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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
長期休みから王立学院二年生
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座って楽しくひと休憩

 ちなみにルーク兄様の雄姿は、さっき堪能し、”心のサプリアルバム”に永久保存したので、当然ルシフェルの雄姿も”心のサプリアルバム”に永久保存だ。

 今日は実に、有意義な一日である。


 そんなことを考えていると、私は俄然やる気になって、さらに作業をサクサクと進めた。


 ルシフェルも、私の『エフージオ』が終わったあとのヒノキに、『ヒール』かけたり、時々現れるダークコヨーテを倒したり、やることホントぬかりない。

 これはクラウス先生もルシフェルのこと、お墨付きを与えるわけだな。

 まあ、だてに神体山解放のメンバーに選ばれてないし、おまけに、エイデン先生やアドリアーナ先生と雑談しながら、もっと強い魔物を対峙しているわけではないなって思った。


 とはいっても、ちょっと疲れて来たかな?

 作業量としては半分以上は余裕でもう終わっていて、残すところもそんなにないと思う。なので、今まで休みなく来たし、終わりも見えてきたことだから、ちょっと休憩するのは、どうだろう?

 ちょっとルシフェルに訊いてみよう。


「ねえ、ルシフェル。ちょっと私、休憩してもいいですか? 少し座って、ひと息つきたいと思ったんですけど」

 私がそう言うと、ルシフェルは、

「確かに。ちょっとぶっ続けで作業してたから、俺も座りたくなった」

 と言ってくれたので、シロツメクサの上に、二人横に並ぶようにして座った。


 山林の中は山頂と違い、シロツメクサばかりではなく、ヒノキはもちろん、ハスノハグサも繁茂している。

 おんなじシロツメクサの上とはいっても、いつもとは違った光景だな……

 山頂は陽の光が眩しいけど、ここは木陰で陽の光は隙間を縫ってしか入って来ない。

 あと、ルシフェルと二人っきりというのも……

 なんて考えてきたら恥ずかしくなってきて、顔に赤みが帯びてきた気がしたので、なんか違うことを考えようと思った。


「あ、そうだ、何か魔力消費でもしようかな?」

「魔力の器、いっぱいなのか?」

 ルシフェルが心配して尋ねてくれた。でも真相は別にあるので、私は首を横に振る。

「ううん、まだ大丈夫だし、残りの貪汚たんお膿に侵されたヒノキの処理を考えても、全然問題ないと思うんだど、せっかく座ってるなら、何かしよっかなって思って……そう言えばルシフェル、大規模な『ラババントゥール』、去年の一緒にした魔法訓練のとき、見たがってなかった? この辺り一帯にかけてみよっか?」

 私がそう言うと、ルシフェルはあっさり却下した。

「それはさすがにクラウス先生にバレて、めっちゃ怒られる」

 と、ルシフェルにしては至極全うな意見を述べた。

 おお、珍しいな。でも、言ってることは超正解なんで、「確かにそうだよね」って言って、笑いながら頷いた。

「まあ、大規模じゃなくて、小規模なら別にいいんじゃね?」

 ってルシフェルが言うんで、色々小規模魔法を試して遊んでみた。

 ちなみにルシフェルは、魔法で遊んだりはしない。残りのヒノキに『ヒール』をかけないといけないから、念のために魔力を温存しとかないといけないからね。

 そんな中、私は少し喉が渇いたので、大きめのハスノハグサを取り、器代わりにして「アクア」と唱え、水で満たしてひと口飲んだ。


 うん、おいしい。


 するとルシフェルがじっと見ているので、「飲んでみる?」って尋ねると、「うん」って頷いた。

 私は、まだ残っている水をハスノハグサごとルシフェルに渡すと、ルシフェルは、私が飲んでいたところに口をつけて、水を飲んだ。


 ……えっと、これはもしや、間接キスなのでは?


 いやいや、ひょっとしたらこの世界では、間接キスという概念がそもそも存在しないかも知れないな。いや、きっとないに違いない。だからルシフェルも、何のためらいもないのだろう。

 私は少し赤面しつつ俯いていると、ルシフェルが、「うまいな」って言って、ニカって笑った。

 そんなルシフェルの笑顔にほっとする私、気にし過ぎてはいけないなって改めて思った。


「今は、水を飲む器代わりとしてハスノハグサを使いましたが、そう言えばハスノハグサって精製したら、有毒にもなり薬にもなると授業で習いました。今少しだけ、疲労回復の薬にもなってくれればいいのになって、頭によぎりましたよ」


 私が笑顔でそう言うと、ルシフェルはイタズラっ子そうな顔して、私に向かって言った。


「疲労回復よりも、身長が伸びるほうがいいんじゃねーの?」


 そう言ってルシフェルは、クックックって笑い始めた。

 もうっ 私が妙な勘違いで赤面していたというのに、ルシフェルはというと、めちゃ通常運転じゃん。

 変なこと考えちゃって、マジ損しちゃった。何か仕返しできないかな?

 というわけで、私はルシフェルの売り言葉を、買うことにした。


「そういうルシフェルは、私の魔力消費につきあってくれるんですか? 丁度今、ルシフェルに無性に『ヒール』をかけたくなりました」

「『ヒール』? 俺、どっこもケガしてないけど?」


 ルシフェルがきょとんとして、私に尋ねてくる。

 なので私はのらりくらり答えた。


「どっちにしようかなあ、いや、どっちもかな?」

「だから、どこに『ヒール』、かけんだよ?」

「ねえ、『脳』か『性格』か、どっちに『ヒール』をかけたらいいと思う? ひょっとして、両方かな?」


 私がルシフェルを覗き込むようにして尋ねると、ルシフェルは、「ほほう」と言って、目を細め、見下げる感じで私を見た。


「なるほど。ハスノハグサは薬じゃなくて、毒効果のほうが強いみたいだな。そんなに毒吐くなんて、効果てきめんじゃん?」

「ハスノハグサの有毒効果って、毒舌になるって意味だったんですか!? 敵に毒を与えるっていう意味じゃなくて?」

「あくまでソフィーに対しては、そうなんじゃね?」

「だったらルシフェルもですよ、だって、いいだしっぺはルシフェルだもん。いやあ、ハスノハグサの効能って、スゴイですね。さすが貴重な植物として、重宝されてるだけあります」

「ホント、ソフィーへの効果は高すぎるな。水飲んですぐこの毒舌じゃん。ハスノハグサの有毒効果は、敵への直接攻撃ではなく、まずは自分で接種し毒を吐き、相手を精神的に参らせるっていう効果なんだな。いやあソフィー、身をもって教えてくれて、ありがとう」

「いえいえですから、”ルシフェルが身をもって”、です」

「いや、”ソフィーが”だから」

「いえ、ルシフェルです!」

「いや、ソフィー!」


 とお互いになすりつけあう攻防のあと、一瞬時間が止まり、そして私たちは同時に笑い出してしまった。


「さすがルシフェル、面白いです」

「いや、ソフィーも負けてない。正直ここまで話盛り上がって面白いの、ソフィーくらいだから」

「あれ、ルーク兄様は?」

「兄上は、マジメだから」

「養母様は?」

「母上は確かに面白いけど、でも良くも悪くも性格似すぎだから、ときどき『あちゃちゃ~』って思うときがある」


 なるほど。そんな風に思ってたのか。

 その、『ときどきあちゃちゃ~』に関しては、”同族嫌悪”に近い感情なのかな?……”嫌悪”は言いすぎにしても、見ていてときどき恥ずかしくなるときとか、あるのかな?

 まあ私は、二人ともめちゃ明るくて優しくて大好きだし、欠点なんてよく分かんないけど(強いて言うなら面白すぎるくらい?)、本人たちには実は少し思うところがあって、それを目の前で目の当たりにすると、ちょっともにょるというか、居心地悪いというか、そんな風に感じるのかも知れない。


 そう言えば初対面のとき、私のことを”面白い”とか、”毎日楽しくなりそうだ”とか言ってたけど、私が、ルシフェルや養母様みたいに、”面白くなりすぎる”必要はないのかも知れないな。そう思うとたまたまだけど、私は丁度よいくらいなのかも知れない。


「ルシフェルの期待に、私が知らずと応えていたのなら、とても嬉しく思います……さっき、あんなこと言っちゃったけど、ホントはルシフェルの発想力も、お日様のような性格も、いつも私すごく励まされて、大好きなんですよ」


 私は満面の笑みで、そう言った。

 するとルシフェルは、一瞬また時間が止まったかのように固まったあと、ハッと気を取り直し、顔を赤くし、どっか明々後日の方を向いた。


 ルシフェルは、あんまり褒められることが少ないのかな?

 養母様のことだから、全く褒めてないってことはありえないけれど、いつもの様子から思うに、褒められるよりも窘められることのほうが多いイメージなので、私の今の発言は、ちょっと恥ずかしく思ったのかも知れない。

 どちらかというと、いつもはルーク兄様が褒められることが多いもんね。

 まあもちろんルーク兄様は、褒められることをしたから褒められるんだし、ルシフェルは窘めないといけないことをしたから窘められるんだけど。

 私はなんとなくルシフェルの事情を察したので、ちょっと声をかけてみる。

 ルシフェルはまだ、水飲みの器代わりに使っていた大き目ハスノハグサを持っていたので、


「今、顔を隠すために丁度いいもの、持ってるじゃないですか?」


 って、ちょっとからかい半分で言ってみた。なんか、あんまり重い空気にしないほうが、いいと思ったので。

 でもルシフェルは、ハスノハグサで顔を隠そうとはせず、ただじっと、持っている。


「いつも俺が、顔を赤らめているソフィーにそう言ってたから、今日は、仕返しか?」

「うん、ちょっとね」


 私は元気にそう言うんだけど、ルシフェルは、こっちを見てくれない。


「俺がどんな気持ちで、そう言ってたかも知らないで……」


 そう言ってルシフェルは、黙り込んでしまった。


 俺がどんな気持ちで……

 いや、普通に私が顔赤くなってるから、からかい半分で言ってるんだと思ってたんだけど、違うんだろうか。

 ルシフェルがハスノハグサを私に渡すときは、いつも神体山で、そしてルーク兄様がそばにいて……

 ……


 一瞬、去年ルーク兄様が『ルシフェルは、兄である私のことを立てるときは立て、控えるときは控え、ちゃんと弁えてる』って言ってたのを思い出した。


 私はさっき、どんな気持ちで言ってたの?ってうっかりルシフェルに訊きかけたんだけど、なんかそれは、訊いてはいけないような気がして、私は言葉を呑み込んだ。

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