記述 一から十五(イーマ・ゴウシャウ戦記) 断簡
一、
序詞
かの地の頂には、丘があった
その地には、海があった
その大地と空と海には、人があった
いま語るのは、それらの語り部の事。
イーマ・ゴウシャウの事は彼に聞く。
そして、この語りを聞け。
二、
王女がいた、名をテウィオオ・ォウマそれはそれは美しく、父親テウィオオ・ヰトキアでさえその魅力に取りつかれそうになっていた。
母テウィオオ・アセリセは最初は何ごとも無かった。
だが、成長する娘に嫉妬という悪魔が憑りつき。
やがて彼女は(注釈・一説には彼女の母親の叔母という説もある【王国大学オッセオ教授注釈】)娘を町に連れ出した。
娘が齢十と三を過ぎた時、奴隷商人に売り渡した。
呪いの言葉と共に。
二度とこの地を踏まないよう。
これを、後の世に神ォキ・キオッマの呪いと言う。
三、
四つの海と、八個の山と、三つの砂漠の向こうの国に王子がいた。
名をグ・ハフヤ・ギュツフユ。という。
大層その国は豊かで、世のありとあらゆる物、人、事が集まって来ていた。
その王子には兄妹がいた。
兄をグ・ハフヤ・デユル。
妹をグ・ハフデ・ォジヮ。という。(注釈・彼女の名の確実な記述ではここだけであり、以後、文脈によりその存在は確認できるが、不明な点が多い。)
王子は信仰に篤く古代神の為の宮殿を九つ、旧神の為に祠を八つ作った。
兄は戦人であり、国を百以上侵攻した。
王子は神の名のもとに、近隣諸国を統合した。
四、
神ォキ・キオッマは奴隷の娘の呪いを聞き届け二度と彼の国に足を踏み入れない様にした。
神には四人の子供がいた。
愛の神オ・イユリ・オ・ウェイ
善の神オ・イユリ・オ・ツユイ
生の神オ・イユリ・オ・スデイ
死の神オ・イユリ・オ・エウェ
それらの神々が丘の上に宮殿を建て、半神百人、人百人、奴隷百人を人身御供とした。それが人柱の始まりであった。
神は、それを我が許しを得なかったため。
宮殿を揺らし、打ち壊した。
それが、地震の始まりという。
伍、
ここに羊飼いがいた。
海と、青空の間の大地に緑なす盆地があった。
アル山の麓にある。
羊飼いは、テヨ・テユリと言いい母をテヨ・オトアと言い若くして、彼を産んだため、周りの男共は彼女を手に入れようと、躍起になっていた。
息子は羊飼いの傍ら、武に長け、度々村の盗賊を退治しており、自警団の長も兼ねていた。
ある日、羊飼いは海の魚女に話を聞いた、話はこうだった、遠くの国に美しい奴隷が災いをもたらし、もたらすため、千の村を惑わし、千の町を惑わし、万の国を滅ぼし、この世界を滅する。と。
テヨ・テユリは、その言葉こそがこの世界を惑わす言葉だと思い、その者を切った。海の神は怒り、母を拐し海の底に沈めた。
神の名はヘキ・シイ・ネヘと言い海の大半を司っていた。
海の神は拐した母があまりにも美しいため、虜となり彼女を妻とした。
海の神には妻が百人おり、人間の妻を認めなかった、その代わり、もっと最下層に追いやった。
その頃には身ごもっており、やがて、母の名と、父の名を冠した半神テヨ・シイ・ケマが生まれた。
皮肉にも、魚女が言った言葉の半分が叶ってしまっていた。
六、
羊飼いテヨ・テユリは軍を引き連れて、母を取り戻すため、侵攻したが、妻百人の軍勢が空に一万、大地に一万、海に一万広がり、空、大地、海は真っ黒になっていた。
百日戦い、百日勝利し、百日敗北して彼はやがて戦いの神となった。
さらに百日が千回来ても戦いは終わらなかった。
テヨ・テユリは旧神サヒハの力を借り空の五千と大地の五千と海の五千を滅ぼした。
その代わり彼の妻となる、初めての夜を捧げることを約束とした。そして、百日がさらに
千回過ぎた時戦いは終わった。
七、
テウィオオ・ヰトキアは奴隷となった娘テウィオオ・ォウマを探し彷徨っていたが、呪いの為、会うことはままならなかった。
そこで、古代神ソオヱトに、娘と会うことが出来たら、娘の子供を捧げると誓いを立てた。
その時、テウィオオ・アセリセは嫉妬に狂い、全軍を上げ娘を亡き者にしようと出発した。その為この国は乱れ、人心は腐り、国も腐敗した。
(※)後のこの国は主が居なくなり、国は十二に分かれ覇を競う事百年が経ち、その内の一国、ニツの国の民、英雄ニツスメが立ち上がり、この国を統一した。
彼の名のニツは国の名ニツに由来する。
【※注釈:帝国大学農教授の研究によりこの年代記は注釈書『縁武記』『古家陸注釈本』により今後の研究が待たれる】
八、
先の皇帝が即位したときにいう。
ク=メィダニ湖の南に位置する、アル山のまだ向こうに神の半島があった、ここは古代神ソオヱトの国であり、百万の半神と、人が暮らしていた。
テウィオオ・ヰトキアの誓いにより、ォキ・キオッマの呪いを解除した。
この事に父神ォキ・キオッマの名誉を挽回せんがため、愛の神オ・イユリ・オ・ウェイは静かの湾に、善の神オ・イユリ・オ・ツユイはアル山に、生の神オ・イユリ・オ・スデイはココ湾に、死の神オ・イユリ・オ・エウェはク=メィダニ湖に陣取りテウィオオ・ヰトキアを殲滅する為、戦いを挑んだ。
この戦いの最中、信仰心の厚いグ・ハフヤ・デユルを援軍に呼んだ。
神の名のもとに彼は、テウィオオ・ヰトキアを退けた。
ところが、先に呪いを解除しており、其の隙にテウィオオ・ヰトキアは奴隷となった娘テウィオオ・ォウマの間に子をもうけてしまった。
そして、百の国のまだ向こうにある国で暮らしたという。
九、
テウィオオ・アセリセは呪いが解けた事に、その怒りは頂点に達し、やがて旧神サハヒの妻となることを条件に、かの国を滅ぼすことにした。
旧神サハヒは軍神となったテヨ・テユリと共にテウィオオ・ヰトキアとその妻テウィオオ・ォウマを滅する為、戦となった。最初の一日で百あった国の十は滅し、十日で十は滅した。
後の八十は滅することが出来ず、退却した。
テウィオオ・ヰトキアとその妻テウィオオ・ォウマは喜び、雲に届く塔を建てた。
古代神ソオヱトの加護がこの戦の勝利と、その後に塔を十建てた。
その為、旧神サハヒと、軍神テヨ・テユリは神々の笑いものとなり、百の呪詛を唱え、テウィオオ・ヰトキアとその妻テウィオオ・ォウマを末代まで呪った。
その為ォキ・キオッマの呪いは成就したことになる。
これが、古代神と旧神と神の終わりのない戦いの起源である。
十、
やがてテウィオオ・ヰトキアとその妻テウィオオ・ォウマの間に女子が生まれ、名をテウィオオ・ランアヲといい約束通り古代神ソオヱトの妻とした。この時の逸話としてタネニの悲恋が伝わっていて、この地域に根付いている(※一 ランアヲとある若者との悲恋が伝わる地名に残る)
この時、テウィオオ・アセリセは一旦故郷に帰り、すでに英雄ニツスメが統治しているニツの国となっている国にその居場所を求めた。
年老いたと言えども、テウィオオ・アセリセの美貌は衰えることは無く、ほどなくして英雄ニツスメを篭絡し元の女王の座に返り咲いた。そこで神ォキ・キオッマとその一族、愛の神オ・イユリ・オ・ウェイ、善の神オ・イユリ・オ・ツユイ、生の神オ・イユリ・オ・スデイ、死の神オ・イユリ・オ・エウェ、そして軍神となったグ・ハフヤ一族にテウィオオ・ヰトキアとその一族、古代神ソオヱトの殲滅を嘆願した。成就した時には自分の国を、民も含め譲渡するとの誓いを立てた。
生贄として、ヰトキアの娘ランアヲも捧げる呪いを付け加えた。(※二 この時の呪いの触媒が古代神、または旧神のいずれかにより呪いの解釈が変わってくるが、後の研究に委ねる。)
十一、
その頃(※一 西南歴の一〇と三十の月年から十一と三十三の月年の頃と思われる)シセラ族と北方の異民族セコマ族、そして半神ウラオセの民による、異教徒の粛清が始まる。
その事は旧神サハヒの知る事となり、怒りに狂った旧神はシセラ族の半数と、北方の異民族セコマ族の半数と半神ウラオセの民の半数の頭を潰し、そしてそれを、大地にばらまきやがて、その大地は血潮で真っ赤になり、以来怒り狂った時期(※二 ホヰエセの季節と思われる)になると、この地域では、大地が真赤になった。
十二、
生き残ったシセラ族と北方の異民族セコマ族は、旧神サハヒの事を子々孫々まで呪うことを、一族の掟とし、以来この時まで(※三 書記官テスによる『始館の覚書』の記述に寄れば西南歴の二百二十と五十の月年の頃と思われる)呪いが解かれずにいる。一方半神ウラオセの民は幾度か戦いを挑み、軍神テヨ・テユリによる討伐により、百と五十の月年を経てもその戦いは終わらなかった。
十三、
十の皇帝の後の皇帝が即位したときに言う。(※一 北歴の二十四の月年から後北歴の二月年の頃と思われる)
古代神ソオヱトと神ォキ・キオッマが全面的な争いとなり、この戦いによりココ湾から静かの湾そして内陸部にある、アル山脈が消し飛び、そのかたちは未来永劫分からないままとなり、千の民族と百の国と一万の山と千の海が無くなった。
海の神ヘキ・シイ・ネヘはこの戦いの元凶は軍神テヨ・テユリと旧神サヒハが半神テヨ・シイ・ケマを討たんがためと、疑心暗鬼に駆られたため、これを討たんとして戦いを挑んだ。母テヨ・オトアの祈りも虚しく、この戦いは、古代神ソオヱトと神ォキ・キオッマの戦いと同様に世界を二分する戦いとなった。
十四、
二十の月年が皇帝とその暦の三十を過ぎた頃(近年の研究では西南歴五十の三十月年頃とされている。【王立アカデミー、皓皓教授による】)までには世界の人口の約半分以上がその戦禍の為に消し去った。
(この頃の記述は二、三行の記述しか残っておらず、記述する者。書記官等の存在の絶対数が不足していたのではと考察される)
十五、
叙事詩
太陽は、消え、月はくだかれ、海は血となり、河は、人の怨嗟となり、山は骸となり、湖は涙となり、平原は骨となった。
元の国は無くなり、元の空は消し去り、元の海は乾き、元の大地は地獄となった。
神、旧神、古代神、人、族、民に何の意味があろうか。
拙作に本当にお付き合い下さり誠にありがとうございます。
申しわけないです、もう一度考え直しました所。空想戦記ですので 歴史⇒ハイファンタジーに変更いたしました。




