サンドイッチ完成!
ほう……どうやらなんとか乗り切れたようだ。
なので今日作る『サンドイッチ』のネーミングに対しても、『ウリエルのお告げ的発想によるネーミング』で押し通そうと思う。
確かサンドイッチも、ハンバーグと同じように、サンドイッチさんが初めて作ったからサンドイッチっていう名前になったと思うんだけど、ハンバーグ同様その説明できないんで、まあ、仕方ないよね。
とりあえず、マヨネーズを返してもらいつつ、きゅうりを『セカーレ』でスライスしていたら、色々お話していたのもあり、ゆで卵ができあがったっぽい。そばにいる料理人さんが教えてくれた。
「グラッチェス」
私が『グラッチェス』と氷の魔法を唱えると、お鍋の中のお湯がほどよいくらいのぬるま湯になった。
おお、なかなか上手に微調整できてる!
「クラウス先生!」
私はクラウス先生を見ると、先生は笑顔で頷かれる。
「ソフィー様、モーゼの杖がなくても微調整が本当に上手になられましたね。著しい魔法の上達が伺え、私も本当に嬉しく思います」
と、お褒めの言葉を頂いた。
めちゃ嬉しいなって思いつつ、料理人の皆さんと一緒に卵の皮を剥いた。
卵の皮を剥く魔法っていうのがあったらさらに便利だったんだけど(私が知らないだけで、ホントはあるのかも知れないけれど)、まあ、皆さんと一緒に作業するのも、楽しいよね。
で、皮が剥けたつるんとした卵、私は丸いものが好きなので、ちょっと顔が緩んじゃうな。
っていけない、いけない、この卵たちを細かくして、マヨネーズであえないと。
「セカーレ」
私がそう唱えると、細かくなりすぎないレベルの、ほどよい触感が楽しめそうなサイズの細かさにカットされたゆで卵があった。
うんうん、ホントよい感じで魔法の調整ができるようになったな。
私はまたドヤ顔でクラウス先生のほうを見ると、
「魔法の微調整、上手にできましたか? 素晴らしいです」
と、また笑顔で褒めて下さった。
ゆで卵のまん丸もかわいかったけど、やっぱりイケメンの笑顔のほうが、さらに達成感が増すな。
などと、勝手なことを思いつつ、さっきのマヨネーズとゆで卵をざっくりと混ぜてみた。
……おお! 卵サンドの具だ! でも、ちょっと塩気が足りないかな?
って思って、塩コショウで味を調えつつ、具材が完成した。
私がまたドヤ顔で、「具が完成しました!」ってめちゃ張り切って言うと、クラウス先生は眩しいものを見るかのように、私をご覧になる。
めちゃ期待されているに違いない。
今のところめちゃいい感じだよ、クラウス先生、楽しみにしててね!
私は心の中でそんなことを思いながら、満面の笑みで返した。
そして、次はパンのカットだな。ヒノキの木片作りも結構得意なんで、パンのスライスも、まあなんとかなると思う。
料理人が渡して下さった焼き立てのパン、やわらかいのが欲しいって事前にお願いしていたら、時間に合わせて焼き立ての白パンを用意して下さった。
めちゃお優しいな。
ひょっとすると、ご相伴にあずかれるのもあって、協力的なのかも知れないけれど。まあ、優しくして下さるのならば、それでいいと思う。
で、香りも豊であまりに美味しそうだったので、サンドイッチに使いそうにない、ぽってり楕円形の端のほうをちょっとつまんで食べてみたら……
めちゃ美味しかった!
私はまた満面の笑みでクラウス先生のほうを向くと……これに対しては満面の笑みを返しては下さらず、少し困ったように微笑まれた。
……まあ、そりゃそうだよね。早く作れって話だよね。
とりあえず、できたてほかほかのやわらか白パンを堪能したので、気合を入れて、続きを始めよう。
焼き立てのパンは、パン切り包丁使っても切るの難しいと聞いたことがあるけれど、私は魔法があるので問題ないと思う。
「セカーレ」
すると、まんまるぽってり楕円形の白パンが、八ミリほどスライスパンになった。一所懸命イメージしたので、なかなか均等にできていると思う。そして、切り口もキレイだ。
「クラウス先生!」
私はまた満面の笑みをクラウス先生に向けると、今度は優しく微笑んで下さった。
よし、あとひと息だ、頑張るぞ!
残りの作業は料理人の皆さんと一緒にした。
まず私は簡単に手本を見せる。パンにバターを塗って、きゅうりと卵の具を乗せ、パンとパンではさみ、切り口は見せたいので、真ん中のところを切って半分にした。
おおー! できあがりは完全に卵サンドだ!
私は料理人の皆さんに「同じようにしてみて下さい」と言って作業をお願いしたのち、半分に切った卵サンドをクラウス先生のところに持っていった。
「クラウス先生、ぜひご試食下さい!」
そう言って、半分に切った片方をクラウス先生に渡し、私はもう半分をひと口食べてみた。
おいしい~!
自分で作った料理って、具だくさんになるんでめちゃ美味しくなるんだけど、これはパンもできたてで美味しくて、今まで食べた卵サンドの中で、一番おいしい!
私はもうあんまり美味しくて、口の中のものがなくなりきる前に、思わずクラウス先生に訴えてた。
「めっちゃ美味しいですよ!」
私があんまり満面の笑みで言うので、クラウス先生は少々驚かれ、お目々をぱちぱちされたあと、ひと口卵サンドを食べられた。
そして、ゆっくり噛みしめるように味わわれたあと、口を開かれた。
「これは、また新しい触感ですね。卵もクリーミーで口当たりも良く、程よい酸味も爽やかです。きゅうりのシャキシャキ感がまた食欲をそそりますし、ソフィー様、これは本当に素晴らしいと思います」
と、とても感激して下さり、残りを一気に食べられてしまった。
「クラウス先生、ご期待に添えたのなら私も嬉しいです。ぜひ今日のランチ、一緒に食べましょうね。ドミがおいしい紅茶を入れてくれると思いますよ」
私は、クラウス先生に喜んでもらえてめちゃ嬉しくて、満面の笑みでそう言った。
調理場のはしのほうで今までの流れをずっと見ていたドミは、私と目があうやいなや、
「承知いたしました」
と簡潔に言って、早速私たちのランチの準備を始めるため、サンドイッチを取り分け始めた。
そして私は、まだサンドイッチ制作の途中でいらっしゃる料理人の皆さんにも声をかけた。
「皆さん、今日はご協力ありがとうございました。残ったサンドイッチはドミと皆さんで食べて下さいね」
私がそう言うと、料理人の皆さんも新しい料理に興味津々だったのか歓喜の声が上がり、さらに熱心に作業に取り組まれた。
私とクラウス先生は部屋に戻ると、ドミが入れてくれた紅茶を頂きながら、卵サンドの感想を述べあう。
「ソフィー様、こちらの食事は手で食べられるので、非常に便利ですね」
「ランチだけでなく、例えば神体山の山頂でピクニックしたり、お夜食にしたり、色んな場面で食して頂けます。あと、具材も卵だけでなく、レタスとハムとか、肉のスライスとか、そういうのも美味しいと思いますよ」
「なるほど、色んな味が楽しめるというわけですね。これは早速宮廷に持ち帰り、料理長にも進言してみたいと思います」
おお、ということは今後、宮廷料理経由の王立学院ルートで寮のメニューにもなるかも知れない。
ハンナ様、喜ぶかな?
ちょっとマヨネーズを作るのが大変だけど、誇り高い料理人の皆さんなら、頑張って下さると思う。
「今度、イルスガウディム山に行く話を以前したと思うのですが、お昼時にして、山頂で皆とランチを食べるのもいいですね。宮廷の料理長に作らせようと思います」
「え、宮廷料理長って……クラウス先生、そんなことできるんですか……?」
「宮廷料理長は、私があまりに斬新な料理のレシピを持ってくるので、最近では私が来ると、跪くようになりました。なので、昼ご飯を作らせる事ぐらい、わけもないことです」
と仰って、ニッコリと微笑まれた。
なんか、その微笑みが若干怖い気がしたけど、でも料理人にとって新しいレシピは、貪欲で研究熱心な人ほど、喉から手が出るほど欲しいのかも知れない。
だったらまあ、その言葉に甘えない手はないよね? 私もプロの、しかも宮廷料理長が作るサンドイッチ、食べてみたいし。
「イルスガウディム山に行くのが、今からとっても楽しみです!」
私はもう満面の笑みで、そう言った。




