エレガンドゥード山の神体山に初めての魔力奉納
魔力奉納の順番が回って来ると、ウルルが速攻私に飛びついて来た。
「ソフィー! 久しぶり!」
うう、相変わらずウルル、めちゃかわいいなあ……激しくなでなでしちゃうもん。
でも、魔力奉納の順番を待っている貴族の皆さまもいらっしゃるので、ウルルとの久しぶりの御対面に、あんまり時間をかけることができないのが、やっぱり残念だな。
まあ、仕方がない。クラウス先生が魔力奉納している間、力の限りウルルをなでなでしようと思う。
そしてクラウス先生が魔力奉納を終えられ、次は私の順番となった。
魔力奉納の方法は、神体山解放のときと同じように、両手を一枚岩の上に置いて、一気に魔力を注ぎ込む。で、そうすると、もともとほんのり光っている一枚岩がさらに強く光るんだけど、なんか以前一度だけイラエ山で魔力奉納したときよりも、光り方が強くなってるかも知れないな。
すると、はたから見ていたクラウス先生も同じことを思われたようで、
「ソフィー様、二つの神体山解放や……その、例の一連の事件などを通して、さらに魔力の器を広げられて、魔力量がまたさらに増えましたね……」
と、独り言かのように小声で仰ってるのが薄っすらと聞こえてきた。
私は魔力奉納を終えると、あとの人がつかえているんで、ウルルには名残惜しいけれど、最後にぎゅってハグしてバイバイして、クラウス先生のところまで行った。
「……ソフィー様、以前よりまた一段と魔力量を上げられたように思います。体調のほうは、大丈夫ですか?」
クラウス先生が心配そうに仰るんで、私は元気に答えた。
「全然大丈夫ですよ。ご心配頂きありがとうございます。何か、問題でもありますでしょうか?」
「いえ、お体に異常がないのでしたらよろしいんですが、正直、それほどの魔力量を持っている人がこの世にはいないと思われ、大丈夫なのかと少し思ったのです」
なるほど、転生特権か、異世界転生時のねじれ系か、ウリエルのご加護系もあるかも知れないな。
ここは当然、ウリエルのご加護系をゴリ押ししようと思う。
「きっと、ウリエルがついててくれるからだと思うんですが、この世にいないレベルとなると、私もちょっと心配になってきました。もし万一体に異常を感じたら、すぐにご連絡致しますね」
「そうですね……私のほうでもソフィー様の正確な魔力量を計り、対策を考えたいとは思ってはおりますが、現状それほどの魔力量を測れる魔術具や魔法陣がございませんので、何かありましたら教えて頂けると助かります。私もソフィー様の魔力量を計れる魔術具や魔法陣の開発など、少し考えてみますね」
クラウス先生はそう仰って、微笑まれた。
先生はもともと研究肌なところもおありだから、知的好奇心みたいなのもきっとおありなんだろうな。私ももし魔力量、知れるなら知ってみたいし。続報を待とうと思う。
それから私はクラウス先生の指示通り、去年同様ヒノキをカットしてゲットしたり、二年生の授業で使うらしいハスノハグサの花もゲットし始めた。本当なら、王立学院の素材収集場でゲットできればいいんだけど、この世界ではヒノキとハスノハグサは神体山にしかない貴重な植物ということなので、今のうちにゲットしておくのはいいよね。ちなみに、採集した素材は特殊な袋に入れるんだけど、この袋がなんと、聞いたところによると異次元収納らしく、採集した植物が枯れたりすることもなく保存状態もばっちりらしいし、何より大量に採集できるので、めちゃ便利だなって思った。
で、ヒノキはけっこう手慣れたもんで、『セカーレ』でささっと木片にする。
ハスノハグサに関しては別に魔法を使うわけでもなく地道に採集するだけなんだけど、でも、ハスノハグサの花を見たら、去年ルーク兄様が私に髪飾りっぽく下さったのを思い出して、ホント顔が赤くなってきちゃうんだよね……
だって、『似合うよ』だよ?
もうホント、このハスノハグサの花の深紅のような赤と、私の頬と、今どっちが赤いのか、結構いい勝負をしていると思う。
この赤い顔、今すぐ隠したいんだけど……そう言えばそうだ、この赤い顔を隠すには、ハスノハグサの葉で隠したらいいんだよね。ルシフェルが前、言ってた。
おまけにルシフェルいわく、ハスノハグサの葉は体も隠せるから、かくれんぼまでできると、ドヤ顔になってたっけ。
そう言えばルシフェル、以前ルーク兄様に『お屋敷内でかくれんぼしよう』とか提案してたけど、あれから一年、未だにかくれんぼ、好きなのかな?
そんなことを考えていたら、恥ずかしいのも少し紛れてきて、顔の赤みも引いてきた。
うん、ハスノハグサの葉にはひょっとしたら、鎮静効果もあるのかも知れない。まあ、私に限りだと思うけれど、万一ホントにそんな効能もあるかも知れないんで、ちょっと脳内にメモっておこう。
などと様々なことを思い出したり、考えたりしつつ採集を続け、腰に下げている特殊な袋に、ヒノキの木片とハスノハグサの花を入れて、袋がいっぱいになるまで採集した。
ふと一枚岩のほうを見ると、ウルルが相変わらず貴族の皆さまを相手にツアーガイドっぽいことをしつつ、お子さまたちに囲まれていた。
ほんと、はたから見てたら観光客に愛想振りまく神体山のマスコットキャラって感じだな。
相変わらずお子さまにも人気だし、”神の御意志”とか”王都や領地のため”とか関係なしに、楽しく魔力奉納できるのは、とてもいいなって思った。
でも、”神の御意志”に関係なく一枚岩に入って魔力奉納しようとすると、めっちゃ怒られるんだよね……
あの可愛いウルルが、いったいどんな風に怒るんだろ? 岩の精霊なんで、何気に実はめっちゃ強いんだろうけれど、可愛いフォルムからはちょっとイメージできない。先生にお伺いしてみよう。
すると、クラウス先生が仰るには、”神の御意志”に関係なく一枚岩の上に乗ると、脳がめっちゃ締め付けられるような、鈍いビリビリに襲われて、失神してしまうらしい。
……そう言えば、昔アニメで見た西遊記の孫悟空は、確か大地の精霊で、なんか悪さをしたら頭に付けてる緊箍児がぎゅっと締め付けられて、悶え苦しんでたと思う。
似たような感じなのかも知れない。まあ、痛がるのはウルルではなく、違反を犯した貴族たちだけど。
……にしてもウルル、見た目に反して実はやっぱ強いんだな。
でも、”神の御意志”以外でも、ウルルを怒らせたらめっちゃ仕返しされるとか、あるのかな?
クラウス先生に尋ねてみると、生命の危険を脅かさない限りは特に問題と思われる、ということだった。
あと、ウルル自体に攻撃してもウルルに被害はなく、一枚岩を攻撃しないとウルルにダメージを与えることができないとも教えて下さった。
つまりあの、かわいいフォルムは分身体で、本体ではないということか。
そうか、それはよかった。先日エイデン先生が、めっちゃ聖槍でウルル小突いて遊んでたような気がしたので、ちょっと心配してたんだよね。
でも、一枚岩自体がめちゃ攻撃されたりする場合なんかは、ウルルも黙っちゃいないっていうことだろう。
そんな感じでエレガンドゥード山の海現状視察と魔力奉納、ついでに素材収集も完了し、ボールドウィン侯爵家に帰ることになった。
クラウス先生は仰る。
「一度、魔力奉納とは関係なしに、イルスガウディム山のほうも調査と体力づくりも兼ねて参りましょう。
エレガンドゥード山の神体山解放のときに出没した魔物と比べて、イルスガウディム山ではキマイラアグリネスという強種の魔物まで出没しましたし、また、解放後も二つの神体山に比べて魔物出没情報の数がかなり多いです。
私が以前、魔力奉納がてらイルスガウディム山に行ったとき、軽く調査してまいりましたが、出没している魔物自体は弱かったものの、倒木したヒノキも他の二つの神体山に比べてかなり多く、根っこには貪汚が付着したままで放置されていることには違いなく、神体山の魔力奉納による自然な形での浄化では間に合っていないと思われます。これを放置しておくと、神体山が自然な浄化サイクルに入れず、貪汚が蔓延り、魔物の凶悪化、さらに放置させたままでおくと、七大悪魔による神体山の再奪取の可能性もありますので……そうですね、少し様子を見て王立学院が開始する直前くらいに、一度参りましょうか」
おお、なんかめちゃ怖い話だな……魔力奉納による自然な回復では間に合わない可能性もあるのか。
そして、放置プレイ甚だしければ、七大悪魔による再奪取って、これはマジしゃれになってない。
あんなに皆んなで苦労して解放したのに、また同じことをしなければならないなんて、正直、残り四つも残っているっていうだけでも、もうぶっちゃけげんなりしているのに、さらに増えるとか、これは苦行どころの話ではない。
魔力奉納は毎日のように行われているし、今のところ被害の報告もないんで、現状急激に状況が悪化ということはないと思うけれど、一度、きちんとご覧になって、処置を施されたいのかも知れない。
ということは、人手がいるのでルーク兄様やルシフェルも一緒なのかな?
今日みたいにクラウス先生と二人でも楽しいけれど、ルーク兄様やルシフェルも一緒だったら、もっと賑やかにはなるんで、それはそれで楽しみだなあって思った。
「はい、分かりました。いつでもお声かけ下さい」
私は笑顔でそう言った。




