プロローグ
初めまして、宮村と申します。
よくある○○レンジャー、みたいな物の悪役を主人公にした日常系を執筆したくなり書き始めました。
どなたかに刺さる作品になればなと思います。
今後とも、何卒よろしくお願いします!
【元悪役幹部・一般人を目指します。】
プロローグ
「おい、見てみろ」
「なんですか、バルガさん」
「あの木の根元、俺には子供が寝ているように見えるんだがお前さんにはどう見える?」
バルガ、と呼ばれた男は少し先で見える丘の上に生えた木の根元を指差し話す。
「見間違いか?こんな場所で」
「いえ、私にもそう見えます」
そう答えたのはバルガの隣にいた青年。
「やっぱりか、行ってみるしかねぇなぁ」
バルガは頭をぽりぽりとかきながら青年を促し、木の根元を目指して歩き出す。
近づくにつれて、彼らの疑問は確信へと変わっていった。
「なんでこんなところで、こんな幼い少年が……」
「さぁな。でもまぁ見つけちまった以上、保護する他ないだろうなぁ。見捨てても後味悪いだろ」
♢ ♢ ♢
「フフハハハハハ!よくもまぁ俺に再び挑んで来れたものだな、レンジャー諸君」
「当然だ、ゼパル!俺は、俺たちは今度こそ君を倒す!!」
「ならば、やってみるが良い。来い!」
今日もまた俺は、レンジャーを見下ろしながらそう叫ぶ。
「行くよ、みんな!」
レンジャー側の赤色が叫び、次々と続いていく。
「愛と」
「勇気と」
「正義で」
「悪を挫く」
「俺たち七人」
「全員合わせて!」
「「「「「「レインジャー」」」」」」」
だっさい。
「……」
ツッコむ気すら起きない程である。
悪の組織、幹部。
『ゼパル』と言う名で呼ばれる俺は、この組織内での戦力において第二位とほぼ頂点に君臨していた。
その実力を行使し、毎度挑んでくるレンジャーを俺は返り討ちにしているのだが。
「くっ、」
「くそっ」
「……」
「なぜだ、何故こんなにも」
「力の差がありすぎる……」
「無理だ、」
「また今回も勝てないのか……」
そう漏らす、レインジャー七名。
「ハハハハハ!やはりこの程度か!!」
俺の発言に悔しさを抱いたのか、俯き拳を強く握る。
だがしかし、俺は毎度行われるこの流れに正直飽き飽きしていた。
この光景を繰り返す度、こう思わずにはいられない。
「はぁ。もう、これ俺いなくてもこっち側勝てるんじゃ……」
「え」
「何だと……?」
「貴様」
「我々を愚弄するか!」
何人かのレインジャーの耳に入ったのか、彼らは顔を上げ俺を睨みつけてくる。
そして突然背後から声がした。
「ゼパル、お前そんなこと言ってやるな。可哀想だとは思わないのか」
「いやいや、師匠も負けずにオーバーキルしてますって。自覚無いんですか?」
背後から声をかけてきたこの白髪で筋肉質。
それでいていつも笑顔が絶えないこのおじさんは、俺の師匠。
今も目線を俺と合わせようとはせず、自覚もあるのか相変わらずふざけているのだろう。
いつも通りの師匠だ。
「いやー、しっかしゼパル。本当に強くなったよなぁ、昔はあんなにもちっこいガキンチョだったって言うのになぁ」
「なんで今昔話始めているんですか、俺も言えないですけど戦闘中ですよ?」
そんなことを言いながら下を見ればレインジャーたちが怒っていた。
当然だ、仕方ない。しかし、レインジャー達からどでかいバズーカーが俺たちに向けられ今にも放たれそうなのはよろしくない。
「くらえ、これが!」
「「「「俺たちの」」」」
「「私たちの」」
「「「「「「力だー!!!」」」」」」
叫びながら白い光が放たれる。
避けるのも手だが、すぐ後ろには師匠がいる。
「面倒臭いな」
「ゼパル」
そこで師匠から声をかけられる。
「好きにやれ」
「!」
その言葉で俺の取る行動は決まった。
「「「「「「「はぁあああああああ!!!!!!!」」」」」」」
レインジャー七人が全員で力を合わせて全力の一撃を放ってくる。
それを俺は、避けた。
「うわああああああああああああ」
そんな叫びがすぐ後ろで聞こえた。
さて、俺は下に降りよう。
「貴様、卑怯だぞ!」
「あれを避けるのか」
などの声を溢すレインジャーたちを目の前にする。
レインジャー諸君。「うわぁ……」と目で訴えてるのはやめていただきたい。許可は得ている。
その彼らも疲弊して尚体制を立て直している、そこは流石と言うべきかもしれないが。
「お前たちは、本当に弱いな」
その言葉に苛立ちを隠せなかったのは、俺の正面にいたレインレッドだった。
「何を……、何を言うんだ。僕たちは皆必死で頑張ってきたんだ。君に何がわかるんだ、ゼパル!」
まるで自分たちの存在を肯定して欲しそうな、そう声を荒げるレインレッド。
「お前たちが俺に傷の一つもつけたことがないようにも思えるが、気のせいか?」
「それは、」
言葉を詰まらせるレインレッド。当然肯定などしない。
それをフォローしようと前に出るレインブルーへ、制止するように手で促した。
「今日はここまでにしよう、次また会える機会を楽しみにしている。」
「なっ、待て!」
言葉を最後まで聞くことなく、俺は要塞を目指し飛翔した。
「楽しみにしている、か……」
飛び始めて少し経過した頃、突如師匠が真顔で隣に現れた。
「ゼパル」
「師匠、おかえりなさい」
「おかえりなさい、じゃないだろ!あれ、めっっちゃ痛かったんだぞ!」
俺の横で叫び飛びながら師匠はお尻を見せようとしてくるので、それを強引に止める。
「なんでお尻なんですか!当たるとしても胴体とかだったでしょ」
「いやぁ、お尻で喰らってみたら絵面的に面白いかなと思って……」
言われたそれを想像して、言葉に詰まってしまい黙る。
師匠のお尻から白いビームが、レインジャーに向けられて出ているような絵面みたいに想像したら少し面白く感じてしまい悔しくなった。屈辱的である。
「なーに人がお尻で攻撃を受けるのを想像してるんだね、ゼパルくん」
「してないです」
「はぁ、昔はあんなに可愛かったのに」
遠い目をしては俺に何かを訴えるように、変な視線を送ってくる。
当然俺はそれを無視して、
「早く帰りましょ」
「やれやれ、連れない弟子だねぇ」
ふざけ合いながらも、悪の組織のアジトである飛行要塞へと帰っていくのだった。
基地へと帰還した俺たちは、どこかの誰かさんたちが弱いせいのもあり。
いつも通り、あまりにも短い一部始終を部下へと伝える。
当然師匠のお尻の件を除き、報告書を提出するように頼んで各々は自室へと戻った。
俺は自室に入り、疲れ故に早々ベッドへと倒れ込む。
「体力的じゃないけど、メンタル的に疲れるんだよな」
なんて一人で呟きながら普段から使っている机が視界に入る。
毎度感じていた、この組織においての自分の必要性。
このままで良いのか、いつも問うていたが。結局答えを出せなかった。
しかし、やはりこの必要性の無さを考えれば俺がこれまで感じていたもう一つの欲望を叶える機会なのではないだろうか。
そんなことを考えて体を起こし、机に向かう。
「師匠にも怒られるんだろうな」
やはり、答えは出したくなかったのだ、と自覚できてしまった。
それでも、独り言を呟きながら紙を取り筆先で紙をなぞる。
『拝啓。
悪の組織一同様。
私、ゼパルは本日を持ちまして脱退させていただくことをこちらに記させていただきます。
これまで多くのご迷惑をおかけしましたこと、改めて誠に申し訳ありませんでした。
また、皆様と出会う機会があれば。その時はこれまで通りとはいかなくとも何卒。
よろしくお願いいたします。
ゼパル。』
そう記した置き手紙を机に残し、まとめてあった荷物を手に取る。
不思議と重く感じた荷物を片手に、俺は悪の組織を出た。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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リアルが結局忙しくなってしまい、前作は未だ4話止まりという結果になっておりますが更新をしていきますのでご安心ください。
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