七大悪魔アザゼル
「私は七大悪魔、アザゼルだ」
……ああ、やっぱり、傲慢の七大悪魔、アザゼルだった。そして前回同様、姿かたちは一切見えない。私の脳に、直接語りかけてくる。
アザゼルは言う。
「七大悪魔はサタン様の意思を強く受け継ぐ者。サタン様は、人を罪へと誘惑する御方。そして彼の御方は、食欲、肉欲、名声欲などあらゆる欲を使い、人々を誘惑する魔王……」
これも、前の時と同じだ。アスモダイが言ってた。七大悪魔登場時の枕詞かなんかだろうか。
で、今回は”傲慢”で、私を貪汚落ちさせようというわけか。
……正直、傲慢なやつは、慣れてるところがある。
前世の母親と言えば、私を生まれながらに虐待して、「お前のせいで! お前が悪い!」って、めっちゃ上から目線で見下して、私を抑圧してたんで、悲しいけれど、ある程度耐性があるとは思う。
とは言っても、先日あったイジメでは、上級悪魔たちがめちゃ上から目線で傲慢で、実際被害に遭うとやっぱり、自暴自棄になるほど辛いんだけど。
思念ではどうだろうか。
ただ、今も一枚岩の外では、皆んなが魔物と戦っている。私が早く魔物を退ければ退けるほど、みんなへの被害が最小限で済ますことができる。
だから、とにかく悪魔のささやきには乗せられず、頑張ろうと思った。
すると、アザゼルが脳に語りかけてきた。
「人間の虚栄心がいかに醜く、そしてその虚栄心を満たすために他人に向ける攻撃性がいかに野蛮で、罪を罪とも感じないその愚かさは悪魔であっても舌を巻くほど。そんな人間を助けるなど、これらを見れば心底バカバカしくなるだろう」
喋り方がちょっと落ち着いた感じなのは、元天使だからとかあるのかな? まあ、悪魔にも個性はあるとは思う。
にしても、落ち着いてるかなんか知らないけど、言ってることは、めちゃひどい。
醜い虚栄心を持ち、そのためには野蛮に人を攻撃、罪悪感を感じない様は、悪魔であっても舌を巻くほどだそうだ。
確か授業でアザゼルは、人間の虚栄心や攻撃性を煽って、めちゃ罪を犯させ、周りに被害を与え、周りもろとも貪汚に落とし、魔界に貢献しているという話を聞いた。
まあ、正直悪魔以上に欲深い人間、いると思う。前世限定だけど。こっちの世界だったらそういう人間は、すぐ貪汚落ちしちゃうだろうし。
ああ、悪魔が舌を巻くレベルの酷い人間の思念が、今から来るのか……
すごく憂鬱な気持ちになったけれど、でも、これは私しかできないことだ。なので私は腹を括った。
すると、数人の女子たちの姿が脳内に入ってきた。どうやら、地下アイドルしているらしい。でも、容姿は並みで、並みなだけならまだいいんだけど、恐ろしく禍々しいものを感じる女子たちだ。
こんなんが地下とはいえアイドルやってるなんて、本当終わってるなって思う。
で、こともあろうにその子たちの事務所は、その禍々しい子たちを推していて、プッシュに余念がない。同じ事務所には普通に可愛い子もいるのに、なんでよりによって、それなんだろう?
で見ていると、売り出してもらえない可愛い子は、ゴリ押しされてる子たちと一応仲良くしようとはするんだけど、近寄っても嘲笑ってるだけだ。まあ、見下してるんだろうというのは、良く分かった。
で、可愛い子はずっと無視されたり嘲笑われるんで、ゴリ押し女子たちと仲良くするのは諦めるんだけど、それで放っておけばいいのに、そのゴリ押し女子たち、妙な風俗案内メールとかめっちゃ送りつけ、その可愛い子に嫌がらせを始めだした。
いったい何だっていうんだろう。目障りで無視してたんなら、その可愛い子が近くに寄って来なくなって、かえって良かったんじゃないの?
自分より容姿がいい子を見下すことで優越感に浸れたのに、それができなくなって腹立たしいとか、そういうバカバカしい理由なんだろうか。
で、さらに見てみると、その事務所には他にも可愛い子たちがいて、やっぱり事務所の偉い人に取り入ろうとしてい子もいた。
で、そういう子には、事務所の偉い人とゴリ押し女子が一緒に、必死に枕営業を勧めていた。なるほど、ゴリ押しされたければ、取引先やプロヂューサーとかと寝ろっていうことらしい。
でも、ゴリ押し女子たちもその枕営業をしているかというと、それはなくて、あくまで可愛い子限定で枕営業させるそうだ。
まあ、取引先やらプロヂューサーも、お金持ってるだろうし、容姿並みの禍々しい子の相手は、いくら若くてもイヤに違いない。
で、可愛かったり美人な子限定で、夢のためにと枕営業などのイヤなことをやらせていた。
でも最初の可愛い子は、ゴリ押し女子と仲良くするのも止めたし、事務所の偉い人にもゴマすりをしなかったので、妙な嫌がらせ攻撃の対象になったようだ。
どうやら、可愛いのに枕営業しなかったら、ゴリ押し女子たちに嫌がらせをさせるシステムになっているらしい。
なるほどね、皆んなグルってやつだ。
で、そのゴリ押し女子たちは異常に仲間意識が強く、「仲間って大切だよね」と、しきりに言っている。仲間とは名ばかりで、自分と一緒に悪巧みしたり、意のままに動かなければイジメたり嫌がらせをするだけの、下らない派閥に過ぎないのだけど。実際は、”仲間意識”という名の”仲間はずれ”よね、あれ。
そして、ゴリ押し女子の下には容姿がそんなでもない子がいて、その子たちはゴリ押し女子の腰ぎんちゃくのようだ。どうやらそのゴリ押し女子派閥を、大きく見せないといけないとかで腰ぎんちゃく部隊もいる。一応事務所からも、ゴリ押し女子ほどではないけれど、それなりに恩恵を受けて、軽くプッシュはされていた。
で、縦関係異常に酷いし、ゴリ押し女子たちは『傲慢』そのものだった。
また、夢を餌に枕営業を強いるのも完全なパワハラ、『傲慢』そのものだ。
大体、アイドルになる才能は、一番は可愛さと私は思ってるけど、才能ある子にそれをさせないって、いったいどういうことなんかな?
これ、普通の企業だったら、仕事できる人間に、仕事させず取引先に枕接待させ、仕事できない人間に仕事させるってなるけど、そんなこと普通、有り得ないと思う。
仕事なんてできなくても、枕営業特攻隊から取引先の弱み握れば金取れるんで、それでいいってことなんかな?
まあ、今どきの普通の企業は、お歳暮すら断わらないといけないくらいだし、枕接待なんてもっての外、そんなことでお金なんて回って来ないし、こんな方法取れるわけないけれど、ある一部の芸能界なら、それがあるっていうことなのか……
なんて古い体質、なんて傲慢な人間が蔓延る事務所、取引先やプロヂューサーなどの弱みを握り、罪を共有し、持ちつ持たれつってことで仕事を得る、こんな悪徳芸能事務所がのさばってるなんて、ホント終わってんな。
芸能界を芸能で活性化どころか、妙なものをゴリ押しして迷惑千万、仲間意識と言う名の仲間外れに、おまけに肉欲にまみれで傲慢の極み……これはホントやってること、悪魔以上だ。
事務所の偉い人に言われて、強引に押されて、枕接待に応じてしまい、後悔の念に苛まれ、泣いている女の子の思念が入って来る。
あんな十代の女の子に、大の大人がよってたかって言いくるめて、本当に、酷いと思う。
そして、自分の意に反してそのままAV落ちする子とかも、いた……。
私は、あまりの酷い思念に吐き気がした。闇の感情が溢れてきて、器がもう耐えきれない。一所懸命、広げないと……
私は心落ち着けて、魔力の器を広げ、正常な魔力エネルギーへと落とし込んで行った。
一気に片付けよう。これ以上はもう、耐えられない……!
私は、今溜まっている魔力エネルギーを一気に叩きつけるかのように、一枚岩へと一気に注ぎ込んだ。
あんな腹立つ気持ち悪い奴らの思念見せられて、それと同じレベルに落とされるとか、マジで耐えられない、だから私は絶対に、貪汚落ちしない、絶対に!




