表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸福はいつもあなたと。  作者: ネクタイ
6/15

第6章 正面対決

ホテルに戻り、彼女が早々に寝たのを確認し、俺はフロントへと向かった。

「あの、支配人の・・・。」

「お呼びですか、伊吹さん。」

「・・・!」

呼び出そうとしたが、向こうからやってきた。フロント前で一礼する。不格好に俺もお辞儀を返しながら、彼をまっすぐ見た。

着こなした制服、きりっとした表情、筋の通った姿勢。

元同業だからこそわかる。

彼は、一流の支配人だ。

だが、彼女を渡していい相手ではない。

「こんなところで立ち話もなんです。最上階のバーにご案内いたしますよ。」



沈黙のエレベーターを経て、俺はバーに案内された。

「カクテル、お好きなものあります?」

「じゃあ、カリフォルニア・レモネードを。」

「いいですね、同じものを。」

かしこまりました、というバーテンダーの声を聞いてから、彼はゆっくりとこちらを向いた。

見てくれも悪くないなあ。と思いながら、何か?と尋ねる。

「時ちゃんとはどこで出会ったんですか?」

「俺の勤め先であった茶会で。俺、ホテルマンだったんです。」

「同業だったんですね。僕は、時ちゃんが小さいころから知ってます。親同士に縁があってね。それからずっと一緒だった。でも、茶道の師範になって都会に出て行ってしまって、すごく寂しかった。久々に会えたと思ったら旦那さん連れ。僕はものすごくショックだった。」

カクテルを呷り、窺うような目でこちらを覗く。そしてそのまま言葉をつづけた。

「でもね、伊吹さん。あなたに時ちゃんは任せられない。」

「は?」

勝ち誇ったように彼は笑う。俺はその顔をキッと睨んでいた。

「ってね、言うつもりだったんですよ。」

「・・・は?」

グラスに視線を移し、彼は静かにそのグラスを傾ける。中身を飲み切ると、俺のほうを見て優しく微笑んだ。

「時ちゃんが帰ってきたら僕はこの思いを伝えよう。そう思っていたんです。でも、時ちゃんにね、言われてしまった。・・・なんて言ったかは本人に聞いてください。僕が言えるのはここまでです。」

「楓さん・・・。」

「時ちゃんは間違いなくあなたを愛していますよ。数日前の喧嘩、きっとまだ仲直りできていないんでしょう?明日の夜、ホテル・ドゥードゥルで特別な席をご用意させていただきます。どうかその時に素敵な仲直りを。」

「楓さん、あなたは・・・。」

言いかけた俺の口に手を当て、彼は首を左右に振った。その仕草から、彼の恋路がどうなったかは想像に難くない。彼は新しく中身が注がれたグラスを掲げて言った。

「同じ女性に恋した男たちに祝福を!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ