光の筋が! 神体山イルスガウディム山へ!
「ソフィー、体調の方は、もう大丈夫なのかい?」
うう、ルーク兄様はいつもホントお優しいなあ……お優しさが心に沁みて、じーんって来るな、本当に。
「はい、もうすっかり元気です。お気遣いありがとうございます」
私は満面の笑みでそう言った。するとルーク兄様もほっとされて、笑顔で頷かれた。
きっと、私が昨日養母様に呼ばれて、養父様も一緒にディナーしたこととかご存じだろうし、いろいろ気遣って下さってるんだなって、お気持ち有難いなって思った。
って、確かにそう思ったんだけど、隣にいるルシフェルはというと、
「エイデン先生が、今日の神体山解放は歌のご利益だって! 熱い思いが神に届いたとかマジちょーウケる! どっちかってゆーと、熱い思いがちょーウザいんで、神体山解放にでも行かせとくか、しゃあないなあって、思われたんじゃねーの!?」
とか言って、お腹抱えて笑っていた。
……えっと、せっかくルーク兄様の心に沁みるお気遣いが、今の発言でどっか消えてなくなっちゃったよ?
しかもルシフェル、結構ノリノリだったよね!?
まあ、ルシフェルの言ってることは、完全に的を射てるけどさ。私もそう思うよ。神様に体よくあしらわれたんだと、私も勝手にそう思っとこっと。
ルシフェルが大笑いしているのを見ると、私も何だか笑いが込み上げてきて、ルーク兄様を見ると、兄様も同じみたいで、思わず私たちも笑ってしまった。
まあ、心がじんわり暖かくなるのも、楽しくて笑っちゃうのも、どちらもできれば二度おいしいし、得した気分だよね、うん。
そんなことを考えていると、クラウス先生が若干頭痛に悩まされつつ、エイデン先生とアドリアーナ先生を連れて、私たちのところへやって来られた。
「……王命により騎士団は、イルスガウディム山の凱旋門のところで待機させております。それでは、参りましょうか」
「クラウス先生、少々お顔色が……」
私がここまで言うと、クラウス先生は私の言うことがすぐに分かったようで、片手で制止された。
「ソフィー様、お気遣いなく。まだまだ修行が足りないというだけのことですから」
そしてクラウス先生は小声で、「もう学期末だというのに、私はこれまで何をしていたのか」と、少しぼやいてらした。
いや、クラウス先生は全く悪くないですよ。正直、修行でなんとかなる範疇を超えていると思いますから。
エイデン先生に共感できるようになるにはきっと、ルシフェルみたいな天性の才能がいるんだろうなって、心からそう思った。
すると、エイデン先生が自信満々に仰った。
「我々の誇り高き歌を聞きましたか、ソフィー君? 感動で、打ちひしがれたことでしょう!」
……いやそれ、自分で言うことじゃないと思いますよ、エイデン先生?
私はなんて返事していいのか分からず、顔を引きつらせていると、アドリアーナ先生もやって来られて、
「打ちひしがれるなら、この”宝帯”にじゃございませんの? 今日という本番を迎え、あたくし感動もひとしお、この”宝帯”の素晴らしさを、しかとご覧入れますわ! ほほほほほほ」
と仰って、高らかに笑われた。
アドリアーナ先生、宝帯がリアル実戦で使えるのが、本当に嬉しいみたいだ。
……にしても、相変わらず露出が激しいな、胸が今にもこぼれ落ちそうですけど。
同じ女性にも関わらず、私は思わず目のやり場に困り、思わず明々後日のほうを向いてしまった。
すると、以前神体山解放に参加した、他の生徒の皆さんも何人か残って下さっている。
そして、その中に、例のリカルド様もいた。
……やっぱりなんか、因縁含んだ目で睨まれている気がする。
同じクラスのルシフェルのほうを見ると、ルーク兄様と談笑していて特に気にしている様子はない。
以前の私なら、ここで黙り込むことを選択するんだけど、異変を感じたら速攻相談するってお約束したので、ちょっとルシフェルに尋ねてみた。
「ねえ、あのリカルド様ってさ、ちょっと目つきが鋭いような、そんな気がするんだよね……」
と、私が睨まれているとは言わず、まずは客観的な意見を聞いてみようと思った。
すると、ルシフェルだけでなくルーク兄様も、「あ~」と仰った。何やら二人の間では、色々情報が交わされているみたいだ。
え、何それ、めちゃ教えて欲しいな。
でもルシフェルは、
「まあ、とりあえずあれだ。リカルドのことは、俺に任せといてくれたらいい」
と言って、いつもの、おでこに右手を持って行って”チャッ”ってするやつをして、ニカって笑った。
……もう、いちいちカッコいいから、腹立つんだよなあ、イケメンっぷりを披露されると、言いたいことも、言えなくなっちゃうんだよね。
と、ルシフェルのイケメンぶりを恨みつつ、ルーク兄様を見た。すると兄様も笑顔で頷いておられる。
まあ、お二人に任せておけば、大丈夫ってことでいいのかな……
ルシフェルはというと、何やら小声で「前の対抗戦でギャフンと言わせたのに、マジでしつこいわ、あいつ」などと言いながら、ぼやいているけれど、何か私の知らないところで事が進んでいるようだし、とりあえずしばらくは静観しようと思った。
クラウス先生と一緒に、皆んなでイルスガウディム山の凱旋門に着くと、騎士団の皆さまを従えた養父様が凛々しいお姿で立っていらっしゃった。
相変わらずカッコいいな、養父様は。私の養父なんだぞって、めちゃ自慢したくなる。
まあ、養父様がカッコいいのはもちろんなんだけど、それに加えて、騎士団の制服もステキなんで、カッコよさがさらにプラスアルファされてるとは思う。
白が基調でところどころに金色がアクセントっぽく施されていて、強そうなうえに、品があるというか。将来、ルーク兄様もルシフェルも、養父様の後を追って騎士団に入られると思うけれど、絶対に似合うと思うんだよなあ……
もちろん、今の制服姿も、めちゃカッコいいんだけどね。
……って、いけない、いけない、また思わず妄想してしまった。
クラウス先生を筆頭に、私たちは前回の神体山解放同様、光る山道を歩き、山頂を目指した。
まあ、光って見えるのは、私だけなんだけどね。
で、山道両サイドにある透明防御結界も健在で、前回同様多くの魔物たちが、体当たりしては、粉々になり、消えて行った。
で、これまた前回同様、ルシフェルが、
「”透明壁ビターン!” 神体山ご当地限定魔物ギャグ来た! いつ見ても面白いな!」
と言って、大笑いし始めた。
ルーク兄様が「笑ってばかりいないで、万一にも備えるんだ」と必死に窘められているけれど、ちょっとしばらくは笑いが止まらないように見える。
……ルシフェルといると、緊張感なんてのは存在ごと吹き飛んでっちゃうな。
大体、『神体山ご当地限定魔物ギャグ』って何よ? 初めて聞いたんですけど。
まあ、これからまたイヤな悪魔の思念と対峙しないといけないんで、ずっと張りつめているより、いいのかもしんないけどさ。
私は思わず笑いがこぼれてしまうと、そんな私にクラウス先生が、優しく話しかけて下さった。
「ソフィー様、体調の方は大丈夫でしょうか?」
「はい、おかげさまで。ありがとうございます」
「ご実家で養生されたのですね、良かったです。私も安心致しました」
クラウス先生が相変わらず美しカッコいい微笑みを向けて下さるんで、私は思わず見惚れてしまう。心のサプリだな、ホント。めちゃ頑張ろって、単純にそう思った。
ただ、見惚れつつも、やっぱりさっきの朝礼、なんであのエイデン先生に任されたのか、もう私本当に恥ずかしいの極みじゃんってマジで思ってしまったので、見惚れているのをついでに誤魔化しがてら、クラウス先生にお伺いしてみることにした。




