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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
長期休みから王立学院二年生
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生まれて初めて見た海

 それからまた様々なことを学んで過ごしていたら、四月になった。

 クラウス先生が、私の神体山に魔力奉納する順番が来たと教えて下さって、今日は一緒に神体山に行くことになっている。行き先はエレガンドゥード山、海に突出している神体山だ。


 クラウス先生が私の部屋まで迎えに来て下さり、ドミに見送られて転移陣、神体山の入り口である凱旋門、そして山道へと入って行く。

 エレガンドゥード山に神体山解放後に行くのは初めてだ。

 神体山解放のときはそれに集中してたから周りは特に見てなかったけど、山頂から海とか見えるのかな? それともまだ干上がってて見えないのかな?

 前回の状況を全く知らないので、状況がマシになったのか私には比較はできないけれど、クラウス先生ならきっと周りを見てらしたと思うし、あと地図なんかとも比べながら状況を判断されることに違いない。

 お魚さん、近くなったのかな、楽しみだな。

 そう言えば、ルーク兄様やルシフェルは今日は一緒じゃないけれど、魔力奉納の順番、回ってきたのかな?

 私がクラウス先生に尋ねてみると、

「ルーク様やルシフェル様は、神体山解放直後に順番が回ってきておりますよ。貴族一の魔力量を誇る名家ですので」

 ああそうだ、確かそんな決まりごとを以前教えてもらったっけ。基本、魔力量の多い貴族から順番に、魔力奉納する感じになってるんだよね。

 でも、私の魔力奉納の順番は、なんかまちまちなんだけど。神体山解放したときに大量の魔力を使ってるからとかが、関係しているのかな?

 神体山の魔力奉納の順番は、他領地の貴族も含めて、まんべんなくが基本って聞いてるんで、それも関係しているのかも知れない。

 ……っていうか、エレガンドゥード山を解放したのは去年の八月なんで、今四月と考えると、実に八か月ぶりか。

 けっこう間隔空いたなあ。

 まあ、他領地の貴族の皆さまもたくさんいらっしゃってたんだと思う。今回イルスガウディム山も解放できたから、今後は少しだけ、サイクルが早まるかも知れないな。期待しておこう。

 私がそんなことを考えていると、クラウス先生が私を覗き込むように、仰った。


「……ルーク様やルシフェル様がいないと、やはり、お寂しいですか?」

「いえいえ、そんなことはないです。ルーク兄様やルシフェルとはディナーで毎日のように顔を合わせていますから」

「……そうですか、それならば良かったです。今日はお二人、今頃ボールドウィン侯爵と剣の稽古をされていると思いますよ」


 と、さわやかな笑顔で仰った。

 あんまりにもさわやかなんで、春の到来と共に、華やいだ気分になっちゃうな、うん。


「それはそうと、クラウス先生も魔力奉納はいつだったんですか? クラウス先生の魔力も半端ないんで、相当初期に終えられたのではないかと思いますけれど」

「私ですか? そうですね、確かエレガンドゥード山が解放された直後にもう終えました。ですが私は許可を頂ければまた魔力奉納できますので、今日もソフィー様と一緒に、魔力奉納致しますね」

「え? それは知りませんでした。てっきり私の付き添いだとばかり……その、それは何ですか? 王様の側近は、例えば緊急事態に備えてとかで、許可があれば神体山に係わることができるんですか?」


 そう言えば、私が初めて神体山に行ったときも、クラウス先生が後から私をつけてたんだよね。

 何かそういう特権みたいなの、あったりするのかも知れない。


「……まあ、王族同等のソフィー様ですから、色々教えても問題ないとは思いますが……時期が来たら分かることですので、またお話するときが来たら、お教え致しますね」


 と、言葉を濁しつつ、笑顔で仰った。

 やっぱり、クラウス先生って謎が多いと思うんだよね。髪色や瞳の色に加え、神体山のこともそうだし、何か、特殊情報捜査官みたいな、秘匿情報いっぱい扱ってる組織所属とかで、話せないことがいっぱいあるのかな? FBIやCIAみたいな? よく分かんないけど、なんか映画みたいでちょっとカッコいいなって思っちゃった。

 まあ、いつかは話して下さるそうだし、それを待つことにしよう。


 山頂に着くと、いつもの開けた景色があった。シロツメクサがいっぱい咲いている中心に一枚岩があり、魔力奉納に来ている他の貴族もいらしたんで、ウルルがツアーガイドっぽいことをしている。

 ウルル、相変わらず可愛いな。あとでなでなでしよう。

 そんなことを考えながら、山頂の、行きがけの山道とは真逆の位置まで歩いていくと、海が見えてきた。

 わあ! 海って初めて見た! めちゃ広い! めちゃキレイ! キラキラしてる!!

 私が感動してクラウス先生のほうを見ると、クラウス先生が私のほうを見て、優しく微笑んでいらっしゃる。

 陽の光がクラウス先生の闇色の瞳に当たり、キラッて輝きめちゃカッコいい。

 うん、”心のサプリアルバム”に永久保存だな。

 と、こっそり思いつつ、ひそかにイケメンを堪能した。


 そして前を見ると、こちら側にも山を下りれる山道があった。これ、下りたら、海まで行けるんじゃないかな?

 クラウス先生に尋ねると、

「はい、海の近くまで行けますが、距離がさきほど登って来るときと同じくらいの距離がありますので、行くのは大変かと思いますよ」

 と仰った。

 で、私はここ山頂に来るまでに、体力をめちゃ使い果たした自覚があるので、素直にやめとこうって思った。

「そうですね、春休みにもう少し体力増強がてらお散歩して、もしいけそうならいつか行ってみましょうか」

「でも、クラウス先生は海の状態、調べなくてもいいんですか?」

「ここからの目視で海の魔力がどれほど戻って来ているのかについてはおおよそ分かりましたので、問題ないですよ」


 おおスゴイ、さすがクラウス先生だ。

 ひょっとしたら以前にも魔力奉納来られたと仰っていたので、そのときの状態と比べて思うところがおありなのかも知れないな。


「……それで、魔力の戻り具合は、どのような感じなのでしょう……?」

「イルスガウディム山が解放されたのもあり、かなり戻って来ていますよ。そうですね、”神の御意志”次第ではありますが、本格的な漁猟再開となりますと、あと一年くらいはかかりますでしょうか、漁猟再開に向けてもろもろ準備もありますので。その間何度か様子を見に来ることにはなりと思いますけれども」

「その一年の間に何度か様子を見に来られるとのことですが、その……その間に魚の味見とか、そういう機会もあったりするのでしょうか……?」

 私はちょっと、もじもじしながら訊いてみた。

「そうですね、その機会を作ることはできると思いますけれど」


 おお! ということは、一年を待たずしてお魚さんにありつけるということなのかな?

 いやっふぅ!!

 私は思わず両手でガッツポーズをしてしまった。

 すると、クラウス先生が驚いて、目をぱちぱちされながら見ていらっしゃる。

 うう、恥ずかしいな。でも仕方ない、心の声が表に出なかっただけ、よしとしとこうと思う。


「魚の味見をご所望でしょうか、ソフィー様?」

「はい、お魚さん、食べたいなあって思って、あはは」


 って、なんとなく愛想笑いしといた。


「確かにそうですね、私も久しぶりに食べたくなりました。あと……」


 あと……?

 私は何だろうと思ってクラウス先生を見た。

 すると、どことなく顔を赤らめてらっしゃるな、どうしたんだろう。

 私がじっと見てるので、クラウス先生は目を逸らして、どこか明々後日のほうに視線を向けられた。

 ああ、あれかな。私が何かお魚料理を始めだすのではないかと、思っていらっしゃるのかも知れないな。

 確か調理実習メニューに”鮭のムニエル”があったので、それなら作れると思う。でもバターを使った料理自体、この世界では目新しくもなんともないんで、どうしよう、作るかどうしようか迷っちゃうな。

 まあ、魚自体が久しく食べられていない食材だから、何を作っても珍しく思って下さるかも知れないけれど……

 とにかく、クラウス先生はめちゃ食にはこだわりがあることは私も知っている。

 以前、私が勝手に料理して、こっちの世界的新メニューを作っちゃうと、武術の稽古で”イヤミな太刀筋”になり、ルーク兄様やルシフェルに迷惑をかけちゃったことがあったんだよね。なのでもし作るなら、クラウス先生には食べてもらわないといけないな。


「クラウス先生、わかりました。もし何かお魚メニューを考えついたら、ぜひ先生もご試食下さいね!」


 私は満面の笑みでそう言った。

 でもクラウス先生は喜ばれるわけでもなく、あまり私のほうを見て下さらない。


「……そういう意味ではないのですが……」


 と、小さく呟かれる。


 あれ、違ったのか。じゃあ、いったいなんだろう?


 って私が不思議に思っていると、クラウス先生はすかさず「とにかく、魔力奉納順番の列に並びましょう」と仰って、私の背中を優しく押された。


 まあ、いいや。もしも私に伝えたいことがあるのなら、いつものように、いつか、仰って下さるんだろう。


 そんなことを考えながら、クラウス先生に促されるまま、でも横目で、クラウス先生の耳ちょっと赤いなあとか思いながら、一枚岩のほうへ向かった。

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