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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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イルスガウディム山の思念……

「ソフィー様、前へ!」


 クラウス先生が私に声をかけられる。一枚岩の端の辺りに着いたのが分かった。すごい黒くて時々紫色がちらほら見える貪汚の瘴気が視界に入る。

 私が一枚岩の上に上がろうと一歩前に出ると、遠くの方から声が聞こえた。


「キマイラだ! キマイラアグリネスが現れたぞ!」


 え? キマイラアグリネスって、キマイラの最上位種じゃなかったっけ?

 私は先日キマイラインジェンスとは対峙したけど、結構強かった。

 一体だけなんだろうか、何体もいるんだろうか、他にも別に強い魔物がいるんだろうか……?

 私が歩みを思わず止めてしまうと、クラウス先生が切羽詰まった感じで、


「ソフィー様、お早く! こちらのことは我々にお任せください!」


 と、魔物を薙ぎ払いながら仰るんで、私がここにいては余計に邪魔と思い、意を決して一枚岩の上に、上がった。



 貪汚の瘴気の中は、瘴気が体にまとわりついて、すごく気持ち悪いし、恐ろしい。

 なんていうのかな、感覚的には湿度めちゃ高すぎて、体がべたべたするような、そんな感覚に近いかも知れない。おまけに息苦しいし、みたいな。

 そして、例によって例のごとく、前回同様、残酷極まりない映像、音声、人の思念が私の脳に一気に入ってきた。


 また前回のエレガンドゥード山で見た思念、モデルの撮影と騙して無理やりAVに出演させている思念もまだあるな……なんでだろう、色欲は前回で、終わったはずなのに。

 ひょっとして、『傲慢』かな。

 傲慢は端的に言うと、おごりたかぶって人を見くだすことだと教わった。

 まああれも、立場にもの言わせて上から怒鳴り散らし、相手を抑圧して有無を言わせないように持っていくのは完全にパワハラだし、もしも傲慢なら、これが入るのは当然か……でも、ホント見てられないからイヤなんだよね。時々夢に見るもん。

 特に、私が前世で母親から有無を言わせず謝罪させられて、母親は傲慢の極みだったから、それもついでに思い出してフラッシュバックするし、未だに悩まされている。


 と思ったら、前世で私が虐待されてる思念になった。これも、イラエ山で見せられた思念と同じだ。

 ……自分が、自分の親から殴られ蹴られ、暴言を吐かれている様を見るのは、本当に見るに堪えない。

 目を閉じて拒絶できるなら、いくらでもするけれど、脳に直接入って来るのでそれもできない。私は苦悩に喘いで、頭を抱えるしかなかった。


 すると、今度は前世の酒乱父親が前世の母親に平手打ちをし、金をせびっている思念になった。

 暴力はさほどでもないけれど(あくまで私と比べて)、暴言が甚だしい。なんか、家だけじゃなくて、外出先でも大声で暴言を吐いていたようだ。

 私はこんな奴が父親だというだけで、見ているだけで恥ずかしいんだけど、この父親は、こんなに女を自分の意のままに操れるのを、外で見せびらかすことができて、実に誇らしい顔をしている。こいつ、ホント頭おかしいんだな。

 で、行きつけの飲み屋では謎のように愛妻家ぶってるし、流行りの純愛ものドラマの話になると大絶賛し、自分がいかに女性に一途なのか謎アピール、行動が完全に破綻している。

 本音では男尊女卑なんだけど、でも人格者ぶりたいとか、人格者ぶって人から褒められたり崇められたいみたいな思想でも、あんのかな。

 それとも、自分が傲慢で女を虐げてるのがバレたら体裁悪いんで、愛妻家ぶって予防線でも張ってんのかな。

 それでいて、道端で知らない人の前で延々怒鳴り散らしているし、自分の知り合いの前でも怒鳴り散らして誇らしくなってるし。自分はこんなにも女の手綱を握れているって、評価でもされたいんだろうか。それとも、女の手綱を握るにはこういう風にするんだって、披露してるんだろうか? ただのモラハラ男のくせして。


 家での父親しか今まで知らなかったけど、外での父親の行動を見ると、ホント支離滅裂&欲の塊、マジで終わってるなって思った。

 っていうか、男尊女卑なくせして『女性大切にしてます』みたいな顔したり、女尊男卑を主張したりする男が、正直一番面倒だ。なぜなら、男尊女卑思想で、男尊女卑の行動をしている男に対しては、『それはいけません』て注意すればいいけれど、女尊男卑を声高に主張して、男尊女卑する男とかって、「こんだけ女性が優遇されて、俺かわいそう」とか言って、なんちゃって女尊男卑を隠れ蓑に、男尊女卑を継続しようとする。

 ひょっとして、あからさまな男尊女卑だと注意されるんで、苦肉の策で、被害者ぶることによる男尊女卑続行作戦に出てるんだろうか。

 他の男のモラハラ思念では、女はバカだからという理由で、ひたすら怒鳴り続け、女性の希望や前向きな気持ちをペチャンコに潰しているのもある……これは、男女問わず、若いからという理由でバカにして、立場を笠に着て怒鳴り散らし、やる気を削いで、言うこと聞かせているっていう思念もあるな。

 あとは、変な男女平等思想の男がいるな……とは言ってもどうやら実態は、男女平等を隠れ蓑にした、男尊女卑男のようだ。

 男女の給与格差が日本では先進国の中でも最下位を争っていて、女性のほうが三割くらい低いんだけど、何でもかんでも割り勘で、飲み会でも飲んで食べる量は男のほうが多いのにそれも割り勘で、男女平等を盾に取った一種の男尊女卑だよね、これも。

 またある思念では、女が能力がないのに会社で昇進したとか言ってる男がいるけれど、その能力がないっていうのは、誰視点なんだろ? 言ってる男の能力がないからそう思うのかも知れないし、抜擢した上司そのものが能力がないから能力のない女を選んだのかも知れない。

 男女問わず能力がある人間が出世すべきだけれど、その判定、誰がするんだっていう視点がないのにわーわー騒いだって無意味と思う。

 能力のない……っていうか、それこそ今はパワハラおっさん上司が多いから、そんなおっさんに選ばれる女は碌でもないのが多くて、女が男をパワハラするニュースまで出てくる始末。でも、そんなパワハラおっさんに選ばれるのは、男女問わず最悪なんで、そんな昭和の男の縦社会を打破すべく女性を登用を多くしよう、みたいな考えもひとつあるんだけど、それを分かっていない人が多すぎる。

 米ハーバード大学のロザベス・モス・カンター教授の研究では、特定のグループの比率が「15%以下」だと、その人たちは“お飾り、象徴”になり、目立つが孤立する苦しみを味わうとされている。「25%」でもまだ“マイノリティー”、「35%」を超えて初めて組織の中で公平な機会が得られるようになるという。

 公平な機会が与えられないから、パワハラおっさんが人事権持ってるし、男女問わずそのおっさんの腰ぎんちゃくしか出世できない縦社会なんだから、まずは本当に能力がある人が出世できるように環境を整えるのが一番なんだけどな。

 で、その突破口のひとつとして女性起用なんだけど、さすがに35%となると、パワハラおっさんの息がかかった女ばかりということにはならないと思う。元々学業や就活の面接では女性の方が優秀とかも言われてるんで、特に人材が不足ってことも、ならないんじゃないかな。仮に女性が35%でも、男性が残り65%なら、充分に多いと思うし、パワハラ昭和男が幅利かすより、風通しも良くなって、いいと思うんだけど。

組織の中で女性にとって公平な機会ということは、それは男性にとっても公平な機会ということなんだから。

 でも、思念に出てくる男たちは、私が女性だからだと思うけど、女性に対して忌諱感示す男がホント多い。

 その男たちに聞きたいわ。じゃあ、どうして欲しいんだって。

 女性が社会進出するくらいなら、パワハラおっさんに虐げられるほうが、マシなんかな?

 もちろん、これ以外にもパワハラおっさんを何とかする方法があれば良いんだけど、現状ないから今この状況な訳だし、おまけに中途半端な女性社会進出で、パワハラおっさん子飼いのパワハラ女しか出世できなくて、女性相手だとさらに反発もしづらい時もあるかも知れないし、立場がさらに悪くなるかもしれないのに、男性は、ホントにそれでいいと思ってんのかな?

 もしくは、もし女性の大きな社会進出によって、お互いのチェック機能が果たされ社内が正常化し、能力ある人間が抜擢されるようになったとしても、結局自分が選ばれることはないんで、だったら男尊女卑のままでいいじゃん、とかって思ってんのかな?

 能力がないのは、誰なんだよって話だ。

 もちろん、今現状パワハラおっさんもいなくて、妙な接待やごますりも必要なく、男女問わず本当に優秀な人しか出世できない会社がもしあるんなら、それはそのままであって欲しいけど。


 こんな思念を見せつけられてるからだと思うけど、世の中ホント、傲慢なやつばっか、って思ってほとほとげんなりしつつ歩いていると、ようやくモーゼの杖の光が指す中心部に辿り着いた。

 私は、ゆっくりとひざまずき、両手を一枚岩の上についた。

 すると、聞いたことのない声が、脳内に響いてきた。

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