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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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おもしろ義弟に一矢報いたい

「いやあ、俺ん家に突然養女が来るって言うんでどんな子かと心配したけど、こりゃあ毎日が楽しくなりそうだ。

 俺はルシフェル、数ヶ月弟らしいけど、王立学院でも同じ学年だし、呼び方はルシフェルでいいよな。俺もソフィーって呼ぶんで」


 と言って、ルシフェルはニカって笑った。

 その笑顔はめちゃカッコ良くて愛くるしくてステキなんだけど、その、さっきから私のこと大笑いしたり、『お前』とか何か、いろいろちょっと心配?


 私が不安な顔をしていたら、、ルーク兄様が、「根は悪い奴ではない」とすかさずフォローされた。

 するとまたルシフェルが、「顔も悪くないけどな」とか言い出して、そしたら今度は養母様が、

「ですから貴方は、根も顔も特に悪くありませんけれど、とにかく口が悪いのですわ。全ての欠点が、口に集結しています」

 と、トドメを刺された。


 でもルシフェルは、まだ負けてなくて、

「母上作のノアの方舟に、穴開けてやる。で、俺は救命ボートで逃げてやる」

 とか子供っぽいことのたまうと、

「貴方をノアの方舟には乗せません。どんなときでも陽気で楽天的、かつ自由奔放な貴方には、大船すらも窮屈でしょうし、大海に放り出したほうが余程自由に着の身着のまま過ごせるでしょう」

 とあっさり却下された。


 間に挟まれているルーク兄様は「まあまあ」とか言いながら二人を取り成している。そんな光景を見て、私はとても楽しくなってきて、思わずクスッと笑ってしまった。

 クラウス先生のほうを見ると、先生も、「大丈夫だよ」って感じで優しく微笑んで下さる。私は大きく頷いた。


 するとルシフェルは、右手を自分のおでこの辺りに持っていって、ピースではないけど人差し指と中指だけ揃えて他の指は握り、

「っちゅうわけだから、よろしくな、ソフィー!」

 と言って、右手を『ヨロシク』っていうか、『よお!』って挨拶する感じで、チャッって前後に動かした。


 うう、めちゃカッコ良くて…… ちょっと腹立つなあ。


 大体お顔も養母様似で美しいし、でも、男子だからか、養父様にも少し似ているのか分かんないけど、男らしさもあり、なんか色々ズルいって思っちゃった。

 なんで、ちょっと仕返しじゃないけど、ひと言面白いこと言えないかなぁって思って、少しだけ、皮肉を言ってみた。


「私は養母様のノアの方舟も楽しみですが、ルシフェルの救命ボートにも乗ってみたいです。もちろん、救命胴衣と浮き輪を体に縛り付けて。よろしくお願いしますね、ルシフェル」

 私が笑顔でそう言うと、ルシフェルはお目々ぱちぱちしつつ、

「俺は大船にも穴開けられるんだから、浮き輪に穴開けるのなんて造作もないこと。沈むときは、一緒だからな」

 と、どこか明明後日のほうを向いて、言った。


 おお、あの表情から察するに、かなりの動揺が伺える? 一矢報いることができたようだ!

 私は納得の表情で、大きく頷いた。


 っていうかさ、まだ挨拶しかしてないのに、なんていうの、私のこの変わりようは?

 前向きな気持ち?っていうか、失敗して恥ずかしくても何とか挨拶頑張ろうという気持ちになれたり、養母様の光の一族流お気遣い?もあってか緊張を克服できたり、最後にはルシフェルに一矢報いようとまでするなんて、今までの私には、全く想像もできなかったことだ。

 大体この応接室に入ってきた時から、四人のオーラ、凄かったもん。あの眩いばかりのオーラに私も早速当てられて、もう既に光の一族の影響を受けているのかも知れない。


 あとは、守護天使らしい大天使ウリエルの影響とかもあるのかな? 問題解決とか聡明とか、頭良さそうな感じのものを司っていた気がするんで、ウリエルのご加護とかもあったりして。

 何にしても、今後がとても楽しみだなって思った。

 ウリエルと共に、こちらのご家族の一員として日々過ごせたら、私も幸せな気持ちで、毎日楽しく過ごせるのかも知れない。

 何だかとても嬉しくなってきた。


「これから我が家は、なお一層賑やかになりそうだ」


 と目を細めて仰る養父様、愛おしく大切なものを見るかのように、ご家族や私をご覧になる様子は、とてもとても眩しくて、私も心が暖かくなった。

 


 それから養母様は、私付きになるというメイドのドミを紹介して下さった。

 ドミは二十歳くらいの女性で、落ち着いた雰囲気を醸し出し、できる女性って感じがする。私が緊張した面持ちで「よろしくお願いします」と言うと、

「誠心誠意、お仕えして参ります、ソフィー様」

 と言って深々とお辞儀し、穏やかに微笑んだ。


 や、やっぱり様呼ばわりが慣れなくて恥ずかしいんだけど、でも、優しそうなお姉さんで良かったな……


 その後メイドのドミが私を部屋まで案内してくれるということになって、その場はお開きとなった。


 クラウス先生はお帰りになる前に、

「早速明日から授業を始めますので、今日はゆっくり体を休めておいて下さい」

 と仰って、優しく微笑み、帰って行かれた。


 明日から授業か。ちょっと不安だけど、クラウス先生を筆頭に皆さん優しいから、大丈夫かな?

 それにしてもクラウス先生、無駄に品がおありだなあ。

 黒に近い紺色である髪色や瞳の色、そして片眼鏡が少し慎み深い雰囲気もあるけど、王の側近なので貴族だと思う。高位の貴族に違いないなって、ちょっと思っちゃった。


 私は、家族の皆さまにご挨拶をしてから応接室を出て、ドミに私の部屋に連れて行ってもらった。


 部屋に入ると視界に入ったのは、ピンク色が基調のめちゃ可愛らしい、女の子のお部屋って感じの部屋だった。

 ピンクのカーテンに、ベッドの天蓋もピンクのレース、執務机の上にはピンクの薔薇が生けられた花瓶も置いてあった。

 私はあまりの可愛らしさに驚いて、突っ立っていると、ドミが「ソフィー様のお部屋ですので、どうぞお寛ぎ下さいませ」と言って、部屋の中に入るよう勧めた。


 とりあえず、テーブルがあったので、そこの椅子に座ってみた。

 その椅子も肘掛け付いてて、彫り細工が見事で凄く豪華そう。ついでにテーブルの脚の部分を覗き込んで見てみると、これまた彫り細工が見事な、作りもどっしりしっかりとした感じの脚だった。


 アニメの世界でしか見たことなかったけど、色々細かいところ、実際見ると、本当凝ってるなあ……


 って感心してたんだけど、よくよく考えたら貴族の令嬢がテーブルの下覗き込んだりしないなって思い、ヤバいヤバいと思って、唐突に背筋でも伸ばしてみた。


 …… まあ。今さらかも知れないけど。


 と、私が田舎もん丸出しの行動をしていると、ドミがお茶を入れてくれた。


 …… おいしい、心落ち着くな。


 私がひと呼吸吐くと、ドミが今日の予定とか、色々説明してくれた。


「この後のディナーでございますが、ボールドウィン侯爵家の皆さまとご一緒致しますので、食堂へ参ります。お時間になりましたらまたお迎えに上がりますので、それまではこちらのお部屋でお寛ぎ下さいませ。

 基本的には、毎日ディナーはボールドウィン侯爵家の皆さまと食堂で取って頂き、朝食と昼食はこちらのお部屋で取って頂きます。

 また、毎週日曜日の朝に礼拝がございます。ボールドウィン侯爵家敷地内に教会があり、そちらで礼拝を行うのですが、それはまた日曜日の朝にご案内致します。

 それでは私はこれで失礼致します。何かご用ございましたら、遠慮なくベルでお呼び下さいませ」


 そう言って、ドミは執務机の上にあったベルを持ってきてくれた。

 一種の魔術具らしく、ドミがどの部屋にいても、ベルが聞こえるようになっているらしい。魔術具って便利だなって思った。

 あと、礼拝か。前世では宗教とは無縁の生活をしてたんで、異世界に来たって感じするな。


「礼拝とは、何か難しいことするのでしょうか」


 私がドミに質問すると、ドミが少し私を労うような感じで答えてくれる。


「ソフィー様は、現在記憶を失われた状態であるとお伺いしております。礼拝は平民の間でも、普及率が高いのですけれど……」


 普及率が高い、ということは、全員じゃないってことよね。

 正直、私が育ったあの環境、あの虐待母親が私を礼拝に連れて行ってたとは、とても思えない。記憶云々はこの件に関しては全く関係ない話とは思うけれど、まあ、ドミにわざわざ説明する必要もないか。記憶喪失で話がまとまってるなら、そっちのほうが、楽だしね。

 ドミはさらに話を続ける。


「難しいことは何もございませんよ。各家庭で行われる礼拝は、極々簡易的なもの。司祭が来て儀式を執り行い、説教を説くこともございません。ただ祭壇に向かって祈り、日々の感謝を神に伝えるというものになります。祈りの言葉は私のあとについて仰って頂ければ、問題ありません」


 なるほど。そんなに難しそうじゃないのでちょっと安心した。


 それと、メイドさんは基本的には主人の側にいるんだけど、主人のその日のスケジュールをキチンと把握して、厨房に食事の指示を出したり、その日必要な衣装や道具などを揃えたり、色々掃除する場所もあって四六時中一緒にいる訳ではないそうだ。もちろん、私が席を外して欲しいと言えば、それに従うし、その他要望があれば、何でも相談して欲しいと言ってくれた。

 同じ女性で少しお姉さんのドミ、尋ねたら色々こっちの世界のこと、教えてくれるかも知れない。一応記憶喪失設定のはずだし…… っていうか、こっちの世界での記憶は何にもないので、その設定でいいと思うんだけどね、変なこと質問しても、きっと大丈夫と思う。

 クラウス先生やボールドウィン侯爵家の皆さまには、やっぱりまだ気軽に質問できないんだよね、やっぱり緊張しちゃうっていうか。早く皆さまと馴染みたいと思いつつ、そのためにもむしろ色々ドミに教えてもらいたいなって思った。


「私は平民街出身で、記憶も曖昧、特に貴族の生活については分からないことだらけです。色々教えて下さると嬉しいです。今後とも、よろしくお願いします」


 私がそう言うと、ドミは深々とお辞儀をして、私に敬意を表した。


「必ずご期待に添えるよう、精一杯務めて参ります。こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」


 そう言った後、体勢を直してから「それでは、私はこれで失礼致します。ごゆっくりお寛ぎ下さいませ」と言って微笑み、部屋から出て行った。


 すごい。『精一杯務めて参ります』とか言われるの、生まれて初めてだ。あまりにも驚いて、目をぱちぱちさせるだけで、何にも声かけられなかった。


 にしても、ドミといい、王宮のメイドさんたちといい、本当によく躾けられている。

 でもそれだけじゃなくて、ボールドウィン侯爵家の皆さまを筆頭に、皆さんホントいい人たちばかりだ。

 もちろん、ボールドウィン侯爵家の皆さまも私がモーゼの杖所持者というのは知ってるし、王命っていうのもあり、私に良くして下さる部分もあるだろうけれど。


 でもやっぱり、人の好意ってまだ本当に慣れないな。驚いて目をぱちぱちさせるだけじゃなくって、早く慣れて、皆さんに自然と感謝を表せるようになりたいな……


 そんなことを色々と考えながら、ドミの入れてくれたお茶を最後まで飲み干した。


 それからというもの、私はベッドの上でゴロゴロし、クラウス先生の言いつけをしっかり過ぎるくらい守りに守って体を休めていたら、あっという間にディナーの時間になって、ドミが呼びに来てくれた。


 うう、ディナーか。緊張MAXで、料理の味とかしないんだろうなあとか思いながら、ドミの後ろにつき、食堂までの道のりを歩いた。


 廊下の絨毯、宮殿もそうだったけどめちゃふかふかで、一流貴族のお屋敷もホント豪華だなあとか色々感動しつつ、ディナーでは粗相がないことを心から願いつつ、でもやっぱりこの廊下の絨毯、寝転んだら気持ち良さそうだなあとか、取り留めのないことをツラツラ妄想していたら、ふかふか絨毯に、思わずつまづいてしまった。

 ドミが慌てて「大丈夫ですか?」と体を支えてくれるんだけど、本当恥ずかしいったらないわ。ディナーで粗相どころか、その前からもう粗相だよ。とか内心思いつつ、でもドミにこれ以上気を使わせるわけには行かないので、「大丈夫です、ごめんなさい」と簡単に言って立ち上がり、気を取り直して食堂に向かった。


 ドミが、食堂の大きな扉を開けてくれると、いわゆるアニメでよく見る貴族チックな光景が目に入った。長いテーブルが向かい合わせで置いてあって、『コの字』になるように真正面にもテーブルが置いてある。その真正面はいわゆるお誕生日席……


 って、あれ、もう養父様がお誕生日席に着いていらっしゃる?

 そして、長テーブルの右側には養母様、左側にはルーク兄様とルシフェルが並んで座っている。

 え、ちょっと待って? 私、来るの遅くなかった?


 私は不安で恐る恐るドミを見ると、ドミは私の言いたいことが分かったようで、

「ソフィー様、ご安心下さいませ。今日はソフィー様の歓迎会兼ねてのディナーでございますので、一番最後にお連れするようにと奥様より申しつけられております」


 そう言って私を養母様の隣の席まで案内した。

 私はドレスのスカートを両手で掴んで深々とお辞儀した。


「遅くなってしまい申し訳ございません。この度は、私の歓迎会までして頂き本当にありがとうございます」


 と皆さまに向けて言って、給仕人に椅子を引いてもらい、席に着いた。

 そして、隣に座っている養母様がニッコリ微笑んで話しかけて下さる。


「ソフィー、構いませんのよ、私がそう計らいましたの。それより、今日のディナーは趣向を凝らしておりますのよ。楽しみにしていてね」


 と愉快そうにお話になった。


 私は「とても楽しみです」と笑顔で答え、養父様やルーク兄様、そしてルシフェルと順番に見た。養父様とルーク兄様は穏やかな笑顔で私を出迎えて下さっている。


 ああ、お二人ともカッコいい、ホント見惚れちゃうな……


 ルシフェルはというと、また右手を自分のおでこの辺りに持っていって、人差し指と中指だけ揃えて他の指は握り、言葉は出さないけど『よお!』感じで、チャッって前後に動かした。


 いや、キザ何だけどさあ、いちいちカッコいいんだよね、ホント。


 皆さまカッコ良くいらっしゃるんで、恥ずかしくなってきて、やっぱり思わず俯いてしまう。

 まあ、慣れるまでは仕方ないかな。そういえば、美人は三日で見慣れるっていう言葉聞いたことあるけど、イケメンは三日で見慣れるのかな?


 とか、また取り留めもないこと妄想しつつ、でもまだ恥ずかしくて俯いていると、養父様が乾杯の音頭を取って下さった。


「神と王族に仕える我がボールドウィン侯爵家は、モーゼの杖所持者であるソフィーを養女として迎え、心より歓迎する。乾杯!」

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