徒会の仕事もちゃんとやる」
片付けが一段落着いて、姉さんに向き直ってそう言った。
「……そう。それなら、私が言う事は何も無いわね」
まだ何か納得がいってなさそうな表情だったけど、微笑んで頷いた。そして、でも、と繋げる。
「何か困った事とかあったら、遠慮なくお姉ちゃんに言ってね?」
「ああ、本当に困ったらな」
姉さんにはあまり気を遣ってほしくなかったし、何よりも、あの聖稜学園で姉さんの力を借りる事は、出来ればしたくなかったからだ。
俺が苦笑しながらそう答えると、まるで俺の答えが分かっていたかのように悪戯な笑みを浮かべて、缶ビールを飲み干していた。
やっぱり、姉さんには適う気がしない。小さく溜息を吐いてから、俺は自分の部屋に引っ込んだ。
* * * * * * * * * *
翌日。役員会議で言われた通り、クラスでの出し物を決める事になっていた。週に一度――木曜日にある1コマがLHRに割り振られている。
「――と言う訳で、来月末にある創花祭の出し物を決めたいと思います。何か案はありますか?」
男子の為に説明していた和久月が、クラスメートにそう問い掛けた。
だけど、まぁ予想はしていたが反応は薄い。
いきなり「男子と女子で力を合わせましょう」と言った所で、戸惑い躊躇うのは分かりきった事だ。……全然いきなりな事じゃないんだけどな。
ちなみに、既に(誤解だが)反感を買っている俺は、何も言わない方がいいと思ったから進んで書記をする事にした。
とは言え、誰が何を言う訳でもなく、互いに相談し合う感じもないこの状況には、和久月も困った様子で俺に視線で訴え掛けてきた。
そんな目で見られても、俺にどうしろってんだよ? そう思いながらも、俺は唯一の男友達である杵島に視線を送る。
視線に気付いた杵島は、「仕方ねぇな」とでも言うように、笑みを浮かべながら後頭部を掻きむしり、そのまま手を上げながら立ち上がった。和久月は少し安心した様子で、杵島の名前を呼んだ。
「これだけ可愛い女の子が居るならさ、やっぱり喫茶店じゃね?」
いや、何がやっぱりなのか全く分からないんだけど……それでも俺以外の男子は頷いていた。
そして杵島のその提案に、女子達は不満そうにざわめきながらも何故か満更ではなかった。
とりあえず、黒板に喫茶店と書き込む。和久月に視線を送ると、やっと案が出た事に安堵の息をもらしていた。
「他に、案はありませんか?」
再度和久月がそう問い掛け、他に案が無いようならこれで決まり。
誰もがそう思った瞬間、手を挙げた人が居た。
その人物とは、
「あ、えと……新宮さん、何か案があるんですか?」
「いえ、ただ私は質問がありますの」
最初の印象が強すぎるからか、和久月は少し遠慮がちに尋ねる。新宮さんはそんな和久月の言葉を軽く流し、発案者の杵島を見る。
「今のあなたの発言ですと、労働するのは私達女子だけ、と言う事になりませんか?」
新宮さんの言葉に、賛成で固まろうとしていた女子達の気持ちが、一気に反対に傾いた気がした。
確かに、そう聞こえてもおかしくはないけど……それはニュアンスと言うか……そういう問題だと思うんだけどなぁ。
接客だって、男子でも出来るし。
だけど、杵島の答えは俺が思っていたものとは違っていた。
「だから良いんじゃないか!」
と言うか、女子だけに労働させると肯定しやがった。
何言ってんだよあいつ……。せっかく一致団結の一歩を踏み出したと思ったのに。
「可愛い女の子達が接客だぞ? 客が来ない訳無いじゃないか! なぁ男子諸君!!」
「そ、そうだな!」
「ああ、テンションは上がるな!」
次々と男子が頷いていく。まぁ俺も気持ちは分からないでもない。近付くのは無理だけどな。
「ん? 和久月、創花祭って一般開放すんのか?」
「えーと……してなかったと思うけど……」
だよな。
騒いでいた男子達が、生気を失ったかのような顔になった。
一般開放だと男客は必ず来る。女性だけの園に男性が入れる訳は無いんだ。
つまり、男性客目当てでの喫茶店は使えない。
「大丈夫よ。今年からは一般開放する事になってるから」
『ヨッシャァァァァ!!』
教室が揺れた。
そう思えてしまう程、姉さんの言葉で男子達が復活の声を上げた。
そ、そんなに嬉しいか……?
「で、でもそうなると、働くのは私達だけになりますのよね?」
珍しく新宮さんが押され気味だった。……男子のあのテンションに引いてる気がするけど。
「大丈夫。オレ達だってちゃんと働くって」
「で、ですが……」
「と言うか、他に案無いならこれに決まりなんだけど?」
「あなたは黙っていてくださる?」
何故か俺には冷たかった。いやまぁ、何故かでも何でもないけどさ……話ぐらいはさせてくれたってよくね?
「い、稲葉くんの言うとおり、他に案が無いなら杵島くんの案を採用します。よろしいですか?」
すかさず和久月がフォローしてくれた。
俺の言葉じゃなく、和久月の言葉だからか、新宮さんは納得が出来なさそうだったけど席に座った。
新宮さんが折れてからはとんとん拍子で進んでいき、結局俺達――1年3組の創花祭の出し物は、『喫茶店』と言う事でまとまったのだった。
~次回予告~
今回、わたしの出番はここだけみたいです……。仕方ないですよね……和久月さんや紗菜さんみたいな個性的な方が沢山居ますから……。
次回はわたしも出番が欲しいですね。
わたしに予告は出来ませんけど、次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。
宮伽柚菜でした。
ご感想などもお待ちしております。