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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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ハンナ様と初めてのランチ

 おおっ! これは、ハンバーグではないか!!


 食堂のカウンターで昼食を受け取ると、そこにはめちゃ美味しそうなハンバーグがあって、思わず歓喜してしまった。


 王立学院入学前に、ルーク兄様のご指摘があり、クラウス先生にもその後ハンバーグを作って差し上げたんだけど、その流れから恐らく、その後宮廷料理となり、王宮と王立学院は目と鼻の先だから、すぐさま王立学院の食堂にも、取り入れられたんだろうな。

 ルーク兄様のご指摘、めちゃ素晴らしい! クラウス先生にも食べて頂いて良かった!


 ……まあ、あのクラウス先生の、『ブルー・スリー』の槍の勇者並みのイヤミな太刀筋の話は、少しお気の毒で、かつ、ちょっと笑えたんだけれどね。


 私たちは空いてる席に着き、早速あつあつのハンバーグランチを食べ始めた。


「わたくし、この『ハンバーグ』という料理は今日はじめて頂きましたが、すごく、お肉が柔らかくて美味しいですね。本当に驚きました。先日初めて食べたミートソースパスタというお料理も非常に美味しく頂きましたが、このハンバーグというお料理は、それを上回りますね。とても美味しいです」


 と、ハンナ様は顔を綻ばせて仰った。

 うん、確かにめちゃおいしい。

 私が作ったのはもっとこう塩コショウの味付けだけだったんで、その味が全面に出てたけれど、このハンバーグは宮廷料理人アレンジが入ったのか、少しだけスパイシーっていうか、何かの香辛料も使われているなって思った。

 プロのアレンジが入ると、さらに美味しくなるもんだな。

 私は、めちゃ満足って思いながら、頬張った。


「本当に美味しいですね。私もびっくりしました」

「それにしてもさすがは王立学院。今まで食べたことのないような最先端の料理もあって、あと少しで学期末、しばらくは食べられないと思うと、わたくし少し名残惜しく思ってしまいました」

「来年度がまた楽しみですね」


 私たちは笑顔になる。

 ボールドウィン侯爵家のディナーを思い出した。

 そう、やっぱり、笑顔で食べる食事は、なお一層美味しいよね……

 それにしてもハンナ様は、私が前世で経験した、調理実習メニューがお好みなのか。

 食堂のメニュー充実のためにも、また何かクラウス先生の前で作ってみてもいいのかな?

  残念ながら料理のレパートリーは調理実習レパートリーしかないし、あとはアニメで見た料理を、本当に再現可能なのか、試行錯誤するしか道はないのだけれど、何が作れるか、ちょっと春休みのうちに、また考えてみようか……

 あと、このように食堂で料理が再現されているということは、魔法ではなく平民の皆さんが、固いお肉を柔らかいミンチ肉にする術を、なんとか手に入れられたということで、それは本当に良かったなあと思うと同時に、料理名が『ハンバーグ』となっているのにも、めちゃ良かったなって思った、うん。


 にしても……

 私はハンバーグランチを食べながら、また意識飛んで妄想の世界に入ってしまう。

 ハンナ様もずっとおひとりでいらっしゃったんなら、ずっとひとりでいることについて、私と共感できることがあったり、何か感じていることとか、気づきみたいなの、おありだろうか。

 もちろんハンナ様はイジメられていたわけではないと思うし、上級悪魔に睨まれてイジメのターゲットが自分に向くのが怖い、その一心で、ただひたすらおひとりでいられただけだとは思うけれど。

 私はとにかく前世から悩んでいる”イジメ免罪符オーラ”について、何とかしたいと思っていて、こんなこと尋ねるのは変とは百も承知ながらも、ハンバーグが美味しすぎて気が大きくなったのか、会話の種として、思わず訊いてしまった。


「私、以前からの悩みなんですけれど、人から常に軽んじられるというか、イジメられっ子体質というか、なんか私を見たら、イジメずにはいられない人が結構いて、本当に困ってるんですよね……なんかそんな雰囲気、私、醸し出してますか?」


 と、暗に”イジメ免罪符オーラ”について、尋ねてみた。

 するとハンナ様は、少し驚かれてから、首を横に振られた。


「いいえ、そんな雰囲気は、一切ないです。ただ凄くお美しいし、おまけに雰囲気がお優しいので、そのお優しさにつけこんで、見下して、自分の下に置いてやろうと考える、気の強い人はいるかと思いますけど……」

「あの、私は優しくはないのですが、優しそうに見えますか?」


 そう言えば、ルーク兄様も私のこと、優しいとか言ってた気がする。

 いったいどっちが優しいんだか。ルーク兄様のほうがよほど優しい、ホント、優しいの代名詞だよって思うくらいなのに。

 それでもハンナ様は、私を、優しそうに見えると仰った。


「はい、お優しそうだし、あと、大人しそうにも見えます」

「正直、お優しく、大人しく、おまけにめちゃ可愛らしいのは、ハンナ様のほうだと思うのですけれど……」

 すると、ハンナ様は苦笑いされた。

「まあ、わたくしも、可愛らしいかは別として、人から見下されるタイプなのです……」

 そしてハンナ様は、昔、実際に体験されたことをお話して下さった。


 ハンナ様は男爵家で、貴族の中では一番位が低く、お金もあまりないという。

 それで、家庭教師を雇うお金もないため、そのような貴族は『王立学院プレスクール』みたいなのがあり、入学前に一カ月ほど通えるそうだ。

 で、そこでは上級悪魔のマケイラ・パーラーはいなかったけれど、その取り巻き女子のうち二人がいて、彼女たちは上級悪魔に取り入れられる前から既にもう高慢ちきで、ハンナ様はイジメに遭われていたそうだ。

 ああ、なるほど。ハンナ様が入学当初から教室の隅でひとりでいらしたのは、その女子たちに目をつけられたくないっていう理由も、あったんだな。


「ですので、ソフィー様の気持ちは、わたくしも本当に分かるんです。正直、見下しやすそうとか、見ていてイライラするとか、様々な印象を持たれるのはその方の勝手ですけれども、ですが、そのご自身の感情を判断基準に他人をイジメても良いとは、ならないと思っています。どんなに個性的な方がいらしても、それを理由にイジメて良い訳ないと、わたくしは信じています」


 と、しっかりした口調で仰った。

 ハンナ様、すごく大人しそうと思っていたけれど、芯は強いのかも知れないな。


「ですが、わたくしは思ったり、信じたりするだけで、行動に移せないので……。そして、それをイジメる側にも見破られているので、余計にターゲットにされるんだと思いますね」


 そう仰って、ハンナ様は困った顔をされた。

 ターゲット云々の話は少し置いておいて、ハンナ様の仰ること、ホントそうだなって思った。


 別に人間なんだし、合う合わないあるの当然だし、気に入らない人と無理に仲良くする必要はないけれど、だからといって、イジメて相手を攻撃していい理由にはならないし、無関係の人をイジメに加担させるよう唆して、人数増やして気にいらない人間をイジメる必要、ないよね。

 正直、気にいらない人をひとりで勝手に無視するのはイジメとは思わないけれど、「あいつムカつくから、一緒に無視しようぜ」って不特定多数を誘い出した時点で、それはイジメになると、私は思う。


 でもイジメっ子って、変なところでコミュ力高いから、皆んなを上手い具合に巻き込んでいくんだよね……

 私も前世で、大変だったもん……

 で、コミュ力高いイジメっ子は、大人含めてそのイジメっ子の味方だし、私が仮に被害を訴えたとしても、話なんて誰も聞いてくれない関係性が、既に出来上がってしまってるんだよね。

 そして、事なかれ主義が学校内では蔓延っているんで、イジメられっ子の訴えは、私の育った環境の前世では、聞いてもらえないのが、常だ。


 でも、この世界では違う。

 皆、むしろ私が黙っていたことに対して、凄く憤りを感じ、悲しみを感じていらした。

 だから私はその違いについて、今回の件でハッキリと理解したので、これからは全力で、異変を感じたらすぐさま皆んなに相談しに行く気満々だ。

 またそれと同時に、ハンナ様の今のお話を聞いて、”イジメ免罪符オーラ”を何とかするというよりか、私は元々気が強いとも思うんで、そういう気の強さをもっと前面に出したほうが、見下されにくいのかな? もっとバンバン言いたいこと言ったほうがいいのかな? とも思った。

 でも、加減が分からないしな……

 新たな悩みができてしまった。


 と眉間に皺を寄せていたら、「ソフィー様?」と、ハンナ様に声をかけられた。

 いけない、いけない、また自分の世界に入っていたな。


「いえ、すいません。ハンナ様のお話、とても勉強になりました。正直、ハンナ様の見た目がお優しそうだからと言って、見下してイジメてくる人たちの気持ち、私にはその思考回路、全く理解できませんが、お互い少しでも助け合えたらいいなあと思いました……ですが私では、その、このような事件を起こした張本人でもありますので、頼りにならないと思われても、仕方ありませんけれど……」


 私が俯き加減でボソボソ言うと、ハンナ様は笑顔で首を横に振られた。


「いいえ、とても心強いです……ただまあ、あのような事件があった後なので、人をイジメたら最悪下級悪魔になって死んでしまうことが分かった直後ですから、恐らくしばらくは、平穏に過ごせるのではないかと思っておりますけれど」


 まあ、確かにそれもそうか。

 あんな風に貪汚たんお落ちし下級悪魔となり、グロテスクに変貌し、言葉まで喋れなくなり、しまいには退治されてしまうのを目の当たりにして、それでも人をイジメたいと思う人は、しばらくは出てこないだろうと思う。


「それもまあ、そうですね。ずっと耐え忍んできましたので……ようやくこれで私も、ほっと心穏やかに日々過ごすことができる……心の春が訪れるなあという感じです」

「ソフィー様、春の訪れは、心だけではありませんよ。もう、三月ですから」


 と仰るハンナ様の笑顔がめちゃ可愛らしい。さらに春の訪れを感じちゃうな。

 そもそもハンナ様のお名前が、春っぽいように思うんだよね。お名前のハンナも日本語の”花”に似ているし、苗字のフルーリーもなんとなく、小さなお花が満開なイメージ?、おまけに髪色のピンクも可愛らしくお花らしさいっぱい、ハンナ様を見ていると、まんま”春”のようで、ホントなごんじゃうなあ……

 そして、もう三月に入ったということもあり、余計に春を感じてしまう。

 私は春の訪れを心から喜ばしく思い、私たちは微笑みあった。


 すると向こうの方から、”年中春男子”、もしくは”脳内四季咲き男子”の異名を持つ?ルシフェルの声が聞こえて来た。

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