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闇と光の物語 ~神が人間を創造した理由~  作者: synaria
転生から王立学院一年生
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ハンナ様が大泣きされて……

 ハンナ様は、ピンクのボブヘアとオレンジ色の瞳、そしてくりくりしたお目々が相変わらずとても可愛らしい。

 でも、そのくりくりお目々は涙で潤んでいて、今にも泣きだしそうだった。

 私は、ハンナ様に話しかけた。


「はい、何かご用でしょうか?」

「あの、わたくし、謝りたくて……」


 それだけ言うと、ハンナ様はそれ以上は言葉にならないようで、目からは涙がはらはらと、こぼれ落ちた。


「ハンナ様は、何も悪いことをされてないのですから、謝ると申されても……」


 私も困惑してしまう。しかもこんなに泣かれて……

 ハンナ様は泣きじゃくっていらっしゃって、必死で涙を拭ってらっしゃるけれど、まだ次の言葉が出てこないので、私はとりあえず、ハンナ様の背中をさすって待つことにした。

 ハンナ様は、私が背中をさするのと呼応するかのように、頷かれて、少しずつ話始められた。


 今まで、ずっと無視して悪かった、

 本当は話しかけたかったけれど、マケイラ様たちが怖くて、とても話しかけられなかった、

 イジメのターゲットが自分になったらと思うと、恐怖で何もできなかった、

 それを凄く、後悔している……本当に、本当にごめんなさい……


 と、泣いていらっしゃるのもあって、少し声をしゃくり上げたり、すすり声になりながら、ひとつひとつ丁寧にお話された。

 私はハンナ様の背中をさすりながら、答えた。


「ハンナ様、謝られなくても大丈夫です。私がもしハンナ様の立場なら、同じようにしていました……そんな、イジメを止めさせる勇気なんて、なかなか出ないですよね? 私にもハンナ様のお気持ち、分かります。だからこれ以上、謝らないで下さい。私は、自分にできないことを、人にしてもらおうとは思わないし、自分にできないことを人がしてくれなかったからと言って、その人を恨んだりなんて、しませんから」


 ホントにそう、私だってあんな凄い目で睨みつける人たち、極力関わり合いになりたくないって思っちゃうもん。

 大体、人のイジメを止めさせることができるほどの強さがあるのなら、自分のイジメを止めるよう、能力全振りして、止めさせるよ?ほんと。


 前世では、イジメした人と、見て見ぬふりした人も同罪なんて論調、見たことあるけれど、皆んながイジメの矛先が自分に向くことを恐れず、立ち向かえるほど強ければ、本当にそれは素晴らしいことだと思うし、私も前世でイジメられてたとき、誰かに助けられたかったけれど、でも、正直理想論過ぎて、いったいどれだけ実行可能なのか、ホント疑問って思っちゃう。


 先日もニュースで見たけど、イジメ被害生徒がひとりで、イジメる側が十人、で、学校側の対応としては、人数の多いほうを擁護するみたいなこと言ってて、で、イジメ被害者は自殺してしまったけど、そんな状況で、自分が死ぬまで追いつめられるほどのイジメがあって、もしチクったら次の被害者が自分になるかもっていうときに、学校の大人たちもイジメる側を擁護する中で、いったいどれだけの生徒がそれ、イジメ被害者を助けるための行動が取れるっていうんだろう?


 責任範囲を広げて、責任範囲をうやむやにし、問題からさらに遠ざかっているようにしか見えないな。


 世の中……前世の道徳の時間もそうだけど、ホント綺麗ごとばっかり述べて、自己満足浸っている層が多いなあって思っちゃう。

 やった気になって悦に入り、その実なんの問題解決もしていない典型的なやつ。

 逆に問題解決から遠のく場合もあるし、ホント困っちゃうって感じなんだけど、本人たちはやった気になってるから、余計問題よね。

 まあ、もちろん一番問題があるのは、イジメる奴と、自分の子供が他人の生命を脅かしてんのに、自分の子を叱るどころか擁護する親たちと、教育機関での問題勃発で見て見ぬふりする大人たちが、一番悪いんだけどね。


 それでまあ、私はハンナ様の気持ちが分かるので、『謝らなくていい』とは言ったんだけど、それでもまだ何か納得されていないのか、ハンナ様はさらに話を続けられた。


「でも……わたくし、本当は、ソフィー様とお友だちになりたかったんです……ソフィー様はファイフの授業で時々、時間を持て余していらっしゃるとき、わたくしの知らない美しい曲を吹いてらして、私、ファイフの話とか、音楽の話とか、本当はしたかったんです、でも……」


 と仰って、また泣き出してしまわれた。

 そう、私は時々前世での流行っていた曲を、手持無沙汰のときに吹いて時間を潰してたことがある。

 クラウス先生の家庭教師の授業で、もう既に十分練習してた曲とかが課題になったとき、その曲ばっかり練習するのも飽きるんで、ちょっと暇つぶしに別の曲、吹いてみたいなって思うことが、たまにあったので。


 それにしても、私が時々ハンナ様のファイフの演奏をこっそり聞いていたのと同じように、ハンナ様も私の適当吹きに、聞いたことないメロディーだなあとか思われながら、耳を傾けて下さってたんだな……


「私も、ハンナ様に話しかけたいなって、以前から思っていました。ファイフが本当に上手で、近くで聞きたいなって、ずっと思っていたんです」


 私がそう言うと、ハンナ様が初めて、私に向けて笑顔を向けられた。

 目が赤く腫れているけれど、くりくりお目々がめちゃ可愛らしい。オレンジ色の瞳が涙で潤んでキラキラしてるし、それが一層愛くるしさを引き立てていると思う。


「……そうだったんですか……知らなかったです……そうだったなんて……」


 そこまで言うと、またハンナ様は顔がくしゃってなって、おいおいと泣きだされた。

 きっとまあ、今まで溜まりに溜まっていたものが、今一気に噴出されたんだろうな……


「私も、知らなかったです。でも、今日知れて嬉しいです。ぜひ、これからは仲良くして下さい」


 私はハンナ様の背中をさすりながら、一所懸命励ましていると、次の授業の先生が来られた。

 すると、ハンナ様は、涙を手でごしごし拭い、私に尋ねられた。

「あの、ソフィー様のお隣に、座っても、いいですか……?」

 心配そうに尋ねられるハンナ様、もちろん私は笑顔で快諾する。

「はい、ぜひ」

 するとハンナ様は今日一番の満面の笑みで、仰った。

「今すぐ手荷物持ってきますね、ソフィー様は、先にお座りになってて下さい!」

 ハンナ様は、急いで元いた席に戻られる。

 その後ろ姿を見て、ああ、私にも初めてお友だちができたのかな……って思い、心がほっこりし、目が少しうるってなった。


 そして、なんだろう……ハンナ様の涙の訴えは、もちろん教室の生徒たちは皆んな(といっても数人だけど)知っているんだけど、その様子をご覧になったからか分かんないけど、教室に漂う緊張感が、なんか一気にやわらいだ気がする。

 なんていうんかな、感覚的にはクラスの皆んなの分まで、ハンナ様がまとめて号泣されたような、そんな感じだ。

 正直ハンナ様に泣かれたときは、そんな対応し慣れてないし、ホントどうしようかと思ったけれど、これはこれで、良かったのかなって思った。


 昼食の時間になって、ハンナ様と初めて王立学院の食堂に来た。

 王立学院の食堂は、全校生徒が使うので、イジメられていたときは、ルーク兄様やルシフェルに色々感づかれてはいけないと思い、お昼ご飯は食べずに寮に戻ってたんだよね。

 で、始めて来た王立学院の食堂は、さすがに全校生徒が使うので寮の食堂よりも広いけど、作りはよく似ているなって思った。

 そして、いつもは女子ばかりの風景なのに、ここの食堂には当然男子生徒もいるので、それもとても新鮮だなと思った。


「私、学院内の食堂に来たの、初めてなんです」

「え、そうだったのですか?……確かに一度もお見かけしたことがなかったように思います」

「ですので今日、ハンナ様と来ることができて、嬉しいです」

「わたくしのほうこそ、とても嬉しいです……実は、わたくしはいつも、王立学院の食堂でも、女子寮の食堂でも、ひとりでご飯を食べていて、誰かと一緒に食べるのが、実は初めてなのです」


 え、ハンナ様もそうだったの!?

 王立学院の食堂は初めて来たので分からないけれど、女子寮の食堂では、例の上級悪魔と取り巻き悪魔たちに因縁付けられないように、ずっと下を向いて、光の一族の養女らしく、光の速さで速攻食べて、とっとと出て行ってたから、周りを一切見てなかったんだよね。

 あと、闇クラスの教室内も、うっかり目があって因縁つけられないように、ずっとノートでも取るふりして下向いてたから全然知らなかったけれど、ハンナ様いわく、教室の後ろの角の隅で、ずっとひとり目立たないようにされていたそうだ。


 ……教室の空気が悪いとは思ってたけれど、そこまでとはっていう感じだ。


 私のせいで、私ひとりが迷惑を被ってるんなら分かる。

 でも、私が現状を訴えないせいで、関わりたくない派の生徒たちもこんなにも怯え、ほとんど生きた心地もしないような感じで、一年生の学院生活がほぼ終わってしまうなんて、何だか申し訳ない気にもなってきたな……

 もちろん、イジメる側が一番悪いし、関わりたくない派の生徒たちも現状を誰かに訴えなかった訳だから、私のだけが悪いっていうこともないとは思うんだけど……

 でも、時間は過去には戻せないし、クラウス先生やルーク兄様にも約束したから、二度と同じ轍は踏まない。

 異変を感じたら、即報告する!

 しかも、光の一族の養女らしく、即報告は光速で!

 ハンナ様の現状を聞いて、私はさらに決意を新たにした。


 にしても、その関わりたくない派の生徒たちをあんなにも萎縮させ、私との距離を頑ななまでに取らせていたあの上級悪魔の手段は、いったいどんな手段だったんだろう?

 私を睨みつける派にしていたような、私への妬み嫉みを増幅させるやり口は、関わりたくない派の生徒たちには通じなかったというのは分かっているんで、まあ、上級悪魔は伯爵令嬢で、割と高位だから、爵位を笠に着て脅してたのか、それとも何か、弱みを握ってたのか……

 私にあんな作戦まで使って来る上級悪魔だから、生徒の弱みか親御さんの弱みとか、握って脅すくらいは容易にしそうだ。

 ハンナ様に限って言えば、ハンナ様は男爵で位が低いため、おそらく弱み系ではなく、爵位を笠に着る系で、恐怖を植え付けて系だと思うけどね。


 そんなことを考えながら、私は今日の昼食をカウンターで受け取った。

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