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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
長期休みから王立学院二年生
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イルスガウディム山でピクニック

 もう六月に入った。初夏の風が気持ちいい。

 そしてそんな気持ちいいそよ風が吹き、太陽もさんさんと輝くビューティフル・デーである今日は、念願の、イルスガウディム山でピクニックだ!


 ……いや、違った。神体山の、ヒノキの根っこの調査&浄化だった。もちろん、ピクニックも予定には入っているんだけれど、メインの用事は当然ヒノキである。


 クラウス先生のお話だと、イルスガウディム山には解放後も魔物が出没していて、神体山に魔力奉納に行った貴族たちにも目撃されているという。

 とはいっても、ダークコヨーテとか弱めの魔物ばかりで、そんなに恐れることはないっていうお話なんだけど、魔物が出るということは、神体山の魔力奉納による浄化が間に合っておらず、ヒノキが倒木し、腐った根っこが剥き出しになっているということだ。

 なので、神体山が自然なサイクルで山を浄化できるよう、ヒノキの根っこの貪汚膿たんおのうを浄化しにいかなければならないという。

 ちなみに、既に倒木し、貪汚膿が剥き出しになっているのは、即浄化をしなければならない。で、まだ倒れてはいないけれど、不自然に傾いていたり、根っこがある地面のほうから、貪汚の瘴気が漂っているのも浄化対象という。


 で、どのようにして浄化するのかというと、まず闇属性の魔法『エフージオ』で貪汚膿を魔力エネルギーに変換しながらゆっくり丹念に吸収したあと、光属性魔法『ヒール』をかけるそうだ。

 なるほど。お話に聞く限り、根っこを浄化と言うよりも、貪汚膿を取り除いて、根っこを治癒し、神体山が通常のサイクルで浄化ができるよう手助けするっていうほうが、ニュアンスとしてはあっているのかも知れない。


 それにしても今ふと思ったんだけど、基本闇属性は吸収系が得意だし、光属性は与える系が得意っていう感じ、あるのかな?

 闇属性の防御結界が敵の攻撃を魔力として吸収できるのでも分かるように、闇属性はブラックホールのイメージに近かったりして。反対に光属性は放出系で、ホワイトホールのイメージに似てるのかも知れない。

 全てがこれに当てはまるということではないと思うけど、おおまかな考え方としてちょっと頭に入れておこうと思う。


 そして、貪汚膿を吸収するということは、貪汚落ちに気をつけながら貪汚膿を魔力エネルギーに変換し吸収しなけれがならないし、必要ならば魔力の器を広げつつ、慎重に慎重を重ねて作業に当たらなければならないということになる。

 で、クラウス先生が仰るには、どれだけ『エフージオ』で貪汚膿を吸収しなければならないのか見当がつかないということで、午前中はラウス先生監視下の元、王宮の魔法訓練施設でめちゃ魔法を使って、魔力を消費した。

 体感だいたい半分くらいは魔力を消費したんじゃないかな。

 ちなみになんでクラウス先生の監視下なのかというと、去年の魔法の授業で、先に魔力を消費してきてくださいと言われたので、ボールドウィン侯爵家の敷地内でやたらめったら魔法をぶっ放したら、『君には前科がある、危なっかしくて放っておけない』などと言われてしまったからだ。

 もうホント大袈裟だなあ。

 ぶっ放したっていっても攻撃的なやつじゃないし、むしろお掃除したりとか、皆さんのお役に立つ魔法ばっかりだったっていうのにさ。

 それに、一度注意されたら私だってちゃんと気を付けるのにさ。

 ……まあ、今までが今までなんで、クラウス先生の信用が得られないのも、仕方ないのかもだけど。

 っていうことで、ピクニック……いや違った、ヒノキの根っこの調査&浄化の前に、クラウス先生の監視下で魔法消費をかねた魔法の授業となった。


 そうそう私はつい最近、闇属性の魔法を最上級魔法までマスターしてしまった。

 で、闇属性の『古の魔術書』を少し見せてもらったんだけど、ルーン文字、読めるのもあったけど、読めない文字もあった。

 なんていうんかな、トリガーみたいなものが必要な感じがした。

 ゲームでいうところの、何かを経験してからでないと、この部分は読めない、みたいな。

 その経験が何なのかは私には分かんないんだけど、神体山を解放していく中で必要なら経験を積んで、いつかは読めて、使えるようになるんじゃないかな?

 そのための経験への道のりは、その魔術が必要になったときにきっと私の守護天使のウリエルが、光でその道を照らしてくれるに違いない。

 っていうか、そんな『古の魔術』とか仰々しいのは、使う機会がないのが一番いいとは思うんだけどね。だって、めちゃ威力高くて怖そうなんだもん。

 なので、読めないのなら読めないままでもいいんじゃないかなあとか思いつつ、読めるものに関しては、これから練習していこうということになった。

 で、クラウス先生にも読めるものもあるんだけど、先生曰く、古の魔術は適性がなく、魔法陣も発動できず魔法を使うことができないので、教えるのも手探りなるけれど、無理ない範囲でやっていこうということになった。

 まあ、無理ない範囲ならいいか。きっと、クラウス先生自体もルーン文字が読めて、どんな魔術なのか分かっているものから挑戦していくことになるんじゃないかなあと思う。

 で、それが終わったら私にしか読めないやつ……

 なんか、クラウス先生にも使えない魔法を私が挑戦するなんて、やっぱりちょっと緊張してきたな……

 っていうか、光属性魔法だって最上級魔法まだ全部マスターしてないし、無属性だって同じだ。

 そちらの魔法も学びつつになるので、ホントどこまでできるのかって感じだけど、クラウス先生が”無理ない範囲”と仰ってるので、いつも通り言われたことを精一杯がんばろうと思った。


 そんな感じで魔力消費をおもに置いた魔法の授業は終わって、クラウス先生と私は王宮の転移陣に向かった。

 今日はお日柄も良く、ピクニック日和で実に素晴らしい。

 そして、転移陣には執事のセバスチャンがいるんだけど、なにかバスケットのようなものも持ってた。


 ……ひょっとしてあれは、お昼ご飯のサンドイッチでは!?


 私がめちゃ期待に膨らませていると、セバスチャンがクラウス先生にバスケットを渡しながら、言った。

「料理長よりお預かりしておりますサンドイッチでございます」

 わあ! やっぱりサンドイッチだ!

 私はお目々めっちゃキラキラさせてクラウス先生を見ると、クラウス先生が輝かんばかりの笑みを浮かべて仰った。

「皆で山頂で食べましょうね」

 ああ、クラウス先生、おひさまに照らされた先生の微笑みは、本当に眩しすぎて、神々し過ぎますよ……

 私はクラウス先生を見てめちゃうっとりしつつ、でもクラウス先生の笑顔に呼応するように、私も満面の笑みで、

「はい! とても楽しみです!」

 と、元気いっぱいそう言った。


 イルスガウディム山の凱旋門から山頂までの道のりを歩くのは、いつもより大変に感じた。魔法をいっぱい練習したのもあると思う。おまけにお昼時でお腹も空いてるし、クラウス先生の右手にはバスケットがあって、そこには絶対に美味しいと思われるサンドイッチも入っているわけなので、めちゃ気になって気になって仕方がない。

 正直、何回お腹が鳴ったかな?

 クラウス先生は、笑いを堪えるようにクスクスと笑っていらっしゃるし、もうホント恥ずかしいったらないな。

 私は顔をめっちゃ赤くしながら、そして時々お腹を鳴らしながら、神体山解放以外で今までで一番辛く感じた山頂までの道のりを歩いた。


 山頂にたどり着くと、魔力奉納に来られている貴族の方々や、その皆さまにご案内をしているウルル、そして、剣の稽古をしているルーク兄様とルシフェルが目に入った。

 私が魔法の授業だった間、二人は山頂で剣の自主練習をしていたみたいだった。


 わあ、二人とも相変わらずめちゃカッコいいな! 例によって例のごとく早すぎて何やってるかはさっぱり分からないけれど、剣さばきだけでなく、真剣な表情もいいのよね、うん。

 でも何か、去年の山頂での稽古のときよりも、少しお顔が大人っぽくなったような……

 お顔の輪郭がスッとしだすと、男子はたちまち色っぽくなるよね、なんか見てるだけでもドキドキしてきた。

 というわけで張り切って、脳内にある”心のサプリアルバム”に永久保存しておこうと思う。

 ちなみに私の”心のサプリアルバム”は写真だけでなく動画も当然保存できるので、めちゃハイテク仕様なのだ。

 まあ、私の脳内なんで、どうとでもできるという話なんだけどさ。今んとこ、容量無制限だしね。


 私は心の中で人知れずドヤ顔をしていると、クラウス先生がルーク兄様とルシフェルを呼びに行かれた。

「ルーク様、ルシフェル様、お待たせいたしました。ランチに致しましょう」

 クラウス先生の呼びかけに、二人はめちゃテンションMAXになって、声を上げ、そして私にも気づいてくれて、早くこっちに来るように手招いてくれた。もちろんクラウス先生も。

 皆んなの笑顔が眩しいな……おひさまの下だから、余計にそう思う……

 私は早く皆んなのもとへ行きたくて、お腹すいてたけど頑張って少し小走りして、皆んなのところに辿り着いた。


 私たちがシロツメクサの上に円形に座ると、クラウス先生がバスケットを開けて、私たちに水筒を渡しつつ、ナフキンを真ん中に広げ、大き目のサンドイッチケースをいくつか広げられた。

 わあ、なんかめっちゃ豪華に見えるよ! さすが見た目も宮廷料理って感じでめちゃ凝ってる!

 あと、色んな種類、入ってるよ? さすが宮廷料理人!

 私は感動に打ちひしがれていると、ルシフェルが張り切って声をあげた!

「クラウス先生! 俺、早速食べたいです! お腹、ちょー空きました!」

 え、えっとルシフェル、『この食べ物は何ですか』とかの質問は、ないのかな? まだ食べたことないはずだけど。

 でも、あんまりにも満面の笑みで言うもんだから、もう何でもいいから今すぐ手に二、三個すぐ持たせたくもなるんだけどね。

 でもルーク兄様はというと、ルシフェルに水筒を持たせ、

「ルシフェル、汗をかいただろうから、先に紅茶を飲むといいよ」

 と言って、水筒を持たせていた。

 ルーク兄様はホント、ルシフェルの扱いが上手だなあって思う。

 で、ルーク兄様がルシフェルに紅茶を飲ませている間に、クラウス先生がサンドイッチの説明をされた。

「こちらの料理はサンドイッチ、宮廷料理人に作らせました。発案者はソフィー様です。どうぞお召し上がり下さい」

 クラウス先生がそう言い終わるか終わらないか分からないレベルの速さで、ルシフェルが両手でサンドイッチを取り、ひとつ頬張りながら言った。

「え、ソフィーが? 俺、まだ食べたことねーけど」

 なんか、口の中に食べ物がいっぱい入ってるから、理解するのに一秒ほどかかるし、ほっぺがリスみたいに膨らんでるのが可愛くて、でも笑っていいのかどうなのか分かんないしで、めちゃ困惑したんだけど、とりあえず、少しの間のあと返事した。

「手で食べるものだから、ディナーには不向きかと思ったんです。朝食、ランチ、夜食なんかで食べるのがいいと思ったのと、あと、クラウス先生が皆んなで神体山山頂でランチしようって提案して下さったので、そのとき初めて食べてもらって、ディナーに出していいか、ルーク兄様やルシフェルの意見をお伺いしたいなと思いました」

 私がそう言うと、ルーク兄様が食べながら意見を述べられる。

「私は、ディナーに出してもいいと思うけど、でも手早く食べられるので、ディナーよりも朝食やランチ向けかもしれないね。ソフィーの言う通り、夜食でもいいと思う」

 ルーク兄様、すごく美味しそうに食べて下さってる。めちゃ嬉しいな。

 するとルシフェルが、妙に勝ち誇った感じのドヤ顔で言った。

「まあ俺は、ディナーだけでなく、おやつの時間でも余裕だけどな!」

 えっとそのドヤ顔、いったい誰と張り合ってんのかさっぱり分かんないな。

 でもまあ、確かにおやつの時間に食べるのも、ありだよね。前世では、フルーツサンドなるものもあったもん。まあ、私は食べたことないけど。

「ソフィー様、意見ばかり尋ねていらっしゃらないで、召し上がりませんか? 美味しいですよ」

 いやね、先に質問しとかないと、サンドイッチの美味しさに我を忘れて質問し忘れたりしたら大変じゃない?

 でもまあ訊きたいことはもう訊けたんで、クラウス先生のお言葉に速攻甘えて、私も食べ始めた。

 最初に食べたのは、私も作った卵サンド。なんか、マヨネーズにマスタードっぽいものが入ってて、これもホントに美味しい!

 そして、前はパンが出来立てだったけど、冷めてももちろんめちゃ美味しいなって思った。

 また今日は、卵サンド以外にも色々な種類のサンドイッチがあった。

 ハムレタスサンドに、ローストビーフのサンドイッチにはレタスとトマトが入っていて、ローストチキンのサンドイッチにはきゅうりとチーズが入っている。どれもめちゃおいしそうだ。

 さすが、プロは違うなあ。マヨネーズも難なく作れるみたいだし、早速今日のディナーにでも養母様に提案し、朝食かランチかなんかのメニューとして、ボールドウィン侯爵家でも出してもらうことにしよう。

 きっとルーク兄様やルシフェルが、素晴らしい援護をして下さると思う。

 私はそんな固い決意を胸に、サンドイッチはめちゃ美味しいんで頬は緩ませながら、皆んなとのピクニックを楽しんだ。

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