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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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ルシフェルからのプレゼント

 取り出したのがハンカチなので、口元でも拭くのかなと思ったら、どうやら違うらしい。


「ソフィー……見ててみ?」


 片手にハンカチを被せるルシフェル、そして何やらちょっと、こねこねしている。

 いったい何してんのかなって不思議に思い、見ていると、ルシフェルがおもむろに、ハンカチを取った。

 すると、白いハトが数羽いきなり飛び出して、めちゃ驚くと共に、ルシフェルの華麗なマジック披露に、思わずいっぱい拍手してしまった。


「ルシフェル、すごいです! マジックとかできるんですね?」

「あれ、ソフィーは”ルシフェル・マジック”のこと、聞いてね?」


 ……いや、聞いてますけど、それは養母様の”セレスティア・マジック”のような、面白発言のことだと思ってたんだけど。


「”ルシフェル・マジック”は、ルシフェルの言動が面白いことについてだと聞いたことありますけど、リアルにマジックができるのは、全く知りませんでした」

「ああ、リアルマジックは昨日今日で、超付け焼刃だけど。ちょっと試しにやってみたら面白かったから、ソフィーに前でもやってみようと思って」


 そう言ってルシフェルが、ニカって笑ってくれた。


 ……ああ、そうか。私のことを励まそうと、準備をしてくれたのかも知れないな……


 私はルシフェルの心遣いをとても嬉しく思い、満面の笑みで返した。

「ルシフェル、とても楽しいです……でもあの鳩さんたち、どこにいったのかな? こんなところで出して大丈夫?」

「鳩は魔術具だから、魔法訓練施設の倉庫に自動で勝手に帰るんで大丈夫……ただ、ここで魔術具で遊んでいいのかは、知らないけど」

 と言って、茶目っ気たっぷりに笑った。


 もうルシフェル、しょうがないなあ。もし誰かに怒られたら、私が一緒に怒られてあげるからね。


 私はルシフェルの茶目っ気たっぷりの笑顔に、感謝の気持ちを込めて笑顔で応える。

 すると、ルシフェルはまた、ハンカチで手を隠した。

 私はドキドキして、ルシフェルの手と顔を交互に見た。ルシフェルはちょっと、得意気な顔をしている。


 ……次は、何が出てくるのかな……


 ハンカチをパッと取るルシフェル、見ると、ルシフェルの手が、なくなってる!?


 私はめちゃ驚いて、小さく悲鳴をあげてしまった。でも次の瞬間、

「なんちゃって~!」

 と言って、袖口ところから、手がパって出て来た。


 もー、めちゃ驚いちゃったじゃん!

 私がちょっと、むぅってしてると、ルシフェルは「成功、成功!」とか言って、超ご満悦だ。


「もう! ルシフェルの手がなくなっちゃったって思って、凄く驚きましたよ?」

「まあまあ、ソフィー、次はちゃんと出すから」

「ホントに?」

「マジで。これは超マジ」


 ルシフェルは、私がむぅっとしてることなんてお構いなしみたいな感じで、さらなるマジックを披露しようと、また自分の手にハンカチを被せた。


 次はちゃんと出すって言ってたけど、ルシフェルのことだもん、さらに肩透かしとかあるかも知れないな……


 私はルシフェルの顔を見る。

 おぉ? 先ほどとは違って、今は少し真剣な顔。

 でもこれが、逆に演技とかいうのも考えられるんで、やっぱり油断は禁物だな。

 私は、また手がなくなってる系の、今度なくなるなら次は指かな?とか妄想しつつ、ドキドキして待った。


 次の瞬間、ルシフェルがハンカチを取る。

 すると、ルシフェルの手に握られていたのは一輪の、ピンク色の薔薇だった。


 ……ああ、これはきっと”ソフィー・ロシャス”だ。


 今の季節、四季咲きの薔薇じゃないと手に入れられないし、そしてこの大輪、ボールドウィン侯爵家の門のところで見た薔薇と同じだ。

 ドミに教えてもらった。私の名前が冠された薔薇、”ソフィー・ロシャス”。


 私は、ゆっくりとルシフェルを見た。するとルシフェルは、今までに見たこともないような、少し恥ずかしがっているような顔で、言った。


「……やる」


 女子に薔薇を差し出す割には、言葉遣いがアレなんだけど、でもそこがまた、ルシフェルらしい。

 恥ずかしいんだろう。だって顔も、ほんのり赤いもん。


 ……私を、励まそうとしてくれてるんだな。


 私は、ルシフェルの心遣いに胸が熱くなって、感謝の気持ちいっぱいで、言った。

「ルシフェル……ありがとう」

 満面の笑みで薔薇を受け取る。

 香り高いことでも知られている”ソフィー・ロシャス”、受け取ったときに、ほんのり優しく香りがして、とても心が癒された。


「……まああれだ、この”ソフィー・ロシャス”、例の月面着陸なんとかのディナーの時にも出されたローズティーと同じものだし、思い出したらウケるんじゃねって思って」


 る、ルシフェル、さすがに男子に薔薇を渡されて、月面着陸は思い出さないよ?


 でもまあこの言い回しも、ルシフェル流の照れ隠しなんだろうなって思った。だって、耳も赤いもん。

 女性に薔薇とか、渡すの初めてなんだろうなあって思う。まあ、義姉ではあるけれど、恥ずかしいんだろうな、うん。将来のための、良い予行演習にもなっているだろう。


「でも、よく”ソフィー・ロシャス”って薔薇の名前まで知ってますね、養母様の影響かな? ひょっとして花言葉とかも、知ってたりするの?」


 するとルシフェルは、今まで見たことないくらい、顔が赤くなった。

 な、なんだろう??

 なんか、一応女性に渡すっていう体だから、ちょっとくらい調べたりしたのかなって、軽く訊いてみようって思っただけなんだけど……


「さ、さあ、知らねーけど?」


 いやいや、その動揺、その赤面、絶対知ってるよね?

 でも何で隠すんだろ?

 まあ、別にいいけどさ。さすがに口に出すのは、将来、本番のご令嬢のために、取ってあるのかも知れないな。

 これ以上、下衆の勘繰りはしないよ、うん。まあ、あとでこっそりドミに訊くけどね。


「さすがに花言葉までは分かんないよね、ごめん、ごめん」


 と笑顔で言って、義姉の懐の広さを、自分なりに披露しといた。

 でも、義姉の懐の広さはルシフェルには全く伝わらなかったようで、


「じゃあ俺、行くわ」


 とちょっとぶっきらぼうに言って、席を立ち、行ってしまった。

 私はとりあえずもう一度、ルシフェルの背中に「ルシフェル、ありがとね」って言ったら、ルシフェルの体が一瞬ピクってなったんだけど、聞こえているかどうかは、知らない。

 それにしても、いったい何だろうと、私は不思議に思いつつ、後ろ姿だけど、耳が赤いのは分かっちゃうなあとかぼんやり思いながら、ルシフェルを見送った。




 今日の授業は無事に終わり、部屋に帰ってきた。

 ドミは笑顔で迎えてくれる。そんなドミに私も笑顔になり、とりあえず手に持ってた薔薇”ソフィー・ロシャス”を渡して、生けてくれるように頼んだ。

 ドミは薔薇を生け終わってから、私の着替えを手伝いずつ、言う。


「”ソフィー・ロシャス”綺麗ですね。せっかくですので”ソフィー・ロシャス”のローズティー、飲まれますか?」


 と、めちゃ気の利いたこと言うので、私はその提案に全乗りした。


「ねえドミ、”ソフィー・ロシャス”に花言葉って、あるんですか?」


 お茶を準備しながらドミは答えてくれる。


「もちろん、ございます。 気品、感謝、暖かい心、可愛い人……などの意味が、ございますよ。あと、薔薇は本数でも花言葉があり、一輪の場合は、一目ぼれ、あなたしかいない……などがございます。実にロマンチックですねえ……春の訪れを感じます」


 ……は? 今、なんて??


 私は一瞬のうちに顔面が真っ赤になるのが分かった。


「あら、ソフィー様、お顔が赤うございますね?」


 ドミは少し驚きつつも、その直後、楽しそうに笑った。

 ヤバい、変に誤解されているかも知れない、ここは、弁解しておこう。


「私の名前がソフィーだからという理由で頂いたんですが、花言葉については知らないそうで、それで、ドミにちょっと訊いてみようと思ったんです」


 うん、一応嘘は言ってない。事実しか言ってないな、うん。あえて伝えていないことは、あるけれど。


「そうでしたか。まあ、花言葉には色んな意味がございますし、どの意味でもって差し上げられたのか、それこそソフィー様が仰るように、名前にちなんで、花言葉は関係なくという場合もございますでしょうし、今ここで何か決めつけてしまうのは、時期早々かもしれませんね」


 な、なるほど。花言葉にも色んな意味があるのか……


 あと、どんな意味があるのか分かんないけど、なんかドミに訊くのも躊躇うというか、逃げ道がなくなったらどうしよう、怖いとか色々考えが過っちゃって、結局それ以上のことは何も訊けなかった。


 でも、ドミはなんだか私を見て楽しそうだ。

 なんで楽しそうなのか、全くさっぱりちっとも分からない。


「ソフィー様は本当に、麗しいご容姿でいらっしゃいますから、惹かれる殿方は多いのではと思いますよ? 残念ながら私自身は遅きに失してしまいましたが、お話をお伺いすると若返った気持ちになりますので、よろしければまた、お話聞かせて下さいね」

 と言って、クスクス笑った。


 へ? 何が、『遅きに失してしまいました』だよ、めちゃ女盛り、どんぴしゃの年齢じゃん?

 私の話聞いてる暇があったら、ドミだってめちゃ美人なんだし、色々楽しくすればいいのに……いや、ひょっとしたら、主が不甲斐ないせいで、ドミにそのような心のゆとりを与えられていないのだろうか……

 なんか、ドミにこんなことを言わせているのは、だんだん私のせいな気がして、心に暗雲が立ち込めて来た。


 するとドミは、私の心を読めるようで、

「私は、ソフィー様にお仕えすること、非常にやりがいと誇りを持っておりますし、また何よりこのご時世、世界がまだまだ苦しい中で、私自身がそのような気持ちにはなれません。ですのでソフィー様は、ご心配頂かなくても大丈夫ですよ」

 そう言って、またクスクス笑った。


 ま、まあ確かにこのご時世もひとつの理由として、貴族の人数もめちゃ減ってるって聞いてるし、言ってることは、分かるけれどさ。

 そうか……では、ドミを含む若い男女のためにも、この世界を早く安定させないといけないんだな。

 私は、さらにヤル気が出たような気がした。


「ドミ、分かりました。私もこの世界のことは、非常に憂いを覚えております。今後も微力ながら頑張りますね」

 と私はめちゃ力強く言ってみる。

 でも、ドミにとって私の返事は、少しつまらなかったようだ。


 困ったなあ、やれやれっていうような表情で、

「もちろん私は世界のために尽力されるソフィー様を、全力でお支え致します。その中で、まあ、息抜きのひとつとして、また色んなお話を聞かせて下さると嬉しく思います」

 と言って退室の会釈をし、

「それでは失礼致します」

 と言って、とっとと出て行ってしまった。


 それにしても、私のなんちゃって恋バナモドキが息抜きとか、いったいどういう趣味してんだろ?

 ドミだって、女ざかりなのに……


 と、若干疑問に思いつつ、私はまた例によって例のごとく、ベットに突っ伏した。

 まあ、ドミの後のほうの話で顔真っ赤なのはいくぶん紛れたけれど、それにしても、あの花言葉……


『気品、感謝、暖かい心、可愛い人……などの意味が、ございますよ。あと、薔薇は本数でも花言葉があり、一輪の場合は、一目ぼれ、あなたしかいない……』


 いや、ルシフェルの顔や耳が赤かったのは、私の気のせいだな。もしくは空調のせいかも知れない。まあ、この世界での部屋を暖める方法が、空調と言う言葉であってるのかは、よく分かんないけど。


 それに、ルシフェル本人は、花言葉を知らないって言ってたしね。

 もしくは、尋ねられたのに知らなかったから、恥ずかしくて赤くなってたとか?

 うん、そっちだな、そうに違いない。


 私はそんなことを必死で考えながら、とりあえずじっとしてられなくて、ベッドの上を端から端までごろごろごろごろ、体力が尽きるまで、何度も往復した。

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