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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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エイデン先生の、妙ちくりん熱すぎる朝礼演説……

「大天使ウリエルよりモーゼの杖を賜った我らのソフィー君は、その使命と誇りと共に、我らのために立ち上がり、その拳を空へ、力強く高く、突き上げられたのだ! ソフィー君の守護天使になられた大天使ウリエルは、”炎”を司っている。君たちも、燃えたぎるソフィー君の心を感じるだろう? 熱い心は、何よりも大事なのである! 闘志を燃やせ、諸君! また、”予言”を司っている大天使ウリエルのお告げにより、熱い心で滝のような汗を流して学院内をくまなく捜索、適宜処置を施され、被害は最小限に済んだのだ! 我らも心を燃やし、ソフィー君と共に進もうではないか! そして、振り向くな!!」


 ……仰ってることが、全く意味分からない。


 おまけに、恥ずかしい単語がいっぱい並んでいるのだけは分かるので、穴があったら入りたいし、穴がなくても自分で掘って、入りたいくらいだ。

 大体、『拳を空へ、力強く高く、突き上げられたのだ!』って、そんなこと今まで私、したことありませんけど?

 それに、『滝のような汗を流し』たことも、『心を燃やし』たことも、今まで一度だってないし。

 にしても、ルシフェルが言ってた通りだな。『振り向くな!!』ってなんのこっちゃ。ホントに顔を下や後ろに向けたら激痛が走る仕様になっていて、常に上と前しか向けなくて、首の可動範囲、激狭に違いない。確信した。


 そして、なんだろう、周囲の目がめちゃ憐み深く感じるのは、気のせいだろうか?

 以前のように蔑むような視線は一切なくなったけれど、今のような憐みいっぱいの目も、めちゃこの場にいづらくなるな、ホント。


 私が少しばかし周りの様子を見ていると、光クラスの列にいるルシフェルと目があった。

 ルシフェルはいつものように、おでこのところで右手の人差し指と中指をそろえて“チャッ”ってしてから、その後どことなく、クククって笑っているような気がする。


 ……うう、他人事だと思って。まだ朝だけど、エイデン先生に向かって『ここに夕日に向かって走りたい生徒がいます。朝日でも可だそうです』って言って、ルシフェルを紹介したいくらいだ。


「これほどの熱く燃えたぎる思いを秘めたソフィー君ですから、王族同等扱いとなり、王族に庇護されべき尊い存在であるということは、炎が燃え盛るひらめきのように、君たちにも理解できたことと思う!」


 いえ、全く理解できませんけど?

 本当に、ちんぷんかんぷんです。

 周りの生徒たちを見ても呆然としていて、開いた口が塞がらないようだ。

 願わくば、エイデン先生の今日の話を、1パーセントも聞かないで欲しいなと思った。

 私、正直エイデン先生チックな『熱く燃えたぎる思いを秘めた』ことは、今まで一度だってないっていうのに、他の生徒の皆さんに変に誤解されても困ってしまう。もちろんエイデン先生は、今後このような事件が起きないようにと、熱く語っていらっしゃる部分もあるとは思うけれど、1パーセントも聞かなくても、充分過ぎるくらいに効果はあるなって思った。


 そして、他の先生方はどのような反応をされているのかなと思い、上手側の舞台の下にいらっしゃる先生方を見てみた。


 アドリアーナ先生は、首を傾げていらして、意味が全く分からないようだ。

 お気持ちスゴイ分かる。だって、私もイミフだもん。


 で、他の先生方はというと、クラウス先生を筆頭に、頭を抱えていらっしゃる。

 そりゃ頭抱えるよね。だって、理解不能だもん。


 それにしても今日エイデン先生を壇上に上がらせたのは、いったい誰なんだろ? もしクラウス先生と話す機会があれば、ぜひ問い正さなければならないと思った。

 今回の事件の内容は、他の先生が伝えるだけでもめちゃ恥ずかしいっていうのに、それがエイデン先生だなんて、恥ずかしさ一万倍、そしてさらに倍、公開処刑もんだもん、ホント。


 ひょっとしてこれが、一連の事件に対する私に与えられた罰とかなんだろうか? だとしたら、超予想外、奇想天外すぎる罰だな。

 だったらまあ、仕方ない、甘んじて受け入れるけれど、せめて事前には知らせて欲しかったな。心の準備が必要だよ、マジでこれ、ホント。


 でも、そんな私の憂いをよそに、エイデン先生はさらに気が大きくなられたようだ。


「未来~輝く~若人よ~振り向くな~振り向くなよ~その胸に~熱い炎~心を燃やせ~ハレルヤ~っ! ハ~レ~ル~ヤ~~~!!」


 って、よく分からない歌を歌い出し、エイデン先生は生徒たちに、「さあ、君たちも一緒に!」と煽られて、歌うことを促さ……いや、半ば強制され、講堂内は、謎の大合唱になった。


 エイデン先生は、至極ご満悦である。


 先生……あんな歌まで歌い出して、老後のセカンドライフとして吟遊詩人にでもなるおつもりなんだろうか?

 しかも、事実を1パーセントも伝えられない、吟遊詩人。

 ただの熱い男の歌じゃんそれ、みたいな。

 まあ、逆に新しいのかも知れないな。


 とにかく私は、エイデン先生にこのような謎過ぎる歌を歌わせないためにも、トラブル回避を光の一族の養女らしく、光の速さで行うことを、心新たに決意した。



 すると、突然私の右手にモーゼの杖が現れた。しかも、光の筋が一直線に伸び、壁の一点をそのまま突き抜けて行くかのように指している。


 ……来た、神体山解放だ!


 周りにいる生徒たちは、私が突然モーゼの杖を出し始めたので驚き、中には萎縮している生徒もいる。皆さん、ごめんね、あのエイデン先生の説明のあとじゃ、マジでホント、びびっちゃうよね。

 でも、光の筋が指している方向を見る生徒はいないので、光の筋はやはり見えていないようだ。

 クラウス先生のほうを見ると、先生も私の周りに起こる異変に気づかれたのか、目が合った瞬間、頷かれ、私のほうへ向かって来られた。

 私も、生徒の列から出て、クラウス先生のところへ向かう。


「ソフィー様、モーゼの杖を出されて、いったいどうされましたか?」

「クラウス先生、また光の筋が伸びて、あっちの方を指してるんです、あっち!」


 私は相変わらずテンパりながら、光が指しているほうを必死で指差すと、クラウス先生はそれで全てを悟られたかのように、仰った。


「承知いたしました。前回同様神体山解放の可能性が高いですね。ここで少しお待ち下さい」


 と仰った次の瞬間「ミコモーヴェレ」と唱え、一瞬のうちにいなくなってしまわれた。

 きっと神体山解放なら、王様にも同じ頃合いに”神の御意志”があると思うので、前回同様すぐに帰って来られると思うけど、どうかな……

 私は不安に思いながら、この場でクラウス先生を待つことにした。


 ……とは言っても、この謎が謎を呼ぶ大合唱の中だと、いったいどんな顔をして待ったらいいか、分かんないな。


 大合唱とは言っても、歌っているのは男子生徒がほとんどだ。

 きっと、あれだ。歌うのをサボっているのがバレたら、あとで夕日に向かって走らされるに違いない。

 ちなみに、ルシフェルは歌ってるのかなってふと見ると、


「前向け、上向け、ソイヤソイヤソイヤソイヤ!」


 とか言って、身振り手振りに加え、妙な相槌まで入れて、周りの爆笑をさらっていた。

 ちらっとエイデン先生を見ると、まるで模範生を見るかのように眩しそうにルシフェルをご覧になっている。

 ホントに二人だけ、別次元での親戚関係なんじゃないかな。


 そして、ルーク兄様はどこにいるのかなと二年生の列に目をやると、イケメン光オーラ放ちまくりなんで、すぐ見つけられた。

 ちなみにルーク兄様は歌ってなくて、私のほうを心配そうに見ていらっしゃった。クラウス先生も突如として消えられたし、何かが起こっていることは、兄様にもお分かりになるのだろう。右手を剣に添え、いつでも動く気満々のように見える。

 私はとりあえず、笑顔でしっかり頷いた。するとルーク兄様も同じように、笑顔で頷いて下さった。

 わあ、ルーク兄様とアイコンタクトできた、嬉しいな、とちょっぴり華やいだ気持ちでいると、クラウス先生が戻って来られた。

 前回同様めちゃ早すぎるな。ホント驚いちゃうよね。この速さはきっと、さすがの光の一族でも真っ青なんじゃないのかな? まあ、実際リアルに消えてるわけだし、光速は上回っているものと思われる。


「ソフィー様、ただいま戻りました」

 そんな私の驚きもよそに、クラウス先生は全く事も無げに涼しく仰った。

「王も、”神の御意志”を確認されました。今すぐイルスガウディム山へ神体山解放へ参りましょう!」

「はい!」


 私たちは頷きあうと、クラウス先生はそのまま壇上へと向かわれた。

 この妙な大合唱の中、凛々しいお姿で壇上に向かわれるクラウス先生のお姿は、はたから見てたらめちゃシュールだけど、頑張ってこの大合唱を制止してもらいたいな。心の中で、ひそかにエールを送っておこう。

 クラウス先生は壇上に登り、両手を上げて、大合唱を止めるよう、エイデン先生や生徒たちに合図された。エイデン先生もそれに合わせて片手をあげると、歌はピタリと止んだ。さすがエイデン先生、ちょっと指揮者みたいだな。よく生徒たちを躾けられていると思う。


「”神の御意志”により、これよりイルスガウディム山の神体山解放へ向かいます。前回エレガンドゥード山の神体山解放へ向かった者は、ここに残りなさい。その他の者は通常通りの予定を。ジョルジュ先生、私、エイデン先生、そしてアドリアーナ先生は前回同様神体山解放のメンバーです。私たちの代わりになる助手の先生を、すぐに手配し授業に向かわせて下さい」


 と、クラウス先生は簡潔に仰った。

 ジョルジュ先生は頷かれ、すぐさま退出される。そして、それに続くように、生徒たちも順番に、講堂から退出していった。

 壇上にいらっしゃるエイデン先生は、クラウス先生に意気揚々と話しかけられる。


「いやあ、これも”歌”のおかげでしょうかね? 我々、熱い気持ちで心を込めて歌いましたから。神に祈りが届いたのでしょう! ガハハハハ!」


 クラウス先生を見ると、こめかみに指を押し当て、頭痛を我慢していらっしゃるように見えた。

 クラウス先生、返事に困るだろうな……お気の毒に。

 って思っていると、ルーク兄様とルシフェルが私のところまで来て下さった。

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