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キらめき!  作者: 桜田 未夢
Story of Leise
1/1

お客さまです

不定期更新です。

誤字・脱字などがありましたら、こっそり教えてくださると有難いです。

 ここは、穏やかな気候に建てられた、少し大きめな孤児院。

草花が広がる草原では、幼い子どもたちが追いかけっこをして遊んでいる。

建物の近くでは、真っ白なシーツやら、孤児院の住人達の衣服やらが、穏やかな風で揺れている。

青年や少女が、女性の手伝いをしながら、洗濯物を干しているのが見える。


 建物の中にも、子ども以外の人達が見える。

昼食だろうか、大きな寸胴で何かを煮込んでいる人もいる。

リビングのようなところでは、ソファーで寝転がっている人や、小さい子供に絵本を読み聞かせている人もいる。


 ただただ平穏なこの孤児院___“希光孤児院”。

そんな所にある日、一人の訪問者が訪れる___




「あ、あの………」


___建物の玄関前。

小さな子ども達の様子を見ていた男に、深くフードを被った人物が声をかけた。

「………珍しいお客さまですね。どうかされましたか?」

フードの人に答えた男は、優しい目を向けて尋ねる。

「あ、えっと………旅をしている、者なのですが………

 この近くに、宿はありませんか?今日の宿を探しておりまして………」

「宿、ですか………残念ながら、近くにはありませんね。

 一番近くて、徒歩であれば半日か一日か………」

「そ、そうですか。困ったな………」

フードの人は指で頬をポリポリ掻きながら、「うーん」と悩み始める。


「………旅人さん」

「あ、は、はいっ」

男に声をかけれれて、フードの人はハッとした様子で、そちらに再度顔を向ける。

「もし、“院長”が許可を出せばですが………此処に泊まって行きますか?」

「えっ!?い、いいんですか………!?」

「空いてる部屋はありますし、偶にこういう事もあるので許可は降りると思いますし」

フードの人が嬉しそうな声で聞き返すと、男はクスクスと笑った。

「こちらへどうぞ。元気な子が多いので、騒がしいかも知れませんが」

「い、いえっ。お邪魔します………!」

男に連れられて、フードの人は建物の中へと入って行った。




 建物の中にも、子ども達が元気に遊んでいた。

「あー!お兄ちゃんしらないひとつれてきてるー!!」

「だあれー?」

フードの人を案内している男は、この中では面倒見が良いのか、小さい子ども達からすぐに話しかけられる。

「お客さまだよ。“院長”はどこにいるかな?」

「りびんぐ〜!!」

「そっか、ありがとう」

男が子どもの頭を撫でてあげると、撫でられた子どもは嬉しそうに笑った。

「いまは“どっち”がいいの〜?」

別の子どもが、男を見上げながら訊ねる。

「そうだね………“優太”でいいよ」

「わかった〜」

「「「ゆーたにぃばいば〜い!!」」」

「はーい、あとでねー」

子ども達が手を振って、どこかへと走り出す。

“優太”と呼ばれた男は、微笑みながら手を振り返して、子ども達を見送った。


「………ユータ?」

「ああ、僕の名前です。“優しい”に、太郎の“太”で優太と言うんです」

フードの人がフードの下で首を傾げるのを、横目で見て答える男…優太。


「珍しい、名前ですね?」


「………そうですかね?」

フードの人の不思議そうに聞き返す声に、優太は小さく反応をする。

「え、ええ………

 優しい、は分かりますが、“タロウ”?は………。

 え………わ、私は、知らぬ間に、遠い異国に来て………?」

フードの人は歩き続けながらも、少し首を傾げながら考え事を始めている。

「………まあ、ここは少し珍しい所ではありますから、聞いた事がない名前とかもありますよ。

 それより、リビングに着きましたよ」

優太に言われて、フードの人は俯き気味だった顔を上げた。

「どうぞ、お入りください」

「し、失礼します………」




 優太がドアを開けた先。

広めのリビングの中央辺り、ローテーブルの傍にあるソファーには、数人が座っていた。

「“院長”、お客さまです」

優太がそう言うと、ソファーの中央に座っていた男が顔を上げた。


「………随分と珍しそうだな。お前の客か?」

「旅人さんだそうで。近くに宿がないので、僕から打診したんです。

 『泊まっていかないか』、と」

「成程。とりあえず、座ってもらおうか」

「はい。どうぞ、向かいへ」

「は、はい。失礼します」

優太に導かれて、フードの人は“院長”と呼ばれた男の向かいのソファーに座る。


 “院長”と呼ばれた男は、髭を生やした隈の濃い男だった。

肘を膝上に置き、猫背のままフードの人を見ている。

 その隣に座っているのは、優太のように優しそうな雰囲気を出している男だった。

微笑んでいるからか、フードの人への警戒心はないように見える。


「泊まる場所を探しているのかい?旅人さん」

“院長”はフードの人を見つめて、そう訊ねる。

「は、はい。

 昨日までは、人に会えていたので宿をとれたりしていたのですが………

 今日は無理そうで、野宿をしようか迷っていたところで………」

「野宿は確かに出来そうな服装ではあるな」

「あっ、そうだフード…!」

“院長”に言われて、フードの人は慌てて、深く被っていたフードを脱いだ。



「___すみません………客側なのに、フードを取らず………」



___フードの中から現れたのは、端正な顔の男だった。

金色の髪はサラサラとしており、エメラルドグリーンの瞳は光が当たると光って見える。

「………よく野党に攫われたりしなかったな、客人」

“院長“は少し目を見開きながら、フードの人にそう言う。

「い、一応鍛えてはいるので………」

「うん、そう言う事ではないんだがな」

“院長”にそう言われて、フードの人は首を傾げる。

「まあ、伝わらないならそれでいいか。

 それで、客人の名前は?」

そう聞かれると、フードの人は姿勢を正した。




「えっと………

 私は、“ライゼ・グリュック”と申します。しがない旅人でございます」




「わあ、美人さんだ〜」

自己紹介をしてくれたフードの人___ライゼの顔を見て、“院長”の隣に座っている男が目を輝かせてそう言う。

「び、美人だなんてそんな………」

「美人さんですよ〜?

 僕は“流亜(るあ)”って言います、よろしくね〜」

「よ、よろしくお願いします………?」

「おい、俺まだ許可してないんだが?」

勝手に自己紹介を始める隣の男___流亜に、“院長”はため息を吐く。


「え〜?でも“院長”が中に普通に入れてる時点で、悪い人ではないんでしょう?

 だったら別に自己紹介してもいいかなって」

流亜はニコッと“院長”に笑いかけてから、再度ライゼの方に顔を向ける。

「ライゼさん?は何日泊まるの?1週間?」

「いっ………!?い、いえっ、そんなに泊まる訳には………!!」

「えー?いいんじゃないの?そんなに急いでる旅なの?」

「そ、そう言う訳ではありませんが………」


「こーら、流亜?ライゼさんが困ってるからストップだよ」

“院長”が座っているソファーの、後ろに立っていた優太が、流亜を優しく制止する。

「あら?はしゃぎすぎました………?ごめんなさい」

「い、いえ、大丈夫ですっ」

流亜がしょんぼりと眉を下げると、ライゼは慌てて首を横に振った。

ライゼが嫌がっていないのが分かると、流亜はまた先程までの笑顔に戻った。


「………で、急いでるのか?旅人さん」

“院長”は流亜からライゼに目線を戻して、彼の目を見て訊ねる。

「急いで………急いではー………いない、ですかね………?」

「あれ?目的とかはないの?急いでないなら、次の目的地とか決まるまで泊まって行ったらー?」

「え!?そ、それは、ご迷惑では………?」

「空いてる部屋もあるし、いいんじゃないかな〜?ね?“院長”」

流亜はニコッと笑いながら、隣で話を聞いている“院長”に訊ねる。

「お前はまた勝手に………」

「怪しい人なら“院長”、ここまでのんびりしてないでしょう?」

流亜がそう訊ねると、“院長”は何も言わずに、一度だけ息を吐いた。


「(………ず、ずっと同じ態度の気がするんですが………!?)」

対面の様子を見ていたライゼは、笑顔を保ったまま、内心焦っていた。

 流亜のマイペースな様子にも驚いてはいた。

そして、“院長”と呼ばれている男はずっと無表情か、眉を少し顰めて流亜を見るか、しかなかったからだ。

 彼ら3人にとっては日常の事なのか、普通に会話をしている。


「………まあ、特に急いでいる訳ではないなら………

 気が済むまでウチにいればいいんじゃないか?少々騒がしいがな」

「へっ?」

“院長”の提案に、ライゼは目を見開く。

「この孤児院は食料も豊富だし、調べることがあるなら小さいが書庫とかがある。

 衣食住の提供はするし、対価は家事手伝いでもしてくれればいい」

「そ………そんな、好待遇を受けても良いんですか………?」

「ここ、大人が子ども達よりちょっと少ないから、人手が足りない事が多くて………。

 だから動ける人が来ると、力を貸して欲しくなるんです」

優太がそう言うと、流亜はウンウンと頷き、“院長”はただ黙っている。

「どうですか?ライゼさん。

 貴方がよろしければ、しばらくここで暮らしてみては?」

優太に訊かれて、ライゼは「うーん」と考える。

「(好意はとても有難いし、私にとって良い事ではあるけれど………

  好条件しかないから怖くはある………!でも、急いでる訳では………)」


ライゼが悩んでいる間に、優太はその場から離れ、“院長”はそのままライゼの様子を見ている。

流亜はニコニコとしたまま、ライゼに訊ねる。

「そこまで悩まなくても、そのまま悪い事させたりしないよ?」

「え」

ライゼは心を読まれたのかと思い、流亜の方を見る。

「旅人さん的には好条件だろうねぇ、今の提案。

 僕も警戒しちゃうけれど………。

 でも、見た感じでは、ライゼさんはその身一つで旅してる感じでしょう?

 金品を盗むにしても何もないし、どこかへ“飛ばそう”にも大変だし」

「と、飛ばす………?」

「こっちの話〜。とにかく、ここは本当に平凡な孤児院だよ?」

流亜はニコニコと笑ったまま、ライゼがどう答えるのかを待つ。

ライゼは何か事実を隠された事を感じ取ったが、向かいのソファーに座る二人から敵意を感じない為、とりあえずはそこに触れないことにした。

「えと………院長さん、が………よろしければ」

「だってぇ。どうですかー?“院長”?」

流亜はライゼから、“院長”に目線を向けて、彼に訊ねる。




「………ようこそ、“希光孤児院”へ。院長の“希光凍和(きこう とうわ)”だ」




 そう言って“院長”___凍和は、片手をライゼに差し出した。


「!よ、よろしくお願いしますっ………!」

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

次の話まで、お待ちいただけたら幸いです。

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